皆既月食を見よう 真美2
一方真美の方は…
「ねぇ、真美、久しぶりにランチしようよ」
親友の歩美からランチのお誘い。そういえば最近行っていないなぁ。
「うーん、行きたいけど今日はいいや。今日って皆既月食なんだって」
「へぇ、そうなんだ。真美は見るの?」
歩美が覗き込むように見る。150センチの歩美はちっちゃくてかわいいと思う。
見た目は守ってあげたいキャラなんだけどね…。
「うん、哲が今夜一緒に見ようって…家に来るの」
「うん、うん。そうだよね。哲君はもれなく付いてくるよね。仕様美だもの。
ってことは、哲君…今夜はお泊まり?」
「あのね、お姉ちゃんがいた部屋で寝てるから。疑われる言い方しないでよ
歩美…あんた…狙って言ってるでしょ?全く…」
幼稚園からずっと一緒の歩美には私と哲の行動がよく見えているらしい。
だとしても…恋人ではなくて幼馴染なんだから…まだ。
周りの皆を煽る発言は爆弾発言以外の何物でもない。
「でもさ、哲ってば…人の事を貧乳って言ったの。あんまりでしょ?」
「それは・・・残念だけど…事実だから。まずは受け入れようね」
ほら、すぐそうやって肯定するし、少しくらい否定しなさいよ。
女の子なんだから…女心は分かるでしょうが!!
歩美は良くも悪くも正直に言ってくれるから、私は素直に受け入れる。
他の人が言ったら傷つくことも、歩美に言われると傷つかないから
絶対に得していると思う。
「でも、直接言われるのも嫌よね?特に哲君だったら」
歩美の言うことに私は首を縦に振る。他の男子だったらスルーできるんだけど。
大好きな哲に言われたら…スル―なんてできない。
「ずっと一緒だからさ、一番基本的な事忘れていない?」
「哲だからってこと?」
私がそう言うと、歩美は納得した顔をした。
「なんだ、分かってるじゃない。哲君は真美の何?」
「私の幼馴染。私が好きな人。哲以外の人は考えられない」
「上出来じゃない。今夜それをいいなさいね。すぐに解放してあげるから
買い物に行こうね」
そうして私は歩美に連れられて教室を出た。
しばらくして廊下で哲に会う。歩美が間髪入れずに切りだした。
「哲君、奥さん借りるわよ。別にいいわよね?」
「歩美先輩だったら…いいですよ…」
怨みがましい目で哲が私を見る。私何かした?
テストに集中したくて、メールも返信だけしかしなかったから?
早く家を出たことを怒っているの?どっちなのかなぁ?
「哲君、そんな顔すると真美は家に泊めるわよ。ほらっ、行くわよ」
そう言うと、歩美に引きずられるように私は校舎から出る。
「よしっ、これで仕込みはオッケー」
「何、企んでるのよ。ちょっと」
「だって哲君、私に嫉妬の炎メラメラ燃やしてるのよ。くくっ、
可笑しいでしょう?」
歩美は哲のことを煽るだけ煽って置き去りにしたんだ。
夜に会う私の立場も考えて欲しい。それとも何かを企んでいる?
これだから…歩美には油断できない。
もしかして…悪魔に魂売っているかも…。私は溜め息をついた。
「ところで、今更ですが。エッチはしたのよね?どう?やっぱり痛い?」
はぁ?エッチって?
「誰と?」
「決まっているじゃない。哲君とよぉ。もしかしてしていないの?嘘?」
「歩美、勝手に妄想しないで。告白すらしてないのに」
「真美、あんた鈍いにも程があるよ」
その後、私は歩美から延々とお説教を食らう羽目になる。
歩美からお説教を受けなくても…自分が一番分かっている事なのに。
「分かった。哲君がそんなに貧乳が嫌なら、貧乳でも谷間を作れることを証明しよう」
「いや、あっ、あのね、歩美…」
ランチで入ったパスタ屋さんで、フォークを握りしめて力説しなくてもいいよ。
OLのお姉さんが若いっていいわねぇって目でこっちを見てるよ。
中にはグッジョブポーズしている人もいるんですけど。
とにかく恥ずかしくて私は俯くしかない。
「歩美はさ、谷間があるからいいじゃない」
セーラー服から程良く厚みがあるように見えるから羨ましい。
「こんなのね、寄せて集めてパット入れるのよ。もしかして持ってないの?」
私は真っ赤になって頷く。こんな羞恥プレイはもう勘弁して欲しい。
それとも最近の歩美はSなのかな?十分素質はありそうだ。
「分かった。お姉さんが見てあげる。その位のお金はあるでしょう?
案外さ、サイズが合ってないかもよ」
フムフム。サイズが合ってないって可能性があるんだ。
っていうか、サイズ計ったことないかもしれない…私。
皆それをしているというのなら、私どんだけ女子力低いんだろう。
今のやり取りだけでも…軽く凹んでもいいですか?
「そうと分かれば、早速真美の勝負下着を買いに行こう」
歩美は人のことをおもちゃにしているのかな?ちょっと不安になった。
怖いのは金額じゃなくて、歩美が選ぼうとしている下着の方だ。
「本当はね、私も彼氏とそろそろ…かなぁってね」
そういうことはもっと早くに言ってよ。こっちは免疫がないんだから。
っていうか、いつの間に彼氏が出来て…そう…なってたんだろう?
親友だから、なんでもしっていないといけないとは思わってない。
歩美が言ってこなかったって事は、何か言えない理由がある訳だ。
「私はおまけな訳ね。哲に本当のこと言っちゃおうかな」
「いいよ。夜だったら。私今夜は彼とお泊りだから。真美と一緒だね」
私は開いた口がふさがらなくて口をパクパクさせた。
「一緒じゃない。違うから」
「まぁ、まぁ。そう言わないで。セクスィダイナマイトになれるかな
くっくっ…」
ノリノリな歩美にひきずられて私はお店を後にした。
誰か…お願い…助けて…。
完全なガールズトークです。意外に歩美は策士だったりします。