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バッドエンド

「ぁ…ぁああ…ぁああぁああ!!!うわぁぁあ!!」


目の前の惨状に私は発狂した声をだした。


喉を大きく開けすぎてカコッと変な音が出るし血が出てきた。


「嫌だやだやだ!!ゲルモゲルモ!!ぁぁああ!」


血を吹き出すゲルモに手を伸ばすと当時にギルガにその手を捕まれた。


「おっと、駄目ですよ。汚いですから」


「離ぜぇぇえ!!」


振りほどこうとするがギルガは強い力で私の腕を握っている。やめろ、離せ、気持ちが悪い。ゲルモゲルモ!!ぁあ!こんなに血がいっぱい…なんて可哀想に離せ!!近寄れないじゃないか!!


「ぉばぇなんがぎらいだ!!」


「まぁまぁ、落ち着きましょう」


「やべろ!!離ぜぇ!!」


「ハハハ」


私が何回も何回も離せと気持ちが悪いといってもギルガは笑っている。何を笑っているんだよ…こんなの…こんなの…


私の息子とは思えない。



「ギルガ様!!ご無事にございますか!?」


一人の兵士が現れた。


「うん、俺は大丈夫なんだけど…キヌエに穢れたものを見せたくないからもう離れる。この男は適当に処分しといて」


「ッハ、承知致しました」


「うん」


ギルガは頷いて私の腕を引っ張って歩き出す。


「やめて…離して…キヌエって呼ばないでよ」


「うんうん。キヌエ、ちょっと眠ろうか」


「は?…ムグゥ!?」


急に布が口に当てられた。

急なことで驚いた私は思わず吸ってしまい…脳がポーッとする。


「おやすみ、キヌエ」












「もう…いや」


目が覚めると大きなベッドの上に転がされていた。

アホみたいにフカフカのベッドで私はアホみたいにポーっとしている。


「死のう」


私は決めた。


ゲルモが死んだ今、私には既に生きる意味が失われてしまった。


もう死んでしまおうと思い近くにあった花瓶を割り、その破片を自身の喉に当てようとした時…。


「ダメ」


また腕を捕まれてしまった。


「…ッギルガ!」


憎々しく私が名前を呼ぶが、ギルガはニコニコ笑顔を崩さない。


「何なんだよ…お前は!!なんなんだ!!」


涎と涙と鼻水を撒き散らして吠えるが、ギルガはやはりニコニコ顔を崩さずに私を抱き締めた。


「ゲルモは…生きてる」


「は?」


キョトンと…一瞬何が言われているのが分からなかった。


「あの男は…王に対する謀反罪で死罪だが…君次第でなんとかなるよ」


「…」


それはまるで…悪魔の囁きだった。


「何すれば…いいの?」


その囁きにのって私は聞くと、悪魔はニヤッと口角を上げた。


「俺と結婚しよう」




は?



「何を…言って」


「俺と結婚してくれるなら…ゲルモを生かしてやる」


「私たちは…親子だよ?」


何をいっているんだコイツはと思って反論すると、ギルガは目をガッと見開いて私の首に手を当てた。


「何が親子だ!ずっとずっと…俺なんか見てなかった癖に!!ハルトなんかの代わりにしてた癖に!」


「あ…っが…」


「ずっとずっと綺麗な貴女が好きだった…息子として愛されなくて…どれだけ…ならもういい!!息子としてなんかじゃなくていい!!」


バッと手を離され、思いっきり抱き締められた。


「母さん…いや、キヌエ…貴女が好きだ…大好きなんだ…愛してる」


「っぁ…ぁあ」


混乱して役に立たなくなった脳をした私を無視して、陶酔しきった顔のギルガは私の手を取って指輪をつけた。


「僕と…結婚してください」


「…」



嫌だ。



シンプルにそう思った。

どうやっても私とギルガは親子なのだ。親子が結婚なんて常軌を逸している。何よりコイツはハルトを殺しているんだ。


けど…ギルガをないがしろにしたのは事実だ。


私は死んだハルトの代わりにギルガを使った。全然ギルガを見ていなかった。


歪めたのは私だ…こんな風にしたのは私なのだ。


そして何より…何より…ゲルモだ。


ゲルモには死んで欲しくない。生きているならば…



「どうする?」


ギルガが再度聞いた。きっとこれは最終警告。


私が拒否すれば絶対にこの男はゲルモを殺すだろう。


「私…あなたのこと嫌いよ」


「いいよ。元々だ…で、どうすんの?」







「結婚…するわ」


喉から血が出るような屈辱を覚えて吐き出した私とは逆に、嬉しそうに笑うギルガは私の唇にキスをした。


「愛してる」


そういって無邪気に笑う彼はまるで…子供のようだった。


彼が子供の時にその笑顔を見ろうともせず…こんな形で見ることになった。


そして私が抱く感情は…やはり憎いとしか思えなかった。







仮腹は所詮、仮腹なのである。

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