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戦後処理


(化け物め!)



 大きな魔狼がそんなテレパシーを飛ばしながら絶命した。頭に響く不快な“声”に嫌なものを感じた。

 そんな俺の足元にはその魔狼の死体が転がっていた。魔狼を倒していたら、あまり経験値がもらえなくなったのでボスを倒したという流れだった。

 俺が攻撃を仕掛けた瞬間に(やめろ!)とか言ってきたが容赦しなかった。

 村人たちもそんなことを言ったに違いないのに奴は止まらなかった。つまりはそういうことである。


「マジで30まで上げてくれるとか、ありがたいな」


 血だらけになりながら、【勇者】が言った。


「ほんと、けど獣臭い」


 最終的にはステータスで魔狼をぶっ飛ばしていた王女がご機嫌斜めそうに言った。三人に着けていた支援魔法がかなり強力になり、素手で魔狼と戦えるほどになっていたのだ。

 そこに到達するまでに200匹以上を倒していたのだが・・・

 最後の方は氷や炎を吐くような化け物が出てきたような気がするが、すべて、俺が倒した。俺のレベルが31、二人とも30になっていた。

 【勇者】も武器も盾が壊れていたが、拳を槍に武器に偽装してスラストをしたり、腕を盾に偽装してカバーリングをしたりとかなり高度なことをするようになっていた。

 己の肉体を武器に偽装できることがわかるとかなり強くなっていた。そこに【王女】の強力な支援魔法。

 二人だけで大分魔狼を倒し、俺は特殊な奴を狙う様にしていた。そして、魔狼だけではほとんどレベルがあがらないことを確認し、ボスを倒したのである。

 それによって、二人のレベルが30まで一気にあがった。

 なんでも、この魔狼は死王と呼ばれている魔王の配下のペットらしい。死王は七人いて、どれも強くかなり厄介な存在だそうだ。


「シャーマン様だってよ」


 なんか、やばそうな名前が出てきた。なんでも、死王はグラディネイター、レンジャー、スピアマン、シャーマン、シャドウ、ウォーモンガー、チャリオティアという名前で呼ばれているらしい。

 どっかで聞いたことあるような構成だが、気にしないようにしたい。

 その中のキャスター様はどうやらかなりマッドな才能を持っているらしく、どんどんモンスターを送ってくるらしい。


「なるほどな」


 それにしても現存するのが魔王で死王がその配下にいる。圧倒的ともいえるその戦力さだ。

 どうやら、魔王に対抗しているのはこの王国のみで、他の獣人や亜人たちは魔王軍と特別敵対していないらしい。加えて、魔王軍側には一部人間勢力も混じっているなんて話もあったりする。

 話によるとその国では人間が奴隷のように扱われているらしいが、遠くの国のことなので、今はどうなっているのか不明というのが実態だろう。

 その国から支援と称して安価な食料がよく大量に送られてくるらしい。

 軍門の下らせる政策のつもりだと王族や貴族などは言っているが、まあ、どうでもいいことだろう。

 しかし、魔王側に付きながら、人類を助けるようなことをすることに違和感を覚える。いや、仲間に入れるためか。

 魔王側が勝利をおさめたら、世界は混乱するはずである。しかし、それでもついていくとは、どういうつもりなのだろうか?

 よくわからない。


「それにしても、レベル上げって大変なのね」


 【王女】が今更なことを言った。俺はそれを聞いて肩を竦めた。


「だが、それでもやらなにゃならんだろうな」


「わかってはいるけどね。わかってるんだけど・・・」


 【王女】は横にいる【勇者】を見つめた。【勇者】も【王女】を見返して深く頷いた。

 【王女】は【勇者】のために、【勇者】は【王女】のために頑張っているに違いなかった。

 そんなラブラブな雰囲気を壊すように俺は言った


「まあ、いずれにせよ。俺たちは俺たちの道を行くしかないな」


 俺がいうと二人は深々と頷いた。目線はお互いから外れていなかった。

 彼女いない歴が長い俺には寂しい限りの話だと思った。異世界に来れば、彼女ができるみたいなことがあるらしいが、実際は忙しくてそんな暇はないというのが俺の意見だが、どうだろうか?

 というか、彼女なんか作るよりも、慣れない環境で寝てたいというのが、普通のような気がするが・・・

 まあ、いいや。

 俺はさっさと強くなった二人を見て、そんな風に思った。


「お前らも強くなったし、後は自分らできるよな」


「そうですか、その時が来たのですか」


「少し残念だが、仕方ねえな」


 俺の言葉に二人はようやくこっちを向いて頷いた。二人の世界に入っている場合ではないことに気が付いたらしい。

 二人には二人の世界を守ってもらうために【偵察者】がいるような気がした。


「まあ、あんたがいなくても【偵察者】を入れる様にするぜ」


「ええ、大分便利ですから」


「そうだな」


 二人は不意打ちに弱い。不意を取られないためには危険感知能力の高い【偵察者】がいることが望ましいだろう。

 この二人のおかげで【偵察者】の地位が向上・・・というか、そもそも、俺に求められている戦闘能力って普通の【偵察者】には求められていないんだよな。

 普通に【偵察者】が<不眠不休>でがんばってくれるから、道中や冒険の際も安全で異世界から来た俺たちにはそういう地味なことは求められていないんだった。

 俺って地味なんだな。

 改めてそんな風に思った。


「戻ったら、お別れだな」


「まあ、そういう契約だからな。婚約者になれるようにがんばれよ」


「分かっている。俺に任せろ」


 【勇者】が拳を突き出してきた。俺にも拳を突き合せた。

 この世界での男同士の約束の仕方だ。


「あのくそ野郎に目に物みせてやれ」


 とは、人のことを差別した騎士団長のことである。


「わかってるって」


 この世界の【勇者】はうれしそうに返した。




 ゴブリンの穴を異世界の【勇者】が攻略したとの報告、その翌日【王女】が自分の【勇者】を指名した。

 その【勇者】の名前はエース。

 ゴブリンの巣穴を攻略した勇者ではなく、自分が贈与した【王女】にとっての真の【勇者】だった。

 そして、冒険者として、いつのまにかレベルが30になった【勇者】だった。



 それに反発したのは異世界の【狂戦士】、【勇者】、そして、現騎士団長だった。

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