第35話
アダン達が人が集まる場所に行くとそこは一触即発の雰囲気に包まれていた。
「出ていけくそったれ共!!」
「失せろ!消えろ!くたばりやがれ!!」
少年達の怒号と罵声が響く地下水道、手製の槍を構えながら地下水道の入り口に住人たちは集まっていた。
そして槍を向けているのは……
(えらく整った装備だな……)
少年たちの前に立っている男達は革鎧に身を包み長剣と長方形の大きな盾を持っている。
盾に紋章が描かれているように見える為、暴漢やならず者とは違うように思えるが……
「ここから出ていけ!俺たちの家だ!!」
「ええい埒が明かん!やれ!!全員殺せ!!」
痺れをきらし怒号と共に男達は剣を振りかざし少年たちに殺到した。
「野郎!!」
「殺してやる!!この糞共が!!」
すぐに地下水道は戦場さながらの光景へと変貌した。
敵味方が入り乱れ血を流し、殺し合う。
そしてその中にはルノーの姿もあった。
「死ねぇッ!!」
錆びの浮いた剣で斬りかかり兵士を倒す彼の姿は回りの少年達を奮い立たせる。
技量と装備で勝る敵を、ルノー達はその士気の高さでもって拮抗状態まで持っていった。
「おいお客人!!聞こえてるか!?」
物陰に隠れながら様子を伺っていたアダン達に大声で彼は叫んだ。
「明日の朝までって話だったがとっとと失せろ!!これ以上ここに居られると迷惑だ!!」
そんな風に叫んでいると、ルノーの頬を剣が掠めた。
「おいアダン!加勢しようぜ!?」
「…………」
マブトがそう言って立ち上がった瞬間。
「やめとけ。マブト」
「は!?」
「あいつらの誇りを踏みにじることになる」
「んなこと言ってる場合かよ!?」
「行くぞ」
「ああおい!……糞ッ!」
「どこだ!?敵はどこだ!!」
地下水道から敵を追い出し暗闇の中を敗走する彼ら。
そんな彼らを追いかけ出てきたルノーが最初に見たのは負傷し倒れた仲間や死んだ敵の姿。
地面を覆い隠すように死体があった。
「……終わったか」
「ルノーさん、怪我した奴の手当してやらないと」
「任せる。俺は見張りしておく」
「気をつけて」
仲間が離れた瞬間だった。
「くたばれ!!ルノー!!」
「なっ!?」
ルノーの足元。
死体の下で息をひそめていた敵が突如立ち上がり短剣を突き出してきた。
「ルノーさん!!」
間に合わない。
誰もがそう思った。
「ガァッ!?」
短い叫び声と共に、男は短剣を落とした。
すかさず切り伏せ、不思議に思いつつ見れば短剣を握っていた手に矢が突き刺さっている。
「……暗闇の中で手だけ狙って撃ち抜くか」
「大丈夫ですか!?ルノーさん!?」
「ああ」
慌てて駆け寄ってくる仲間を宥めながら、矢が飛んできた方向を見る。
「借りは返すぞ」
「はい?」
「何でもない、行くぞ」
「良かったのか?誇りを踏みにじるとか言ってなかった?アダンちゃん」
「あの時渡した代金じゃ、不服そうだったからな。これは代金代わりに助けただけさ」
少し離れた場所で木の上に登り弩を構えているアダンが居た。
狙いは真っすぐルノーの居る場所。
「さて行こうか。馬取ってきてくれ」
「あいよ」
にやりと笑いながら、マブトは馬を泊めている場所まで走った。
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