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第二十一話 牧舞の罠

『第二十一話 ゲスい推理』の牧舞まきま視点になります。

黒子ほくろの罠にまんまと引っかかった道貞でしたが、その裏で牧舞は……?


どうぞお楽しみください。

 千重里ちえさと君の背中。

 私を守ってくれた背中。

 私が守っていきたい背中。

 すごくほっとするのに、ちょっとどきどきする背中。


「終わったぞ、し、マッキー」

「ふぇっ!? あ、うん……」


 び、びっくりした!

 急に振り返るんだもん!


「どうしたマッキー」

「別に何でもないよミッチー」


 あ、悪い顔してる……。

 今の動揺、悟られちゃったか……。

 でも、それならそれで……。


「どうしたマッキー。顔が赤いぞ?」

「へぇ!? そ、そんな事ないよー!?」

「あぁ、走ったからか」

「そ、そーだよー。ど、ドーテーが急に走らせるからさー」

「なんてな。全然顔色は普通だ」

「うぇ!?」

「おやぁ? でも今どんどん赤くなってるな。どうした?」

「う、うそ……」


 頬に手を当てて動揺してるフリ……。

 ってあれ!? 普通に熱い!?

 自分で思っているより、意識しちゃってるのかな私……!


「何にそんなに動揺している?」

「ど、ドーテーには関係ないじゃん……」

「それはおかしい。ここには今俺とし、マッキーしかいないんだからな」

「う……」


 ……大丈夫。

 千重里君には、あの黒子ほくろ写真の罠を張ってある。

 背中を見ていた事をそっちに誘導して……。

 ……ちょっと無理あるかな?


「俺の背中に何か付いていたのか?」

「……別に……」


 いや、やるだけやってみよう!

 千重里君の勘の良さを信じて!


「な、何でもないったら! ほら! 電話も終わったし、もう行こ!」


 不自然に急き立てて、動揺と話題の転換を演出する。

 これで『背中に何かある』と思わせられたら……!


「……」


 考え込んだ!

 何かに気付いた!

 携帯取り出した!

 やった! 引っかかった!

 なら私もカメラを起動して……!


 パシャシャ!


「……ぷっ! あははははっ! すごいマジな顔で首筋の写真撮ってるー! ウケるー!」

「!?」


 自分の奇行を撮られた事に動揺する千重里君。

 でも私が笑ったのはそれだけじゃないんだ。


「……! お前、まさか……!」

「ヤバ! 怒った顔もめっちゃウケるー! 目線こっちー!」

「撮るな!」


 千重里君が、『下種しもたねの好きな人は自分かも……?』って思ってくれた!

 今までだったら『俺が女から好かれるわけがない』ってなってた!

 そんな意識のままなら、首筋の黒子を確認なんかしない!

 これまでの関わりの成果が見えた!

 対等な関係に近づけた!

 嬉しい!

 そうとわかれば、もっと一緒に、もっと近くに……!


「あー、笑った笑ったー。じゃー、カラオケ行こっかー」

「は?」

「『は?』じゃなくて。カラオケからボーリングでしょー?」

「え、いや、え?」


 あ、いけない。

 千重里君は今の写真で『脅してくるに違いない……』って思ってるんだもんね。

 ならリクエストにお応えして。


「それともなんか一緒に来れないコトでもあるー?」


 苦々しい顔の裏。

 ちょっと安心したの、見逃さないよ?


「……いや、問題ない。行こう」


 立ち上がった千重里君。

 もう気持ちは持ち直したみたい。

 落ち着いて考えれば、自分の首筋を自撮りする変な写真ってだけだもんね。

 周りに公表されても、一日と経たずに帰る話題。

 あの写真立ての事を知ってる私だけが使える、千重里君の弱み。

 あ、そうだ。後で除光液であの黒子、消しとかないと。

 次にうちに来た時、黒子のなくなってる写真見たら、どんな顔するかな?


「なーに歌おっかなー」


 今日は休み。

 まだお昼前。

 駅に向かって歩く横には千重里君。

 楽しい! 楽しい! 幸せ!

 カラオケが楽しみで仕方がないようなフリをして、私は浮き立つ気持ちが度を越さないように抑え込むのだった。

読了ありがとうございます。


次話でこの物語は完結となります。

いよいよ牧舞まきまの策を道貞みちさだは知る事になります。

その時道貞は何を思うのか?

牧舞の思いの行方は?

最終話『下種牧舞の種明かし』、どうぞお楽しみください。

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