第1話 出会い
基本不定期投稿です。いつ失踪するか予想しながら見守っていただければ幸いです。
「あ~暇だ~。」
爽やかな青空、肌をなでるそよ風、小鳥のさえずり。
平和を絵に描いたようなの草原、そこに敷かれたあまり整備されてい”ない道を歩く一人の青年がいた。
厳島武人
現在20歳、東京西部にある平魚山を本拠地とする”サムライ”の青年である。ちなみに、無茶苦茶暇暇そうに草原に敷かれた道(平魚山の山道)を歩いているが、別にサボっているわけではない。本拠地の見回りという
とても重要な任務を行っているのだ。例え3ヶ月連続で何も起こっていなくとも重要な任務なのである!
「都会じゃ毎日のように何か起こってるというのに、ここじゃ何にも起こらない。何か面白いことないかなあ。」
そんな益体のないことを考えられるほど何も起こらないのだ。武人が言う通りここのあたりは本当に何も起こらないのだ。1年近くこれといった犯罪もおきていないのだ。事実、都会では毎日のように何かしらの事件が
起こるほどの治安の悪さだというのに。しかも、他のジョブからの斥候や偵察すら来ないのだ。不自然なことこの上ない。まあ、平和が1番であることには変わらないが。
「(ん?あれは・・・。)」
正午を過ぎた頃、武人は少し不思議な光景を見ていた。少女が1つの切り株に座っていた。パーカーに白いレースのスカートを身につけている。フードで顔を隠しているが、齢は10歳程度だろうか。おそらく迷子だろう。だが、少女が不思議な光景の原因となっているのは一目瞭然だった。
まず、衣服が全体的に土埃で汚れている。それに加えてやけに手足に擦り傷や切り傷が多い。まるで素手裸足で急な山肌を登ったような様子である。
そんななにやら普通ではない様子の迷子、本来は1も2も無く無視したいところだが、現在は仕事中。迷子はきちんと保護して、親に引き渡さなければならない。
「ねえ君、大丈夫かい?」
意を決して少女の顔を覗き込んで声をかけてみた。予想通り、その瞳は不安に揺れ、口は真一文字に結ばれている。声をかけても反応しないところを見ると、どれだけ頭が不安でいっぱいか分かる。そんな少女でも構わず声をかける。仕事だから!
「君、大丈夫かい?お父さんやお母さんは?」
それでも少女は黙り込んだままだ。仕方ないので最終兵器を使うことにした。
必殺、猫だまし!
「ほいっ」
「ひゃあ!」
なんとか少女の意識をそらすことができた。流石成功率100%(使用回数1回)すさまじい効力である。
というわけで質問再開。
「君、大丈夫かい?お父さんやお母さんは?」
見事なオウム返し。自分の経験値の低さに恥ずかしくなってきた。
「・・・う・・・あ」
どうやらまだ動揺しているらしい。取り敢えず時間をかけて動揺を鎮めなければ・・・
「いたぞ!」
男の怒声が聞こえた。それだけならよいが、少女の反応は劇的だった。
唐突にぎょっとしたような、おびえたような表情になり、声がした方と逆の方向に走り出した。
「あ、ちょっと!」
武人が止めようと声をかけたが、
ズサっ
見事に顔面からすっころんだ。
「ちょっ、ちょっと、大丈夫か?」
顔面から転んでもなお逃げようとする少女に静止の声をかける武人。
しかしそんなことをしていたら、件の男がやってきた。
やってきた男は二人、一人は声の主であろう黒服サングラスの長身の男。もう一人は重厚な鎧を身にまとい、1メートル強はある鉄製の斧を持っている。おそらくジョブ、”戦士”の者だろう。
どう考えても異常事態である。しかし、”サムライ”の人間としてどうにか事を穏便に済まさなければならない。
「ついに見つけましたないよ、お嬢様。さあ一緒に帰りましょう。」
そういったのは黒服だ。しかし、お嬢様と呼ばれた少女は武人の後ろに隠れてしまった。しかもご丁寧に服の裾までつかんでいるのだ。絶対に離さないという鉄の意志と鋼の強さを感じる。これでこの少女をあちら側に引き渡すのが面倒臭くなった。というかお嬢様ってなんだよ。
「えっと、あなたはこの子の保護者様ですか?」
「いや、私自身は保護者ではない。正確には彼女の保護者の使いだな。」
風貌と言動を見れば怪しさ爆発である。ただ、このご時世使いの可能性もゼロではない。もし本当に使いならばきちんと手続きを踏んで親元に返さなければならないが、
「・・・帰らないから。」
「ん?どうしt」
「私、お母さまのところには、帰らないから!!」
言い切っちゃったよこの人!
どうやら向こうに渡すという解決手段は絶望的のようだ。
相手に帰ってもらう路線に切り替えよう、そう思ったとき武人は少女の手に1枚の紙が握られているのが見えた。あれはこの山の登山口で発行している登山証である。
よしこれを使おう。
「・・・仕方ありません。おい、やれ。」
黒服の指示で戦士の男が動き出す。
「すまねえな、坊主。こっちも仕事なんだ。さっさとその娘を渡してくれないか?」
そういいながら近づいてくる戦士。その間が5mを切ったあたりで武人は打って出た。
「ちょっと待ってくれ。」
「?」
「二人とも、登山証は持っているか?」
「なんだ?それは。」
それはそうだ。この山に入山する人間はすべて記録がとられ、連絡があるのだ。二人組の男が来たという連絡など一報も来ていない。
「もって、ないんだな?」
「お、おう。だから何なんだ。」
「この山に入山するためには入山証がいる。そしてこれを持たずに入山した者は強制退去を命じることができる。どういうことか分かるな?」
その言葉を言い放つと同時にすこし殺気を放つ。こちらの考えが本気であることを示すためだ。
「実力行使も厭わないってか、だがここは非戦闘区域だ。まさか戦闘区域までエスコートしてくれんのか?」
流石というか、相手も怯んでいる様子はなく、挑発的な発言すらしてくる。というわけでその挑発を買うことにした。
ポイッ
武人は空中に手のひらサイズの立方体を放り投げた。すると立方体から光が溢れ出た。そして次の瞬間、半径20m程度の半球状の結界が現れた。
「な、こ、これは!」
戦士の男が明らかに動揺した。
これは非戦闘区域でも戦闘を行うことができる道具だ。幹部クラスの者が持つような代物である。
「さあ、戦闘区域に案内してやったぞ?これで満足か?」
武人はそう言うと自分の武器、日本刀を鞘から抜き出した。
「て、てめえ、まさか”サムライ”か!?」
戦士の男の動揺が明らかに大きくなる。そんなに驚くことだろうか。
「何をやっている。早くやれ!」
黒服の男が焦ったように叫ぶ。
「あ、ああそうだ。”サムライ”なんざ怖くねえ!野郎ぶっ殺してやるうう!」
半狂乱になってなにやらべ〇ットのようなことを言いながら襲ってきた。
おおきく振りかぶられた斧はしかし、武人の体を両断しなかった。
ガキンッ
「なっ」
力に自身のある戦士としては自分の攻撃を苦もなく受け止められたのは衝撃だったのだろう。
「ふん。」
「ば、馬鹿なっ。」
そしてあっさり打ち払われる。
振り上げ、振り下ろし、薙ぎ払い。流れるように繰り出される攻撃は避けられ、受け止められ、打ち払われる。
「一体、てめえは何なんだ・・・?」
自分の全力をいともあっさり受け止められ、攻撃を受けていないのに満身創痍の戦士べネ〇ト。
「す、すごい・・・。」
結界の隅の方で少女は嘆息していた。
自分を散々追い掛け回してきた集団のうちの一人をまるで子供のようにあしらう。彼女には今戦っている”サムライ”がヒーローにしかみえなかった。
「さて、そろそろ黒服の方が焦れてきてるな。さっさと終わらせるぞ。」
武人はそういうと刀を鞘に納め、体をすこし低くかがめた。居合の構えである。
「させん!」
戦士が渾身の一撃と言わんばかりに迫る。
チンッ
刀が鞘に収まる音。
「(は、速い・・・)」
戦士の背後には今まで前にいたはずの武人がいた。
ドサッ
戦士が崩れ落ちる。そしてそれと同時に結界も解除される。
「・・・こんなものか。」
そういうと武人は黒服の方に進んでいった。
「役立たずめ、仕方ない。これを使うか。」
黒服が取り出したのは、拳銃だった。
「おい貴様、早くその娘を渡してもらおうか、さもなくば、」
「その拳銃を撃つのか?」
武人が挑発するように言う。黒服もさほど余裕がないようだ。
「その選択、後悔することになるぞ。」
「やめてっ!」
少女は叫ぶ。折角現れたヒーローを失いたくなかった。しかし、無常にも引き金は引かれる。
パアン
キン
「へ?」
「は?」
黒服と少女の間の抜けた声が響く。
拳銃に撃たれたはずの武人は刀を振りかぶった態勢になっていた。
「な、なにを・・・」
「お前の撃った銃弾を弾き返してるのさ。」
「ば、馬鹿な、そんなこと、あり得ない!」
パアンパアンパアンパアンパアン
キンキンキンキンキン
連続で放たれる銃弾。しかし、ことごとく武人の振るう刀に弾かれる。
カチッ
ついに黒服の拳銃が弾切れを告げる。
「ひ、ひい、なんなんだ貴様、く、来るなあ!」
頼りの拳銃を失い腰が引けている黒服。戦意は完全に挫けたようだ。
「今手を引けば仲間共々見逃してやる。さあ答えろ。3秒間待ってやる。」
自分で言っておきながら中々ひどい命令である。
「ひい、ひいいいいいい」
情けない声を上げながら戦士を引きずり逃げる黒服。いっそ清々しい逃げざまである。
とにかく危機が去ったので少女にもう1度話かけることにする。
「君大丈b」
「う、うわあああん!」
「え、ちょ、ちょっと!?」
近づいて話しかけたら、、唐突に泣き始めた少女に戸惑う武人。この年の少女に間近の戦闘は少し過激だったのだろうか。
「ありがとう・・・ありがとうございますう」
自分を抱きしめて泣きじゃくる少女に何もできない武人。
「(さて面倒なことになったぞ、素直に親元に返せる雰囲気じゃないし、取り敢えず本部に報告するか。)」
少女はいつの間にか武人の腕の中で眠っていた。聞かれても不安を煽るだけな気がするので好都合である。
青年通信中・・・
「なるほど、了解した。」
本部との話し合いの結果、少女をいったん武人の家に連れていき保護、話を聞けるほど落ち着いたら本部に連れていき、具体的な処遇をきめる。というものだった。
他勢力がこの山でドンパチするなど久しく無かったので上層部も混乱しているのだろう。中々無難な判断だと思う。
「さて、そろそろ行くか。」
少女を背負い、武人は自分の家に向かう。
「(こんな小さな子でも傷つく程、都会の治安は悪くなっているのか・・・)」
青年はまだ知らない」
「(やはり、変えなければならない。この荒れた世界を。)」
この出会いが彼の人生を大きく変化させとることを
「(絶対に創り出す、平和な世界を)」
その出会いが彼の夢の大きな枷となることを
「(もう誰一人、傷つけはしない!)」




