表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

迎えに来た結実理の夫は、紺色のスーツを着た、物腰の柔らかい男性だった。


「このたびは妻がご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません」


【桂不動産管理(株) 代表取締役社長 桂嘉人(かつら・よしと)


差し出された名刺に目を落としていると、


「社長っていっても、ただの地上げ屋の息子ですよ。土地を引き継いで、看板だけ残したようなもんです」


秒で注釈を挟むあたり、説明し慣れている感じがした。


それでも嫌味な感じはしない。


「結実理さんとは中学の同級生で、偶然ここを知って来てくれたみたいで。会うのは七年ぶりなんです」


「そうでしたか。久しぶりにお友達に会えたので、はしゃいでのぼせてしまったんですね」


と言いながら、桂さんは横たわる結実理に目を落とした。


「……妻はいつまで経っても子どものようなところがあって、お恥ずかしい限りです」


首をすくめているところに、おばあちゃんが麦茶を持ってやってきた。


「ああ、すみません、お構いなく」


「よく眠っておられますし、今夜は泊まっていかれてはどないですか」


おばあちゃんが問いかけると、桂さんはきっぱりと首を振った。


「いえ、そこまでご迷惑をおかけするわけにはいきません。車で来ていますので、寝かせたまま連れて帰ります」


「嘉人さん、ごめんなさい」


声がしたほうを見ると、結実理が長い睫毛をぱちっと開けていた。


「久しぶりに銭湯に来て、ささらちゃんに会えたから……嬉しくて。ついつい長湯しちゃったの。でも、もう大丈夫」


「無理しなくていいよ、もう少し休んでいったら?」


「ううん、大丈夫」


結実理は、鏡をなぞるように夫と全く同じ角度で、首を静かに振った。


確固たる決意を感じたので、私は引き下がった。


「分かった。じゃあ、くれぐれも気をつけて。髪ちゃんと乾かして、お水飲んで、ゆっくり寝てね」


結実理はこくりと頷いた。


しっかり者の夫の横で、彼女の横顔は急に影を落とした。


まるで、叱られるのを待つ子どものように。






















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ