召喚師、いろいろ試す①
「戻れ、コチック」
俺が杖を振るうと眩い光がコチックを包み、杖にセットされた魔石の中へと戻っていった。
長い旅で絆を培った召喚師と契約獣ならばともかく、基本的に契約獣は魔石の中に入れておくもの。
ふとした拍子に暴れ出したら、目も当てられない。
俺とコチックの信頼値はまだ50、ニュートラルの状態だ。
これが下がってくると逃げ出したり、言うことを聞かなったりする。
逆に上がれば母さんとハナナのように長時間魔石から出しておく事も可能だし、スキルの効果も上がったりするのである。
ちなみにこれも成長値と同じ隠しステータスで、俺は数値として見る事が出来る。
地味に便利だ。
「さて、早速旅立ちと行きたい所だけど……道具屋を見てみたい所だな」
ゲームでは手持ちの魔獣を全て倒されると、ゲームオーバーとなりセーブした場所に戻される。
この場合のゲームオーバーが何を示すかは全くの不明だが、魔獣の出現する街の外で契約獣がいなくなると思うとぞっとする。
俺自身の身体能力は普通の人間と同じだし、魔獣に襲われたらひとたまりもないだろう。
ただでさえ俺は魔石を一つしか持っていないのだ。
何が起こるか分からない以上、回復アイテムは所持しておかなくてはならない。
幸い、少しは金もあるしな。
旅立ちの資金として貰った10000セラ、これで回復アイテムを買い込む。
「いらっしゃい!」
道具屋の中に入ると、主人が迎えた。
「おう、ウィルじゃねぇか。旅の準備かい?」
「はい、回復石を買いに来ました」
「そうかそうか、じゃあ見ていきな」
主人がカウンターに、小さな石ころをずらっと並べた。
これは純度が低く、魔獣との契約には使えない魔石である。
だがこれを使用する事で契約獣の傷を癒やす事が出来る為、回復石として売られている。
サイズや純度によって回復量が変わるので、俺はその中からより効果が高いものを選んでいく。
「これとこれとこれと……うん、これだけください」
「あいよ、12650セラだが今日は旅立ち祝いで特別だ。10000セラで持って行きな!」
「ありがとう!」
俺は10000セラを主人に渡し、回復石を購入した。
これで準備はオッケー、改めて旅立つとするか。
街の外へ行くと、門番の人がいた。
「おっ、ウィルくんじゃないか。そういえば今日が旅立ちの日だったかな? レヴィンくんはさっきすごい速さで走っていったぜ」
門番さんはそう言って笑う。
今思えば俺の契約獣を盗み取るつもりだったから、急いでいたんだなぁ。
今更言っても仕方ないが。
「いやぁ懐かしいなぁ。僕も召喚師として旅をしてたっけ。僕は大召喚師にはなれなかったけど、ウィルくんは頑張るんだよ」
この人以外にも色んな人たちが召喚師として修行を積んでおり、大召喚師を諦めた今は契約獣と共に仕事をしているのだ。
街を守る兵士となったり、漁師になったり、様々である。
そんな生活もありかもしれないな。
「それじゃ、気をつけてな」
「いってきます」
門番さんに手を振りながら、俺は街の外に出た。
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ざぁ、とか風が吹いて草の匂いを運んでくる。
周囲を見渡すと、まさに草原といった風景が広がっている。
恐らく魔獣だろうか、風に乗って何となく嫌な気配を感じられた。
「とりあえず色々試してみるか」
俺は辺りを見渡しながら、注意深く進んでいく。
不測の事態に備え、街からは出来るだけ離れないように、だ。
ゲームだと適当に歩いていたら魔獣とエンカウントするんだが……などと考えていると、いた。
木陰の奥で休んでいるリスのような魔獣。
目を凝らすと魔獣の頭上にステータスウィンドウが浮かんでくる。
ローリス
比較的小型の魔獣で素早い動きで高い所にいる昆虫や木の実を取って食べる習性を持つ。
回転しながら木にぶつかり、隠れている昆虫を捕まえる……との事だ。
どうやら敵として出現したときは、細かいステータスを見ることはできないらしい。
確認できるのは名前と習性くらいだな。
ま、問題はない。
俺の視線に気づいたのか、ローリスはこちらを向いて威嚇するように丸い尻尾を持ち上げた。
「シャー!」
敵意満々といった具合に金切り声を上げるローリス。
よし、初戦闘と行くか。
俺が思い切り杖を振り下ろすと、まばゆい光と共にコチックが現れた。
「行け、コチック」
「ぴぃーーー!」
大きく翼を広げ、コチックはローリスと対峙した。
「コチック、エアショットだ」
俺が命じるとコチックは翼を後ろにのけぞらせ、ローリス目掛け羽ばたかせた。
すると突風が弾丸のように放たれ、ローリスを襲う。
これが魔獣が魔獣と呼ばれる所以。
魔獣は強い魔力を持っており、その動作一つで風や炎などの超常現象を巻き起こすのだ。
これはスキルと呼ばれ、魔力を消費する為に回数制限がある。
エアショットの使用回数は今20回から19回となった。
「シャー……」
苦しそうな声を上げるローリス。
その頭上のHPバーがゆっくりと動き、6割ほど削れた。
おっ効いてる効いてる。
「シャッ!」
ローリスは身体を震わせると、身体を丸めてコチックに突進を仕掛けてきた。
タックルだ。
コチックは躱すことが出来ずに喰らってしまい、HPが3割ほど削れた。
「ぴぃ……」
ダメージを受けたコチックだが、まだまだ平気そうだ。
「もう一度だ、エアショット」
再度、コチックにエアショットを命じる。
風の刃がローリスを襲い、吹き飛ばした。
そのHPバーはゼロになっていた。
「シャーーー!」
と同時に、ローリスは跳んで逃げていった。
どうやらHPバーがゼロになると逃げ出し、倒したことになるらしい。
よかった。深く考えずに倒してしまったが、死体として残ったらトラウマものだった。
「ぴぴっ!」
コチックが俺の頭に飛び乗ると、誇らしげに鳴いた。
コチック
レベル2、風属性
HP49
攻撃17
素早さ22
防御10
魔力19
所持スキル
羽休め15/15
エアショット18/20
ステータスを開くと、レベルが1から2になっている。
どうやらローリスを倒したことでレベルが上がったらしい。
「よしよし、よくやったぞコチック」
「ぴぅ!」
俺はコチックの頭を撫でた後、杖を振りかざしコチックを魔石に戻すのだった。




