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1484 青春白書  作者: 吉倉 光希
 第2章 「胃袋をつかめ」
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第1節

~登場人物紹介~


道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。

高橋 遥 :主人公の幼馴染。野球部マネージャー。


※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません

 目が覚めると外は快晴だった。時刻は午前六時、もちろん五月八日の火曜日だ。朝起きたら突然異世界に、なんてことはなく、これは間違いなく俺の部屋だ。昨日、さすがに深夜までネットをやってたせいか少し眠い。さっさと顔を洗い、歯を磨こう、そう思い彼は一階へと降りる。そうすると、たった今、外の窓から父の車が会社へ向かうところが見えた。


「朝早いなぁー、うちの親父。いつ寝てるんだよ」


親父は確かスーバーバイザーをしていると昔聞いたことがある。「スーパー」などとつくくらいの職業だ。きっとすごい仕事なんだろう、彼はその程度の知識しかなかった。


 「まだ比較的若いだろうし、大丈夫だろ」


親父と母は、学生のうちに知り合い、比較的早い時期に結婚し、そして俺を産んだということもあり、まだ四十代前半だ。俺たちの親世代の中では普通か少し若いくらいだろう。はなぜ俺は一人っ子なのだろうか。姉か妹さえいれば・・・。まぁそう言っても仕方がない。両親の、その、そういった事情をあまり想像はしたくない。


 「手のかかる子供だったらしいし、育児が嫌になったのかもな」


俺は、今では一応普通の高校生だが、幼少期は周りの子どもたちと全然違った、などと母はよく話し、よく嘆いていた。具体的にはとにかく落ち着きがなく、暴れまくっては周りの子を怪我させたり、気に食わないことがあったら泣いて、保育園の先生を困らせていたらしい。もしかしたらその影響で母は育児に疲れてしまったのだろうか。


 「そうか、ってことは兄弟がいないのは俺のせいか。だとすると不憫だな、親父も」


今となっては、俺が原因なのか、それとも夫婦の間に何かがあったのか、あるいはその両方なのか、真相は闇の中だ。親父が知っているかもしれないが、さすがに聞くのはよそう。

 顔を洗い、歯を磨いたら、キッチンへ向かう。あらかじめ昨日の晩、タイマーをセットしておいた炊飯器を開けると、きれいにお米が炊き上がっていた。そしてこれも前夜にタレに漬けておいたから揚げを数個取り出し、片栗粉と小麦粉を混ぜた粉に入れ、油で揚げていく。たくさん作っておいたので、残りは、今日の晩飯にでもしよう。あとは適当に昨日の卵を厚焼き玉子にする。できたらそれをお弁当箱に詰め、空いたスペースには自然解凍の冷凍食品を入れる。最後にふりかけをお弁当袋の中に入れて完成だ。我ながら素早すぎるお弁当作りに思わず惚れぼれする。


 「さて、行くか」


そして朝ごはんはお弁当を作る際につまみ食いをしたおかずと牛乳一杯で済ませ、家を出る。これでは必ず途中でお腹がすくのだが、これが昼食の弁当の良いスパイスになるのだ。そんな謎持論を繰り広げながら彼は上機嫌で自転車をこぎだす。

 駅に着くとおおよそ昨日と同じ時間くらいだ。そのまま階段を上り、改札口を出て、そして停車中の電車に乗り込む。まだ周りを見渡しても誰もいない。一番乗りである。俺はいつもの席に座った後、スマホの液晶画面をつけニュースやまとめサイトをチェックする。自分はこの朝の時間が結構好きだ。朝はラノベではなく、スマホのサイトをチェックするようにしている。理由は二つあり、一つ目はただ単純に昨日の夜に起きた出来事や今日の様子を知りたいからだ。ニュースだけではなくプロ野球の試合結果や天気予報、アニメの放送時間変更がないかなどである。二つ目は、この後電車に乗ってくるであろう遥に「なに読んでるのー?」と聞かれるのを防ぐためだ。彼女はラノベを嗜むといった趣味はないので、どうせタイトルを教えても「あぁ、あのオタクっぽいやつか」と言われて終了である。俺も色々と短期間で学び、学習したのだ。

 しばらくすると、発車のアナウンスが流れ、もう少しで扉が閉まるというところで、遥が電車に飛び込んできた。そして息を切らしながらこちらに向かってくる。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・。なんとか間に合った」


「おはよう、今日はえらいギリギリだな」


「うん、寝坊しちゃって。お母さんは起こしてくれないし、もう最悪」


「自分で起きないと、高校生にもなって」


「うん」


当然かのごとく彼女は俺の隣に座る。そしてスマホを出すのかと思いきや、どうやら疲れてる様子で、息が整いだしたのと同時に、うとうとしはじめる。


「眠いのか? ちゃんと寝ないと」


返事もどこか夢うつつだ。


「わかったよ。俺が着いたら教えてやるから、それまで寝てろ」


「ありがと、準貴」


と言ってものの数十秒、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。


「連休明け二日目だぞ、大丈夫なのかこれ」


少し不安になりながらも、まぁ、きっと夜遅くまで女子高生トークをしてたんだろう、と勝手に決めつける。


 その後、乗車中、ずっと彼は彼の左肩に寄りかかってきた遥の小さな頭を意識しないように、スマホの画面を見つめるのであった。


 「・・・確かに寝たら起こすとは言ったけどさ」


周りの目もあるので、少し気恥ずかしい。顔見知りの奴らに会いませんように、と願いながら長いようで短い、五稜郭駅までの車内を堪能するのであった。


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