10.ダークエルフ
すいません、今日はかなり短めです。
明日はもうちょい長く書けるように頑張ります。
帰りは行きとは違って恐ろしく静かであった。
いや、まぁ元からリムはそれほど喋る女の子ではないので、行きもそれほど話してはいないんだろうが……。
それでも帰りほどの息苦しさではなかったはずだ。
……原因は、考えるまでもなくリピアが別れ際に放ったあの一言。
『……ダークエルフと連むのは、感心しないな』
ーーーダークエルフ。
その言葉を耳にした瞬間に、まるであの伝説の魔物、メデューサにでも睨まれたかのようにリムは凍りついてピクリともしなくなっていた。
銀髪赤目という希少な色彩に、エルフのように尖った耳。
そして、まるでその名の通り闇を体現するかのように褐色の体躯……。
状況から推察しても、恐らくはリムも種族名なのであろうことは確実。
普段は無表情であるあのリムが、泣いて懇願するほどに聞かれたくなかった種族名。
そして、あの忠告するような真剣な眼差しを向けてきたリピアの様子。
それらを鑑みるにもしかして俺は、とんでもない奴を家に入れているのではないか……と。
そんな不安が脳裏をよぎるも、不思議とリムを追い出そうという考えは浮かんでこなかった。
ただ、今は混乱した脳内を落ち着かせるために、早く眠ってしまおう。
そう思って俺がベッドに横になると同時ーーー
「ーーーすみません……今から、身の上話の一つでも、聞いていただけませんか?」
帰宅してからも全く口を開くことのなかったリムから、俺に声がかかった。
◆
「リピアさんが仰っていた通り、私はダークエルフという種族です」
リムの身の上話は、そんな唐突な自己紹介から始まった。
「ダークエルフ……?」
「はい。エルフと似たような容姿を持ちながら、銀髪赤目、そして全身が褐色であるのがその種族の特徴です。まぁ、見た感じからしてエルフの親戚みたいな種族だとは考えていたのでしょう?」
「ああ、まぁな」
耳が尖ってて見た目が綺麗とくれば、誰だって真っ先にエルフを思い浮かべるだろう。
そんな俺の見解に、リムは嬉しいような悲しいような複雑な表情を見せながら、説明を続けた。
「まぁ、細かいところを言えばエルフとの違いは多々ありはするんですが……今は、バスラさんが求めている情報だけざっくりと説明しますね。ダークエルフは、人類ではありません」
「……へ?」
突然の情報開示に思わず変な声が出た。
しかし、そんな俺に構わずリムは話を続ける。
「ダークエルフは……スライム、ゴブリン、オークといった類の化け物ーーー即ち、魔物と同じ分類にあります」
「……」
「一応、魔石だってあるんですよ?」
そう言って胸元をはだけさせてみせる彼女の表情には、生憎と一割も嬉しさの色が入っておらず、ただただ自分が異形の化け物であることに対する深い哀しみの色だけが、そこにはあった。
そして、そんな様をただ俺は呆然とした顔で見ることしかできなかった。
いや、できなかったのではない。
しようとしなかった、ということだろう。
それほどまでに、俺は魔物である彼女に恐れを抱いているのだ。
まぁ、それも致し方ないと言えばそれまでなのだろう。
何故なら、人類と魔物の関係というのは食うか食われるか、否殺すか食うかの関係性があり、水と油のようにお互いを反発しあう間柄だったからだ。
5月16日、追記。
諸事情により、8月近くまで書くのが難しい状態になりましたので、投稿を中止します。
一応、区切りがつくようにもう一話だけ頑張って投稿しますので、読んでいただけると幸いです。
次回の投稿予定日は、5月18日です。