55 シルヴァの帰宅
夕ごはんを食べた後、シルヴァがノエルに尋ねる。
「ノエル。ティルの拠点はどうだ?」
「ん? いいとこだな?」
「では、ここで暮らすか?」
最終判断は拠点を見てからでいいと俺は言った。
だから、改めてシルヴァは尋ねたのだろう。
「うん。そだな。ここと、あとはかあさまととうさまのとこでくらす」
「そうか」
シルヴァはノエルの頭にそっと鼻を付ける。
「ティル。聞いての通りだ。ノエルを頼む」
「ああ、任された。ガルガル、アオとクロとシロも預かるということでいいか?」
「うむ。……よろしく頼む。面倒をかけるが……」
「たいした面倒ではないさ。子供は沢山いるからね」
そういうと、シルヴァから改めて礼を言われた。
その後、シルヴァは村の者たち全員に、ノエルたちをよろしく頼むと言ってまわる。
「フィロ、カトリーヌ。実の親たるそなたらに、よろしく頼むというのはおかしな話しだが……」
「いえ、任されました。これまでありがとうございました」
「本当にありがとうございます。そして、是非これからもよろしくお願いします」
シルヴァはフィロとカトリーヌと、しばらくの間、話し合っていた。
その後、シルヴァは巣に帰ることになった。
それは予定されていたことだが、
「なぁぁなぁ」「みゃぁぁぁぁ」「にゃぁぁぁぁにゃぁぁ」」
子猫は、一生懸命引き留めようとものすごく鳴いた。いや泣いた。
「そう泣くでない。また明日も訪れるゆえな」
我が子に泣かれて、シルヴァも出発しにくそうだ。
「アオ、クロ、シロ。あにがついているからな?」
「がう」
「ガルガルもな? だから、だいじょうぶだ。さみしくないな?」
ノエルがアオたちに優しく声をかけて、ぎゅっと抱きしめる。
ガルガルもアオたちをベロベロ舐めた。
それでも子猫たちは泣きやまなかった。
「ティル。ジルカ。それに皆も。子猫たちを頼む」
「ああ、わかっている。心配するな」
「任せるのである! シルヴァも気をつけるのだ」
「ああ、ジルカも、油断するでないぞ」
俺とジルカに挨拶した後、シルヴァは子猫たちとノエル、ガルガルに鼻を付ける。
「それではな。また明日やってくるから安心するが良い」
「うん、ノエルに任せてな?」
「がうがう」
最後にもう一度、シルヴァは子猫たちに鼻を付けて優しく舐めると、巣に戻っていった。
「なぁぁぁなぁぁなぁ」「みゃぁぁみぁぁぁ」「にゃぁぁにゃぁぁ」
「おちつけ、おちつけ。ほーらほらほら枝だよ~」
「ばうばう!」
「…………なぁ」「……みゃ」「にゃ」
ノエルが聖樹の枝を、ガルガルが拾った枝を振り回すとアオたちは泣き止んだ。
「なっなあ!」「みゃみゃっみゃ」「にゃ~にゃっ」
そして楽しそうに振り回す枝にじゃれつき始めた。
「……ふう、良かった。どうなるものかと」
心配そうに子猫たちを見つめていたミアが呟く。
「ノエル、立派になって……」
「もうお兄ちゃんね」
フィロとカトリーヌはノエルの兄ぶりに感動していた。
リラはノエルに近づいて、アオたちを撫でながら言う。
「ノエル。ちょっと良いかしら?」
「いいけど、どした?」
「神のお話をしたいから、神殿にきてほしいの」
「あ、あやしいな?」
「全然あやしくないわ。うちの神がノエルを見つける手伝いをしたのは聞いているでしょう?」
「うん、きいてる」
「手伝うかわりに、神殿に遊びに来てほしいって神は言っていたのよ」
「そなのか?」
ノエルがフィロとカトリーヌの方を見る。
「そうだな。そういう話しにはなっていた」
「そうなの。ノエル。リラの神様は怪しくない良い神様よ」
「そっかー。じゃあ、神殿いく」
そして、ノエルはリラと一緒に神殿へと入っていった。
ノエルと離れて子猫たちが騒ぐかと思ったが、
「がうがう~」
「なぁなぁ」「みゃみゃみゃ」「にゃにゃ」
ノエルを気にせず、遊びまくっている。
モラクスやミーシャたち年少組、そしてコボルトたちも混じって、元気に遊んでいた。
「……シルヴァがいなくなったことに慣れたのか?」
「そうだね。よかったよかった」
俺とミアは元気に遊ぶ子猫たちを見て、ほっと胸をなで下ろしたのだった。




