第17話
「腹減ったなぁ……」
「そうだな。だがそれももうすぐ終わりだ」
馬から降りたアダンとマブトの二人が土を踏み固めただけの交易道を歩いていく。
ヘルガと出会った村から歩いて3日。
次の村が目の前に見えてきた。
「うん?おかしいな」
「どうした?」
「いや、地図によればもうそろそろ教会の鐘塔が見えてくるはずなんだ。けどどう見てもそんなもの無い」
地図とみているアダンが眉をひそめながらそう言った。
「取り壊したんだろ。それかその地図が古いかだ」
「だと良いんだがな」
いよいよ村に入ろうというところ。
二人は目の前に広がる光景に唖然とした。
「こりゃあ……来ない方が良かったんじゃねぇか?」
「だな……」
アダンが地図で見ていた鐘塔は確かに存在していた。
徹底的に破壊され、塔を構成していたと思われる煉瓦の残骸に鐘は埋もれていたが……
「酷いな。これは」
「罰当たりなもんだ」
隣接していた教会も焼け落ちたような状態。
村自体もかなり荒れている。
そこかしこに屋根が落ちた建物、草に飲まれて自然に帰りつつある家などが散見される。
「無人になってからかなり経つな。けど交易道の近くの村がこんなになるか?」
「盗賊……とも思ったがマブト、あれ見てみろ」
「うん?」
アダンが一つの崩壊した家を指さす。
元は入り口の扉だったと思われる朽ちかけた板に赤い染料で×印が付けられている。
「何だありゃ?」
「疫病なんかの感染者が居たらああやって印をつけられるんだよ」
「おいおい。じゃあここに居たらまずいだろ俺達」
そわそわしだすマブト。
「落ち着け。人間が居ないなら感染も糞も無い」
「そ、そうだな」
「とりあえず人間を探そう。ここで食料補給できなきゃまた暫く道草食う羽目になる」
「そうだな。さっさと探そうぜ」
「……どこもかしこも×印。畑も草まみれ、建物は崩壊しまくってる。これじゃあな」
「希望を持てよ。って言いたいがこれじゃな」
崩れかけた建物に背中を預け、二人並んで座る。
人や宿を探してもう夕暮れになるが、人がいる気配などは全くと言っていいほど無かった。
また野宿になるだろう、空き家は沢山あるので野宿よりは多少ましだろうが。
「もう面倒だ。ちょっと寝る」
「そうするか」
二人ともその場で寝っ転がり目を閉じた。
そしてしばらくうたた寝していると……
「あの……もし、もし」
「ん?」
人の声がして、アダンは目を開けた。
「あんた……」
すぐそばで座り込んでアダンを覗き込む女性の姿が見えた。
茶色く太い三つ編みの毛を一本垂らし、穏やかな笑みを浮べている。
「ん?どうしたアダン?ってなんだこの可愛い娘?」
マブトも起きた。
「エリザっていいます。こんなところで寝てたので声をかけたんです」
「食料補給と休みの為に来たんだけどな。どこもここもこの様だったから」
「そうですね。この村も大分寂れちゃいましたから。人は殆ど残ってません。良ければ私の家に来ますか?多少は休めるかと」
「いいのかい?」
「久しぶりに人とお話もしてみたいので。どうぞ」
「じゃあ喜んで。行きましょアダンちゃん」
「あ、ああ」
若干戸惑いを覚えながらも、二人はエリザについていくことにした。
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