表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

1.称号【節約の申し子】を獲得しました

大型連休、記念!

この10日間は、毎日投稿!



富、名声、地位……。


人間は様々な力を他者に見せつけ、そこに差異をつけることで己の欲を満たしてきた。

特にその中でも、その時代に合わせて重要視される力は変わってくる。


例えば戦国時代辺りの日本ならば戦力、江戸時代辺りならば財力、明治ならば権力、といった風に……。


そのため、人々はその時代や国が重要視している力に合わせて己を磨く必要が出るのである。

と言っても、財力や権力はある一定のレベルでどの時代でも有効だったりするのだが……。

では、そうであるとするならば、この俺がゴミ溜め生活から抜け出すためにはどんな力が必要なのかーーー?


「はぁ……スキルが欲しぃなぁああああああああッ!!!」


俺は全身を投げ出して、寝転がりながらそう叫ぶ。

しかし、その言葉に誰かが応えてくれるはずもなく……。

虚しい声の反響と、ゴミ特有のゲロ以下の匂いが俺の鼻を刺激するだけだった。


ーーーここは、ゴミ溜め都市【ジャンクヤード】

王国【レイノ】の民の中でも最も力が弱い人間が送られる、ゴミ集積場である。







ガシャンっ、ガシャンっ。


と、規則正しい鉄くずの音が俺の鼓膜を揺さぶる。


「ふぅううう〜……」


音が鳴るたびに地面に鉄くずが当たり、ゴミ袋の取手の部分が解れそうになるものの、しっかりと握りなおしてまた歩みを再開する。


ガシャンっ、ガシャンっ。


辺り一面、ゴミだらけ。

そんな汚い都市に生活している人間は、俺を含めても片手の指で事足りるほど、といった所……。

すなわち、俺たち【ジャンクヤード】市民は未曾有の限界集落というやつだ。

いや、そもそもこんな小人数では集落と呼ぶのですらおこがましいか……。


ガシャンっ、ガシャンっ。


脱線しがちな俺の脳みそを首を振って直すと、俺はまた歩みを進める。


しかし【ジャンクヤード】には市民の数がかなり少ないとはいえ、暮らす分にはさほど苦労する土地ではない。

というのも、【ジャンクヤード】には豊富な資源(ゴミ)が山のように置いてあるからだ。


例えば、錆びて使い物にならなくなった剣とか、油汚れの酷い食器、明らかに消費期限切れの生ゴミ全般に、夜になると髪が伸びる呪いの人形ガチなど……。


最後の一品だけは変だったものの、それ以外はさして凶悪なものではない。

いや、生ゴミは放っておくと感染症の危険性があるので割と危ないのだが……。


それでも、ちゃんと処理すればそれほど問題になるわけでもない。


それに、ここは首都【セントラル】に近いこともあってかかなりゴミの質が良い。

ちゃんと直せば使えそうな物がゴロゴロと転がっているのだ。

俺は、そんな有用なゴミを拾い集めて、売ったり直したりしながら生活をしている、というわけだ……。


魔物に襲われることもなく、理不尽な貴族による折檻もなく、時間に追われて仕事をする必要もない、そんな理想的な生活……。

俺自身、どこに文句があるというのか、と首を傾げるぐらい恵まれた生活をしているというのに……。

何故だか、心が満たされない。


「ただいま」と言っても誰も反応することのない、空っぽの我が家(と言っても、ゴミで溢れかえっているので物は多いのだが……)を見ながら俺はそう思った。






この世界では、ステータス重視、つまりは個々人の武力に重きを置いている節がある。

筋力が高ければいいとか、足が速いほうが格好良いとか……。

平民なのにステータスが高いからといって貴族の養子になったという例も少なくない。


その中でもとりわけ重要視されているのがスキルである。

スキルは、その人が持っている技術的なもしくは魔術的な力をステータスに反映したもので、スキルには熟練度(数字は、1〜10まである)が存在している。

このスキルをどれだけ保有しているのかが、一種のアドバンテージになっているのだ。


スキルは先天的に得るものと後天的に得るものの二種類あり、先天スキルが平均4個、後天スキルが平均3個の、計7個が普通の基準である。


それに対して、俺はと言えば先天スキル1個に、後天スキルが1個の計2個。

これはあまりに少なすぎる……。

この、スキル保持数の少なさが、俺がこのゴミ溜め都市に生活している理由の一端である。


まあ、いくら嘆いていても現状は変わらない。

俺にできることは限られているのだから、今はとりあえず自分の出来ることをしよう。


俺は床に今日の成果(ゴミ)をばら撒くと、二つしかない俺のスキルの内の一つ、スキル“目利き”を発動させた。


“目利き”のスキルは、使い勝手がかなり良く、俺としては結構重宝しているスキルであるのだが……。

このスキル、完全に“鑑定”というスキルの下位互換なのである。


“目利き”は物の価値が曖昧に理解する、ぐらいのスキルなのに対して、“鑑定”はその物の名称どころか、頑丈さや使い勝手の良さなど……果てには他人のステータスまで見ることが出来る、素晴らしく有能な力である。


このスキルが、あれば例え他のスキルなどがなくとも冒険者ギルドで雇ってもらえる程の超激レアスキルなのだ。


……が。


そのあまりにも強力なスキルがあるが故に、逆に“目利き”のスキルは軽んじられる風潮にある。

首都【セントラル】に住んでいる貴族なんかは、「“目利き”なんて“鑑定”の劣化版にしかならんスキルを持つぐらいならば、そんなスキル持ってないほうがマシである」と豪語していたらしく、その考えが王国内では浸透して、今では“目利き”のスキルを持っていることは嘲笑の対象になっている。


便利なのに、“目利き”……。


自分の持っているスキルが嘲笑の対象であるというのは、凄まじく悲しい気持ちになるが……。

俺は気持ちを立て直してスキルを発動する。


《品質(中)》《品質(低)》《品質(中)》《品質(中)》《品質(中)》


今日は五つのゴミを運んできたが、大分当たりを引いたようだ。


いくら【セントラル】のゴミとはいえ、質が高いものはそれほどあるわけではなく、大抵の物は《品質(低)》となる。

中には、《品質(劣悪)》という物もあるぐらいで、《品質(中)》は10個に1個あれば良い方である。


それを鑑みれば、今回のゴミ拾いは大成功と言えるだろう。


「うーん、この《品質(中)》の4つはそれほど手入れをする必要はないか……。綺麗に磨いたら何でも屋に持っていこう。となると……」


この《品質(低)》のゴミだけは少し補修が必要になるだろうなぁ。

俺は修理するための工具の準備を始めた。





トンッカンットンッカンッ!


(ゴミとして落ちていた)金槌を小気味良いリズムと共に、俺は球状の何かを変形させていく。

当初は、これを元の形へと修理していく予定であったのだが……。

この物の使い道がいまいち理解できなかったので、何でも屋に売るようではなく家に置く家具として作り変えているところである。

幸いなことに、これは鉄製の物なので家具としては申し分ない。


「とは言ったものの……これ、何に使えば良いんだろうか?」


何回か金槌で変形させ、のっぺりとした板のような形にしたものの、鉄の加工が特技なわけでもない素人の俺からすれば、これ以上手を加える手立てがあるはずもなく……。


これからどうすればいいのだろうか?

と、八方塞がりの状態であった。


「うーん、鉄だし資源として出せば鍛冶屋なら受け取ってくれないかなぁ……?」


なんて、声に出して言ってみたものの、それが現実的ではないことは元からわかっている。


というのも、王国【レイノ】は度重なる戦勝によって領土が拡大。

それによって、今の王国は資源が豊かな国として世界第2位になっている。(ちなみに1位は帝国だって、何でも屋が言ってた)

そのため、この国には鉄資源なんて腐るほどあるので再資源化なんてお金のかかることはしない。


大量生産、大量消費。

それをモットーとして今の王国は成り立っているのだ。


そんな国の鍛冶屋に、板のような鉄の塊を持っていったところで「ゴミを持ってきてんじゃねえ!」と怒鳴り散らされるだけだろう。


だからこそ、俺がこいつを有効活用してやらないといけないんだけど……。


「……とりあえず、料理用の鉄板にでもするか。なんか、金属は熱を通しやすいとか聞いたし……」


何だったか……金属には熱でん……何ちゃら性というのが、あるから熱を通しやすいって、あいつが言ってたような……ないような……?

まぁ、いいか。

どうせ個人で使うんだし、どんな物が出来ても誰にも文句

言われる筋合いはないだろう。


そんな投げやりな思考と共に金槌を手に取った俺は、またトンテンカンのリズムで綺麗な鉄板になるように形を整えーーー


「で、出来たぁあああーーーッ!!!」


約2時間(と言っても、正確な時間なんてわからないが……)を費やして俺の渾身の鉄板ができた。


ーーーと、その瞬間。


《千回目のリサイクルを確認。これによって、リユース、リデュース、リサイクルの3つが条件に達しました》


「え?……え?何だ、これ?」


突如として脳内から鳴り響く女性の声。

それによって、俺は一気に混乱する。


《よって、ここに称号を授与します》


しかし、そんな俺の混乱などには見向きもせず淡々と言葉が発せられる。


《バスラは、称号【節約の申し子】を獲得しましたーーー》


「えっーーー?」


そんな声と共に、俺は急に目の前が真っ暗になった。





あらすじ、ちょっと雑に作ったので、後で書き直すと思います。

あと、そのうち他力本願と、平凡な少年の方も投稿する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ