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第十九話 兆し

昨日は体調不良により投稿できませんでした。申し訳ありません。

「『そういえばどうしてこんなところに来てたの?』」


 先ほどまで僕らはお互いの過去の事について話していた。それも大体話し終えたところで僕はふと疑問に思っていた事をセレスに尋ねた。


「『よく考えれば、セレスは今ではもう立派な王族でしょ? なんでこんな街中の修練場なんかに来てるの?』」

「『私は今までお城から出る事が出来なかったからさ、お城の外を見てみたいって思ってたんだよね。それでお城の外を歩いて回ってたら修練場があるじゃない。今まで魔法の練習なんて用意された部屋でできる小規模な魔法しかできなかったの。だから理論上はわかってるけど実践したことのない魔法がたくさんあったんだよね。だからちょっと試しに使ってみたくてさ』」

「『それじゃあここに来たのは偶然だったんだね』」


 僕はその偶然に助けられたわけだが。


「『それじゃあセレスの魔法も見せてよ』」

「『いいよ! 見ててね!』」


 セレスは立ち上がり手の平を正面に向けて丸太に狙いを定める。そして魔法の名前を告げる。


「エアカッター」


 セレスの手から風の刃が飛び出す。三枚の三日月型の刃が丸太めがけて一直線に飛んでいく。風の刃―—透明な刃だが、微妙に見える。空間のその部分だけ、少しだけ空間が歪んで見えるのだ。


 刃が丸太に直撃した。丸太は八つ程の塊に割れ、音を立てて地面に崩れ落ちる。


「『どう? かっこよくない?』」

「『かっこいいけどさ、もう少し見やすい奴見せてよ』」

「『え~じゃあもう一回するね』」


 再びセレスは手の平を正面に向ける。


「ファイヤーランス」


 セレスの手の平から一メートル程の長さの槍の形の炎が現れる。その槍は回転しながら先ほどの風の刃より少しだけ遅いスピードで丸太に突っ込んでいく。先ほどの風の刃が大人の放つ矢より少し遅い程度、今の炎の槍はプロのスポーツ選手の投げる野球の球ぐらいの早さだった。


 炎の槍が丸太に突き刺さり、そのまま貫通し、地面に突き刺さる。丸太に残った痕は焦げているだけで周りに延焼などしている様子はない。


「『どう!? これこそ魔法って感じでしょ!? 目立つし満足した?』」


 彼女の魔法は確かに派手で僕の使いたいように手の平から放出されていた。羨ましい。


「『僕はセレスみたいに手の平から魔法を出せないからそうゆう風に魔法を出せるのは憧れるなぁ』」

「『確かになんかアル君の魔法の発動の仕方ってなんかおかしかったよね。一回魔力のまま体外に放出して、それを変換してるって形かな?』」

「『うん、そうなんだよね。魔力の生み出し方の段階でちょっと変わった方法を取っちゃったからなのか、魔力を手の平から放出することが出来なくてさ。口からなら魔力放出できるから口から一回魔力を空気みたいに吐き出してから変換するしかないんだよね』」


 セレスは僕の手の平を持ち、彼女の手の平と僕の手の平を合わせる。


「『セレス!?』」


 セレスの行動に僕は驚き、つい手を放そうとしてしまう。僕の手放した手をセレスは再び手に取り、手の平を合わせる。


「『もしかしたらアルノルト君の問題を解決できるかもしれない方法があるから、私のいう事を聞いて?』」


 僕は無言でうなずいた。


「『こうやって他人と手の平を合わせて魔力を放出することは出来る?』」


 初めて魔力を知覚した時と同じだ。あの時は僕自身が魔力を練る事が出来なかったから魔力が一方通行で流れ込んでくるだけだったけれど。


 今は自分の手の平を合わせて合掌した状態での魔力循環ができるようになっている。ならば、試した事はないけれど、他人に魔力を流すことは……多分できる。


「『それじゃあ、流すよ』」


 僕は右手に魔力の流れを偏らせ、セレスの手の平と接している部分に魔力を集める。僕の手の平の体温と彼女の手の平の温度が混ざり合い、手の平が一つになったかのような錯覚を覚えた。



 僕は右手に集めた魔力を彼女の左の手の平を伝い彼女の体を通し、彼女の右の手の平に魔力を届け、僕の手の平に戻ってくるようにイメージをして、魔力を流した。



「っん……ぁ」


 セレスが小さく漏れるような声を上げる。セレスの幼いながらにも艶のある声に驚いた僕は再び彼女とくっつけていた手の平を話した。


「『大丈夫!?』」

「『はぁ……ん……大……丈夫。アル君の濃いのが流れ込んできてびっくりしただけ』」

「『無理そうならもうやめるけど……』」

「『大丈夫だから……続けて』」


 僕とセレスは再び手の平を合わせる。


「『それじゃあ、今度は目をつぶって魔力を流して。あと、私もアル君の体に魔力を流すから』」


 僕は目をつぶり、再び魔力を流し始める。右手からは僕の魔力がセレスの中に流れ込み、左手からは彼女の魔力が流れ込んでくる。


「『いい? 私がいいっていうまで目は開けちゃだめだよ?』」


 




 それからどれくらい経っただろうか。僕と彼女の手の平の感覚が完全に一体化した感覚がする。お互いの魔力もよく馴染みあい、淀みなく互いの体の中を循環し合う。




「『もう目を開けてもいいよ』」


 叫ぶようなセレス声を聞き、僕は目を開いた。


「『どーう? びっくりした?』」


 セレスは十メートル程離れた所から僕にそう呼びかけた。



「『これってどういう事!?』」


 僕は彼女に聞こえるように大きな声を出した。セレスは再び僕の隣まで歩いてきて僕の足元に座った。


「『はぁ、少し疲れちゃた。こんなに長く魔力の循環したのなんて初めてかも』」

「『そっか……ってそれより、今のどういう事!? 僕ずっとセレスと手の平をくっつけたままだと思ってたんだけど』」


 僕もそのままセレスの隣に座り込み、彼女に尋ねた。


「『私たちの間に魔力のリンクを張ったの。こうやって魔力を循環させ合うと、魔力が混ざったような感覚がしてたでしょ? その状態でお互いに全身に魔力を巡らせているとお互いの体が一体化した感覚になるの。だから体が離れたのにくっついてる感覚がするんだ』」


 確かに、僕らの魔力が混ざり合う感覚はしたし、お互いの体が一体化した感覚もあった、だけど、それがどうしてこんな現象になったんだ。


「『私は時間をかけてゆっくりとアル君から離れてたんだよね。そうすると本来なら魔力放出のできないアル君と私の間での魔力の循環が止まっちゃうはずだよね? だから私がアル君の手の平に直接魔力を飛ばしてたの。私のその感覚に引っ張られて、アル君は無意識のうちにアル君の手の平から私の手の平に魔力を飛ばしてた。それを確認出来たら私はまた距離を取る。その繰り返しをするうちにあの距離まで離れたの』」


 彼女は僕にそう説明した。



「『つまりアル君は手の平からの魔力放出が出来てたの。無意識だけどね。こんどはこれを意識的にやってみようか』」

「『わかった!』」


 僕は再び、セレスと手の平をくっつけようとした。しかしそこで部屋の入口の辺りから、僕らにたいして呼びかける声が聞こえた。




「セレスティーナ殿下。先ほどから何をお話になっているのですか?」


 そういえば、僕らずっと日本語でしゃべってたね。ちょっとうかつだったかな。久しぶりに日本語を話せてうれしくて調子に乗っていたようだ。


「あら、ロシェル。ベネディクトゥスの連行は済んだのね」


 セレスはお姫様モードへと戻った。そういえば、セレスは素と殿下として振る舞う時は結構性格変わるよな。僕はあんまりそこら辺の使い分けはしてないなぁ。



「はい、その件についてなのですが、ベネディクトゥスの連行は完了したのですが、王とドナテロ大臣から事のあらましを聞きたいとの事でお二人を招集するように申し付かりました。セレスティーナ殿下とアルノルト様にご同行を願いたいのです、馬車は既に用意されています。私についてきてもらえると助かります」




 さぁて、また面倒な事になってきたぞ。


お読みいただきありがとうございます。

ご指摘ご感想などいただけたら幸いです。

基本的に毎日投稿を続けたいと考えていますが、遅筆の為、なかなかストックを作ることができず、リアルでの用事や体調不良のため、突然更新できない時があります。


用事で投稿できないときは事前に連絡させていただきます。


改めて日ごろお読みいただきありがとうございます。


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