第2節
~登場人物紹介~
道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。
高橋 遥 :主人公の幼馴染。野球部マネージャー。
「眠い、準貴。おんぶして学校連れてって」
「なにいってんだバカ、行くぞ」
駅に到着し、昨日と同じく学校へと向かう。遥はというと、改札を出た途端これである。これでは先が思いやられる。
「じゃあこの荷物持って」
と言って彼女は俺にひとつカバンを投げつけてくる。
「重っ、なんだこれ」
「こんなかね、マネージャーのジャージとか、靴とか、あと色々」
「お前、今靴履いてるだろ、何足持ってるんだよ」
「ローファーで野球グラウンドは入れないのよ。ていうか一応元野球部でしょ?」
「あぁ、そっか。にしても重すぎないか?絶対余計なもの入ってるだろ」
今、彼女が投げつけてきたカバンは、ポリエステル製のもので、俺が今背中に背負っている合皮のカバンよりは一回り小さいものの、パンパンに膨れ上がっている。
「あぁ、かもねー」
「かもねー、じゃないだろ、ちゃんと整理しないと、お前、マネージャーなのかマネージャーされる側なのか、分かんないじゃんか」
俺がマネージャーのマネージャーをしていると、彼女は突然スイッチが入ったように愚痴りだす。
「だって、部活終わってから家に帰ってさー、クラスの人とラインしてたらすぐ時間なくなっちゃって、昨日なんか三時までトーク終わらないんだもん。眠たいよー」
「お前、それは無茶だわ。野球部って部活終わるの夜の7時過ぎとかだろ?そっから電車で家に帰って、女子トーク参加するって、一日が何時間あっても足りないわ」
「昨日は部活終わって、家に帰ったのが確か9時くらい。そっからご飯食べて、お風呂入りながら色んな人とラインして・・・、ラインしてたらいつの間にかベッドで寝ちゃっててさ。目覚めて時計見たら六時半なんだもん!、やばいっしょこれ」
「そこまでして・・・。やっぱりこまめにラインとか送られてきたものをチェックしないと、話題に置いてかれたりするのか?」
「今、一年生の大事な時期だからね、色々大変なんだよ。きっともうちょっとしたら落ち着くと思うんだけど。いまはクラスの女子、ほぼみんなのラインがあってそこでトークしてるの」
「『ほぼ』ってのがもう、闇を感じるよね。まぁ、いいところで落ち着けばいいな早く」
「うん、男子って楽でいいね」
「こういう話聞くと、ほんと男子でよかったって思うよ。ってかこれ昨日も言わなかったか?」
「知らなーい。うちも男子に生まれたかったー、ってかアンタの場合、既にはぶられているだけなんじゃないの?」
俺もその心配は多少していたが、いざこう面と向かって言われると、少し不安になってくる。俺以外のやつらで、グループができていて、俺の悪口を言っているとか。
「たぶん違うよ、たぶん・・・」
「ふーん、ま、多分大丈夫でしょうね。うちのクラスの男子、アンタ以外、ほとんど運動部系の部活で、そもそもタイプが違うもん」
「そーなのか、随分詳しいな」
「準貴が知らなさ過ぎなだけだって。もう」
話しながら彼女のトークのキレが少しずつ戻ってきたように感じる。起きた当初なんて、滑舌が回ってなかったからな。相当眠かったのだろう。まぁ、寝ぼけている遥も嫌いじゃないが、なんかこう、調子が狂うので、普通にしてもらった方が助かる。
「でも、喜びなさい、『顔だけなら』準貴が一番カッコイイって、皆言ってるわよ」
「でもその『皆』ってのは、小さい子がお母さんにおもちゃをねだるときに使う『みんな持ってる』の『皆』なんだろ。それにイケメンに入るには、俺では少し身長が足りない」
「・・・、意外に冷めてるのね。もっと喜べばいいのに。まぁクラスの男子、十二人の中で一番になっても仕方がないか」
「それもあるし、人は絶対的に顔ってわけじゃないからな」
「なに準貴ごときが良いことを言おうとしてるのよ。普通に顔も大事よ」
「もちろん性格だけでもないけどな、顏だって大事だ。もちろん身長も大事」
自分で言って、少し悲しくなってくる。
「要するになんなのよ」
「リア充は爆発しろってことだよ」
「わけわかんない」
正直、自分でもよく意味の分からないことを口にしたなという自覚はある。しかしながら、運動部出身だが、運動部連中のあのノリにはいまいちついていけない俺が言うのだ。分かってくれる人は少なからずいるのではないかと思う。
「ちなみに、俺はやっぱ身長が低いから、微妙な評価なのか?」
「そんなことはないけど・・・、まだ話したことがないからどんな人か全然分からないとか、無口で怖そう、とか色々よ。ってかそういうのは私からじゃなくて、自分でどうにかするものでしょ、なんなのよアンタは」
「いいじゃん、別に」
「意外と、自分がどう見られているか、気になってたのね、ちょっとは可愛いところあるじゃない」
「別に。ちなみに女の子だと一番可愛い子が誰とか、そういった話はするのか?」
「は?まぁ無くはないけど、どうせ皆、秋月さんだと思ってるわよ」
「どっかで聞いたことあるような、まぁいいか」
というか、今あからさまに遥が不機嫌になったな。ほんと女はどの話がタブーでどの話が喜ぶのかが難しい。もしかして、こいつ、ライバル意識燃やしてるとか。女って怖いなー。そもそも秋月さんってどんな顔なのか、俺には全然分からん。出席番号は近いはずなんだけど。
「アンタ、気になる女の子とかいないの?」
突然、遥からこんな質問をされる。クラスの人の名前を把握していない今の俺に聞かれてもなぁ。
「うーん、いなくはないけど」
「どうせ君も秋月さんか、ほんと最低」
「最低ってなんだよ。俺の場合、まだ名前が分からなくて、でも一応いるって感じ」
「へぇ、生意気ね」
「なんでだよ、お前が聞いてきたんだろ」
「じゃあその女の子、髪の毛は長いの?短いの?」
「ロングヘアーだね」
「やっぱり秋月さんじゃん!、ほんと最低」
「だからなんでだよ、面白いなお前も」
「なんでよ、何が面白いのよ」
「いや、よく秋月さんだって、分かるなって関心したんだよ」
「だって、髪長くて、可愛い女の子っていったら、秋月さんくらいだもの」
そうとは限らないだろ・・・。と思いつつ、やっぱり男子が可愛いと思う子はみんな一緒なのかと実感する。
「そうなのか。俺がイメージしてるのは少しほっそりしていて、いっつもよくシュシュかなんかで髪を束ねている人だけど、合ってるのか?」
「ん・・・? あー、違うわ。ってかそっちにいったか。アンタもマニアックね」
俺の可愛いと思ってた子は、どうやら秋月さんではなかったらしい。さっきの実感返せ。というか俺もそろそろクラスの女の子の名前をしっかり覚えないとな。どうも人の顔を覚えるのは苦手だ。そして遥はというと、いつもに増してニヤニヤしている。そんなに、俺の可愛いと思っていた相手が秋月さんじゃないということがおかしいのだろうか。
「てか、それ準貴の席の隣の子じゃない」
「そうだよ。俺、一回だけその子と話したことがあってさ、名前は聞けなかったんだけれど」
「アンタも単純過ぎよ。話しただけで好きになっちゃうとか」
「あのな。好きとかそういうのじゃなくて、ただ単に可愛いと思った子を挙げたつもりなんだけどね? ってかその子の名前教えてくれよ。知ってるんだろ?」
「そんなの自分で聞きなさいよ。わたしはアンタのママじゃないんだから」
「まぁ、それもそうか」
ママって、これは俺に母親がいないことを知っていながらあえて言った発言なのか、それとも無意識に出てきた言葉なのか、とりあえず、今思ったことは口には出さずにしておこう。
「ところで、準貴って、その、ひ、貧乳好きなの?」
「は?何言ってんだお前」
「うるさいわね。教室着くまでちょっと黙ってなさいよ」
「もうすぐそこですけどね」
少し遥が何を言ってるのかわけがわからないところもあったが、今は気にしないでおこう。俺らは既に校舎内で、今はもう四階へ上がる階段だ。しかし遥がここでハッとしたかと思うと、大声を出していきなり俺の手をつかむ。
「あっ、お弁当。買うの忘れた」
「別に後でいいだろ」
「良くない!ほら行くよ」
「一人で行けよー」
遥に腕を引かれながら、俺ら二人は、一階にある購買へと引き返すのであった。これ、俺、必要なくない?




