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最強魔導師は不毛の大地でスローライフを送る ~凶悪な魔物が跋扈し瘴気漂う腐界でも、魔法があれば快適です~  作者: えぞぎんぎつね


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53 久しぶりの拠点

 たまに魔物を倒しつつ、休憩を二回取り、十時間後。

 日没近くになって、俺の拠点が見えてきた。


「おー、ティル! あれがコボルトの魔法ってやつな?」


 ノエルは結界内に生い茂って見える幻影の魔樹と魔草を見て嬉しそうに言う。


「そうだよ。ノエル。シルヴァ。ガルガル。付いてきてくれ」


 俺は皆を連れて、結界の中へと入っていく。

 子猫たちは、まだガルガルの背中にしがみついたままだ。

 新しい場所で警戒しているのだろう。


「おお、確かに瘴気が完全にないではないか。これがティルの結界の力か」

「この木、すごいな? 精霊が気になるな?」

「わふわふっ……ぁぅ?」


 結界に入って数歩進んだところで、周囲に生い茂っていた魔樹と魔草が消える。


「すごい! ふおおお」

「ぁぅぁぅ」

「なあなあ!」「みゃぁぁぁ!」「にゃあ」


 ノエル、ガルガル、子猫たちが一斉に驚きの声を上げた。


「見事である。これがティルの作った村か」

「まだ村と呼べるほどのものじゃないさ。拠点だよ。凄く気になることがあるが……」


 出発する前に比べて、生えている草木が間引きされている。

 きっとコボルトたちの農作業の成果だろう。


 おかげで、拠点の中心まで見通すことができた。


 拠点に知らない建物と構造物が増えている。

 だが、それはひとまず後回しだ。


「おーい、みんなただいま!」


 俺は拠点のみんなに呼びかける。


「おかえり!」「その子だれ?」「わーでっかい猫と犬だ!」「子猫もいる!」」

『おかえりだわん!』『まちくたびれたわん!』


 子供たちとコボルトたちが一斉に駆け寄ってきた。

 モニファスとペリオス、ペリーナも走ってきて、モラクスとペロをベロベロ舐めている。


「とりあえず、新しい仲間を紹介しよう」

「おかえり!」『待ってたわん!』

「この子がノエル。そしてでかい犬がガルガルで、大きい猫がシルヴァ、子猫がアオ、クロ、シロだ」

「わー、かわいい!」「ぺろぐらいでかい!」

「子猫だ!ふぉぉぉ」

『仲間がふえてうれしいわん』『なでてわん!』『やったわんね!』


 子供たちとコボルトたちがはしゃぎながら、ノエルたちに群がっている。


「ノエルだ。よろしくな?」

「わぅわぅ」「なぁ」「みゃ」「にゃ」

「我はシルヴァだ。よろしく頼む」


 ノエルたちは子猫も含めて物怖じせず子供たちとコボルトたちに挨拶する。

 そして、モラクスやペロも一緒に子供たちとわいわいし始めた。


「おかえり。ティル。死の山はどうだった?」


 ノエルたちに自己紹介を終えたミアがやってくる。


「ただいま。魔物は強かったし、瘴気も濃かったな」

「やはりそうか……ノエルは拠点で暮らすのか?」

「勝手に決めてすまない。ノエルは外の世界と拠点を行き来する形になるが……問題あるか?」

「もちろんないよ」

「ありがとう」


 お礼をいうと、ミアはにこりと笑う。


「ミーシャにも年の近い友達ができるのはいいことだと思うよ」

「そうだな。……何か問題があったら遠慮せずに言ってくれ。なんとかする」


 後半は小声で、ミアにだけ聞こえるように言う。

 新たな仲間が増えたら、問題が起こるかもしれないから、念のためだ。


「うん、でも、大丈夫だと思うけどね」

「……ところで、リアとジルカは?」

「リアは、神殿の中で儀式。ジルカは儀式を邪魔されないよう拠点の外を見回りしているよ」


 そういって、ミアは新しい建物を指さした。

 その建物は木造で、およそ一辺が五メートルの立方体の形状をしていた。


「あれが神殿か。コボルトたちの建築技術は高いんだな」


 俺がそう呟くと、少し離れていたコボルトたちが耳をびくっとさせて駆けてくる。


『たてるのもとくいだわん!』『ほめてくれるわん?』


 その声を聞いたコボルトたちが、尻尾を振りながら一斉に駆けてきたので、

『がんばったわん!』『なでてなでてわん!』

「よーしよしよし、えらいぞーすごいなー」

『うれしいわん!』

 俺はコボルトたちを撫でまくった。


「あの木の柱みたいなのは?」


 拠点には、神殿を中心にして、高さ三メートルほどの木柱が八本建てられていた。


『あれもリラに頼まれてつくったわんね!』『しんでんのいちぶわんね~』

「そっかー、すごいなー」


 俺はコボルトたちを撫でまくる。もふもふで気持ちが良い。


「あれは炉?」

『そうだわん!』『鉱石を加工するわんねー』

「あのテーブルは?」


 神殿の近くに大きな木のテーブルがあった。全員が席に着けそうなぐらい大きなものだ。


『みんなで、ごはんをたべるためにつくったわん』

『食器をひっくりかえしちゃったわんねー』

『りらが、つくえがあったほうがたべやすいわんって』


 どうやら、子供が食器をひっくり返したのを見て、リラが作ってくれるよう頼んだらしい。


「そっかー。便利になったなぁ」


 俺はコボルトたちをなで回しながら、ミアに尋ねる。


「ところで儀式って?」

「よくわからないけど、必要なことらしい。日没にあわせて行わないとらしい?」


 神官のやることはよくわからないが、きっと大切なことなのだろう。


「だから、ティルたちを出迎えてあげてって言ってたー」

「夜ご飯もできているんだけど、リラが出てくるまでまってあげようね~」


 近くにいた子供たちが元気に教えてくれる。


「あ、そうだった。リラは木を植えろって言ってたな。何のことかわかる?」

 ミアが思い出したように言う。


「聖樹のことか? シルヴァ、ノエル。聖樹の若木は植えなくていいのか?」


 モラクスとペロは咥えていた聖樹の若木を地面に置いて遊んでいた。

 子供たちやコボルトたちをベロベロ舐めるには若木を咥えたままだと都合が悪いのだ。


「そうだった! どこにうえたらいい?」

「どこでもノエルの好きなところに植えていいよ」

「いいの? ありがと! じゃあ……ここ!」

『手伝うわん!』『あなをほるわんね!』


 コボルトたちが、ノエルの元に走って行く。


「こぼるとたち、ありがとな?」

『ほめられたわん!』『なでてほしいわん!』


 大喜びのコボルトたちが穴を掘り、運んできた三本の聖樹の若木の移植が終わる。

 続けて持ってきた聖樹の種も植えていく。

 俺とフィロ、カトリーヌが食べた聖樹の実から取り出した種も植えられている。


「今日のごはんだ。たくさんたべるといい」


 そういいながら、ノエルは右手に持った杖で、若木に触れていく。

 魔力がノエルから若木へと移っていく。


(ほう、魔力の動きによどみがない……って、魔力の量が多いな)


 ノエルから若木に移る魔力量はかなり多かった。


「ノエル。そんなに魔力をあげて疲れないのか?」

「だいじょうぶ。いつもやってるからな?」

「それはすごい」


 魔力を与えられた目に見えて若木の葉がみずみずしくなっていく。


 同時に拠点内の空気が変わり始めた。

 どこか神聖で、静謐な、夜明け前の大聖堂の中に一人でいるような気分にさせられる。


「種もそだつといい」


 そういって、種を埋めた場所にも杖で触れる。


「おお?」

 すると数秒で、芽が出て、すくすくと育ち始める。


「すごいすごい! もうはえてきた!」

「がうがう!」

 ミーシャが大喜びして、ガルガルがどや顔で尻尾を揺らす。


「えへへ。育てるの得意だからな?」


 ガルガルに顔をベロベロ舐められて、ノエルは照れくさそうにしていた。


 芽が一メートルぐらいまで伸びたとき、神殿の扉が開き、中からリラが出てくる。

 リラは真っ白なローブと神官の帽子のようなものを身に付けていた。

 手には身長ぐらいある大きくて精巧な装飾の施された杖を持っている。


 まるで高位聖職者のようだ。以前、俺が出会った枢機卿の格好にも似ていた。


「ティル、おかえり」

「ただいま。リラ。儀式は終わったのか?」

「ええ。それより、どう?」


 そういって、リラはくるりとその場でまわる。ローブの裾がふわりと広がった。


「よく似合ってるよ。まるで聖女様みたいだ」

「ふふふ」


 なぜか、リラはどや顔をしている。


 そんなリラにシルヴァがゆっくりと近づいてきた。

 するとリラは、シルヴァに対して綺麗な所作で杖を両手で捧げるようにして跪いた。


「古の神獣。影歩きのシルヴァ。会えてうれしい。私はリラ・ミシャール。以後よろしく頼む」


 口調はぞんざいだが、響きは丁寧だった。


「星見の神の聖女よ。会えて光栄である。影歩きのシルヴァである」


 それに対して、シルヴァも丁寧に挨拶を返す。

 敬語を使わないのは、敬語は人族の者で聖獣には意味がないためだろう。


「ちょっとまて、神獣なのか? そして聖女だったのか?」

「びっくりした? 私は聖女だったのです」

「びっくりした」

「全然気づかないからおもしろかったわ」


 そういってリラは楽しそうに笑う。


「……本当にびっくりしたよ。そして、神獣って聖獣の上位存在というあの?」

「その神獣よ。シルヴァを見たら、ただ者じゃないってわかるでしょう?」

「なぁなぁ。神獣と聖獣ってどうちがうん?」


 尋ねてきたノエルにリラが易しく説明する。


 神獣は聖獣に似ているが異なるものだ。

 聖獣の中から神に選ばれたものが神獣である。人族でいえば聖女や聖者のようなものだ。


「なに、神獣か聖獣かなど、強さ以外に大きな違いはない。気にするでない」


 シルヴァがそういうと、リラが頷きながら言う。


「そうよ、人族が気にするようなことじゃないわ。……あなたがノエルね」

「うん。挨拶がおくれてすまぬな? ぼくがノエル。よろしくな? この子がガルガルで、アオとクロとシロ」

「これはご丁寧にありがとう。よろしくね。ノエル。私はリラ・ミシャール。ガルガルもよろしく。アオとクロとシロも」

「わうわう」「なぁ」「にゃ」「みゃ」


 自己紹介を終えると、シルヴァが丁寧に言う。


「星見の神の聖女よ。ノエルを見つけるために尽力したと聞いた。礼を言う」

「うちの神の希望だから、気にしないで」

「星見の神は、ノエルに何をさせたいのだ?」


 そう尋ねてはいるが、シルヴァはあまり不安には思っていなさそうだ。

 シルヴァは星見の神ならば、ノエルにひどいことをさせないと信用しているのかもしれない。


「わかんない。聖女としての神託じゃなく、リラとしての予想として聞いてほしいのだけど」


 そう念押しして、リラは言う。


「多分、聖樹を育てて欲しいのではないかしら」

「ふむ? 確かに、あり得る話しだな」

「ノエル、せいじゅ育てるの得意だからな? まかせるといい」

「お願いね」



 リラが優しくノエルの頭を撫でていると、ミーシャたち子供たちとコボルトたちが来る。

「リラ! ミーシャ、おなかすいちゃった!」

『ぺこぺこだわん!』

「お待たせ。ご飯にしよっか」

「わーい」

『やったわんね!』


 リラとミア、年長の子供たちとコボルトたちがご飯の準備を始めた。

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