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契約獣頼りの異世界生活  作者: 謙虚なサークル
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召喚師、いろいろ試す②

「とりあえず、当面の目標はレベル上げかな」


 手持ちの魔獣がコチック一体しかいない以上、この戦力でも安全に戦えるようにしなければならない。

 いつでも逃げ帰れるよう街から離れすぎず、俺は辺りを歩き回り、魔獣を探した。

 草むらに足を踏み入れると、ガサガサと背の高い草が揺れる。


「おっ、いたな」


 飛び出してきたのはまたまたローリスだ。

 俺は杖を振るい、コチックを呼び出す。


「行ってこい、コチック」

「ぴぃ!」


 それに気づいたローリスは、こちらを向き直り臨戦態勢をとる。

 先手必勝だ。


「コチック、エアショット」

「ぴぴぃっ!」


 風の刃がローリスを襲い、HPバーが7割削れる。

 うむ、さっきレベルが上がったから少し威力が上がっているな。

 前回同様、先手を取れているのはこちらの方が素早さが高いからだ。

 スキルを使うにはある程度魔力をチャージする必要がある為、どうしても交互に攻撃する事になってしまう。

 故に先手を取れるのはかなり重要、素早さは重要なステータスなのである。


「シャー!」


 ローリスの反撃をしてくるが、再度エアショットを放ち撃破。

 うん、いい感じだ。


「よくやったな。コチック」

「ぴぃー……」


 疲れた様子で鳴き声を上げるコチック。

 さっきの反撃でHPは半分を切っている。

 敵からクリティカルを喰らう可能性もあるし、早めに回復しておくべきだろう。

 俺は腰に下げた袋から、回復石を取り出してコチックの額に当ててやる。

 柔らかい光がコチックの身体を包み、HPが全回復した。


「ぴぃ!」

「よし、元気になったな」


 その代わり、魔石は砕けてボロボロになって崩れてしまった。

 当然だが回復石は使い捨てだ。しかしまだあと10個ある。

 回復し終わったコチックを魔石へ戻そうとするが、コチックは空を見上げ、何やら威嚇するような仕草をしている。

 振り向くと、木の枝に留まっているコチックがいた。


「ピチチ!」


 どうやら野良のコチックのようだ。

 まぁコチックは珍しくもなんともないからな。

 どこにいてもおかしくはない。

 俺のコチックと野良コチックは、互いに威嚇し合っている。

 どうやらやる気のようだ。


「連戦だが大丈夫みたいだな。コチック、エアショット」

「ぴっ!」


 コチックは翼を羽ばたかせ、エアショットを放った。

 エアショットは野良コチックに当たり、HPバーを半分ほど削る。


「ピピピッ!」


 野良コチックは短く鳴くと、守るように翼を閉じて身体を震わせる。

 すると柔らかい風が野良コチックの身を包んだ。


「羽休め、か」


 これはコチックの初期スキルで、風の衣を身に纏い防御力と回避率を上昇させる効果を持っている。

 だがそれなりのレベルならともかく、恐らくはレベル1であろう野良コチックがそんな事をしても誤差の範疇。

 端的に言って、無駄である。


「構うなコチック、エアショットだ」

「ぴぃーぅ!」


 俺はコチックに命じ、もう一度エアショットを撃たせる。

 風の刃が野良コチックを貫き、HPバーはゼロになった。


「ピピピピピ!」


 野良コチックは枝から落ちると、すごい速さで逃げていった。

 よし、防御スキルを使ってくれたおかげで無傷で勝てたな。

 低レベルのコチックはまともな攻撃スキルを持たないのだ。

 コチックが最弱の魔獣と呼ばれる所以はここにある。


「戻れコチック」


 俺は杖を振るい、コチックを魔石に戻した。


「さて、どんどん行くとするか」


 その後俺は、辺りを歩き回っては野良の魔獣を探し戦闘を仕掛けていった。

 コチックのHPが減ってきたら回復。歩き回って戦闘。また回復……しばらくそんな事を繰り返した。



 コチック

 レベル5、風属性

 HP68

 攻撃22

 素早さ26

 防御14

 魔力21

 所持スキル

 羽休め15/15

 エアショット3/20


 そして、ようやくコチックのレベルが5になった。

 HPも高くなり、回復石を使う頻度も減ってきた。

 戦闘もだいぶ安定してきた気がする。


「しかしエアショットの使用回数がもう少ないな」


 回復石は魔獣の傷を癒すだけで、スキルの使用回数までは回復出来ない。

 使用回数を回復アイテムも存在するが、この街の道具屋には売ってない。

 まぁそんな事をしなくても、もっと単純な方法がある。

 十分に身体を休める事で回復出来るのだ。

 日も落ちてきたし、ここは一旦街へ引き返すとするか。


 ■■■


「あらウィル、おかえりなさい。早かったわね。ふふっ」


 というわけで、家に帰って来た。

 母さんが待っていたかのように俺を出迎える。


「ただいま……街の近くで色々試していたら、こんな時間になっちゃってさ」

「いいのよ。いつでも帰ってきて。ここはあなたのお家なんだからね。さ、シチューを作るからお風呂に入っておいで」

「はい」


 母さんは鼻歌を歌いながら、調理を始める。

 今は素寒貧だから非常にありがたい。

 俺はあったかい風呂に入り、美味しい食事を食べて、ぐっすりと寝た。

 ――そして翌日。


「いってらっしゃい、ウィル。また今日も帰ってくるかしら?」

「いや、大丈夫だよ」


 母さんのありがたい申し出に、俺は首を振って返す。


「今日は次の街まで行くからさ」


 俺は街の外、遠く草原の向こうを見つめるのだった。

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