冬の女王
「雪と氷の主よ、おたずねしたいことがあります」
王子は雪と氷の渦に向かって、これまでのことを話しました。
「我らは何をどうすればよいのでしょうか」
ごうごうと唸る風に負けまいと、精一杯の声をはりあげます。
……叫べ。古き刻は終わり、新たな刻の始まりだと。
……歌え。四季の廻りのありがたさを。
……感謝を。命の廻りに。
さすれば、冬の女王が譲り受けし秋の女王の力が、夏の女王から分け与えられた力を使い果たした春の女王を呼び覚ます力となろう。
刻は廻る。
四季も廻る。
命も廻る。
その廻りは、永遠の廻り。その、永遠を祈るがよい。
ごうごうと風の音と共に、雪と氷の主は去っていきました。
“冬の女王が譲り受けし秋の女王の力が、夏の女王から分け与えられた力を使い果たした春の女王を呼び覚ます力となる”
その言葉を王子はしっかり心に刻みました。
「オオカミよ、いろいろあったが世話になった。……オオカミ?」
王子はオオカミの命が尽きようとしていることに、気がつきました。
「……あぁ、ようやくこの地に冬の女王が戻られ、春の女王が来られる。
……王子、廻る輪を必ずや繋いでくださいませ」
オオカミはそう言うと、穏やかな顔で息を引き取りました。
王子はオオカミを優しく撫で、亡骸に手を合わせると、精霊王の元へと急ぎました。
さてさて、すべての始まりの四季の塔に話を戻しましょう。
精霊王は息子の帰還と持ち帰る情報をいまかいまかと待ち、姫君は冬の女王の元に毎日足を運びます。
姫君は部屋の中があまりにも薄暗いので、灯りを灯しました。
そして、何日か足を運ぶうちに、冬の女王が身動ぎをすると風が起こり、その風が止むと雪が降ることに気がつきました。
二番目、三番目の王子が帰還し、姫君はフクロウ博士の助けを借りながら、王子達が見聞きしたことをまとめました。
「博士、秋の女王の豊穣の力、その豊穣が冬の女王とどう繋がるのか、検討もつきません」
数日後、一番目の王子が帰還しました。王子の報告を聞くうちに、姫君は小さな声をあげ、四季の塔へと走り出しました。
「妹よ、どうしたのだ?」
「春の女王が何処にいるのか、わかりました。春の女王は……」
姫君の後から、報告を聞いていた者すべてが追いかけます。
「この中におられます」
姫君は、身体のほとんどを氷の繭に包まれた冬の女王の、その繭部分を指差しました。




