裁定
私の言葉を聞いた冒険者ギルド、商業ギルド職員達は目を閉じ、右手を心臓の上に置く。
異世界トリオも見よう見真似で同じポーズをとる。
僅かにピリっとした室内で私は右手に持った手鏡を取り出し今がチャンスとばかりにおでこを見る。
血でてないやん。あーよかった。あんなに見られたら出てると思うやん。でもちょっと赤いかな?
たんこぶになって無いかなとおでこサワサワしていると、ゴリラが右目をチラリと開ける。
おいゴリラ見るなよ。この厳かな雰囲気がわからんのか。不敬だぞ。われ使徒ぞ。
おでこサワサワを見られたのも気にせず手鏡を右ポッケにしまうと首から下げているネックレスを右手で握ると宣言する。
「我第4使徒ルカの名において、神の名のもとに宣言する。」
そう告げると私の身体が光り背中には光の翼が現れる。
「神の名のもとに
中立であり
公明正大であり、
偽証を許さず、
真実を追究する。
神に宣誓を。」
「「神に宣誓を。」」
遅れて異世界トリオも宣誓すると皆の身体が一瞬光る。
これにて宣誓は終了だ。
身体から光る翼を生やしたままでもベロの上のヒリヒリとおでこは若干痛いままだ。ピカってなるならヒールくらいの効力無いのかな。今度姉さまに聞いてみよう。
そんな私の厳かな雰囲気を感じ取ったのか各々が目を開けこちらを見ている。
早いとこ終わらせてランチ行こう。もうモーニング無理だから。
「今回の依頼失敗について、冒険者パーティー月下の騎士が10日の納期日をきちんと把握出来ていなかった事について商業ギルドは何の瑕疵もないものと考えます。また違約金についても輸送不備、その他得られたであろう利益を鑑みて妥当だと判断します。」
商業ギルド職員さんを見て告げるとほっとした様子だ。
私が此処で違約金高いと言えば下げないといけないからね。まあ何より資料を見たところ高くもなく安くもない妥当なとこだろう。流石商業ギルドだ。
「冒険者ギルド。クエスト受注パーティーに対しての期日指定、違約金の説明について異世界パーティーかもしれないという前提条件を元に説明を行うのは非効率であり憂慮すべき事態ではない為瑕疵は無いものとする。」
猫耳お姉さんを見ながら告げるとこちらもほっとした表情だ。毎回毎回異世界パーティーですか?って気にしてられないよね。猫耳お姉さんはちゃんと仕事をしているのだ。ぜひこれからも受付で語尾にニャとつけて頑張ってほしい。
チラと異世界トリオを見るとお顔が絶望の表情だ。
一縷の望みを掛けたのに裁定が変わってないもんね。そりゃそうなるわ。
お顔がブルーベリーだ。
「冒険者パーティー月下の騎士。」
私が告げると異世界トリオはビクッとする。月下の騎士とか付けちゃう時点で異世界ヒャッホーってなってたんじゃないの?幼なじみ3人で俺達の冒険はこれからだっ!って夕日にジャンプしてたんじゃないの?
だいたい高校生にもなって異性の幼なじみと登下校してるの何なの?何か前世ですんごい徳でも積んだらそんなんなれるの?
あとガキじゃねーかっ!って言った時お前ツバ飛んでたからな。使徒様にツバ飛ばして無罪なわけないだろ。懲役8億年だ8億年。
心の中の愚痴に時間を掛け過ぎたのか、何も言わない私に対して異世界トリオはブルーベリーでガタガタ震えだす。
もうちょい溜めてやろうか。
そんな事を思ったが私には大事な大事なランチの時間が迫っている。
今日の食品通りのカフェのランチメニューはチキン南蛮なのだ。貴様らにかまっている時間はない。
「冒険者パーティー月下の騎士は此度のクエスト失敗は明白である、しかし依頼を放棄した訳でも納品物の採取に失敗した訳ではなく、根本的な社会的常識の誤認により生じた結果である。それを踏まえた上で、月下の騎士には冒険者ギルド初心者講習の受講及び金貨10枚の賠償金の支払いを命じる。金貨10枚は冒険者ギルドからの貸付とし今後の報酬から適宜返済とする。商業ギルドへの不足分40枚は異世界管理局より供出するものとする。」
私の裁定に異世界トリオはよくわからないのか目がキョロキョロしている。
「旦那が言いてぇのは、金貨10枚の借金で奴隷行きは無しにするからちゃんと返済していきなさいってこった」
ゴリラがそう告げると異世界トリオはゴリラに向かいありがとうごさいますと頭を下げる。
おいゴリラ。なんでお前がイイヤツぶってんだ。
お前が金貨40枚払え。
ゴリラには後でバナナをぶん投げる事にしてさっさと終わらせよう。
私は再び右手でネックレスを握り宣誓する。
「異世界審問官ルカが裁定します。」
私の背中の翼がはためき光の羽根がゴリラ、猫耳お姉さん、商業ギルド職員、異世界トリオへと舞う。
それは彼らの右手の甲に触れると瞬き消える。
「神の名のもとに。」
私の言葉と共に背中の翼が消える。
お仕事終了だ。ランチに行かなくては。まだお昼前だ今日は並ばないで入れるかな。




