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無駄な抵抗

我が家の筆頭メイドさんミリーは控え目に言っても美人さんだ。

すらっとした体躯に目鼻立ちのくっきりした顔。

おまけに声は心地良く、何処かの貴族令嬢かと思うくらいだ。


あれ?さっきドア殴りつけて、デスボイス出してなかった?

悪魔憑きなの?憑依されちゃってるの?


「内容はわかりました。しかし私も本日は仕事が立て込んでおり」

チラとミリーに目配せをする。

彼女は小さく頷くと心地良い声で言った。

「ご主人様の本日の予定は何もありません。」

……

違うよミリー。僕が思ってるのと違う答えだよ。何?悪魔憑きでおかしくなったの?

「予定はありませんし、悪魔も憑いてません。」

ダメだよミリー。心を読まないで。


「よしっ!なら冒険者ギルドに来てもらえるか!」

褐色の筋肉お化けはイヤイヤと駄々を捏ねる私を小脇に抱えて颯爽と通りへと進んでいく。


筋肉お化けの小脇に抱えながら大通りを進む。

この時ばかりは自分の小さな身体が恨めしい。

朝ごはんも食べてないのに小さな子供を連れ出すなんて虐待だっ!

「誘拐でーす!たすけてー」等と声を上げていると革鎧に剣を携えた冒険者らしき一行とすれ違う。

彼らは此方を見ると口々に声をかけてくる。


「ディランさんちわっす!」

「おうっ!お前ら今から依頼か?」

お化けの知り合いかよ。誰だよディランって。筋肉お化けの事か?こんなやつゴリラでイイんだよ。

何で物語の勇者みたいな名前なんだよ。学術名のゴリラ・ゴリラ・ゴリラで良いだろうが。


「あっ!使徒様もちわっす!」

「誘拐ですっ!助けてっ!」

こちらに喋り掛けて来たヤンキーっぽい冒険者に助けを求める。

「今日もサボろうとして捕獲されたんですかぃ?ダメっすよ、俺らミリーの姉御に使徒様がサボってたら教えろって言われてるんですから。」

何だとっ!お前らスパイかっ!

カフェで休憩してたらミリーに見つかるのはお前らのせいかっ!


それからも様々声をかけられながら冒険者ギルドへと辿り着く。

声を掛けられる度に誘拐ですと声高に叫んでみたが、みんなにこやかな笑顔でハッハッハと笑いながらすれ違っていった。

そんな私はもうふて寝である。全身脱力してブランブランしながら「この世に神はいないのか」と嘆き悲しみに暮れている。


冒険者ギルドの入り口は上下の空いたスイングドア、中から言い争う声が聞こえる。

めっちゃ声でかい。外まで聞こえるってよっぽどだ。

どうやら問題の冒険者パーティーのようだ。

大きな声を出しているのは冒険者側のようで、受付のお姉さんは穏やかに話しをしているようだ。

バンッと大きな音を立ててスイングドアを開けたゴリラ。

中にいた冒険者やギルドスタッフの視線が集まる。


大きな音に視線をやれば、小脇に餌を抱えた褐色のゴリラ・ゴリラ・ゴリラの登場だ。

そりゃみんな見るよね。ゴリラだもん。褐色ゴリラだもん。


そんなゴリラは視線を気にする事なくズンズンと問題の冒険者の方へと進んでいく。

問題のパーティーはズンズン進んでくるゴリラにビビったのか少し淀んだのか逃げ腰になりながら何とか声を出す。

「だ、だれだよあんたは」

「俺は冒険者ギルドのディランだ。お前らの言う弁護士とやらは連れて来ていないが、この問題を解決できる人材を連れてきた。」

しんと静まった冒険者ギルド内にゴリラの声が響く。

問題のパーティーのリーダーであろう少年は現れたゴリラに驚きながらも、自分達の問題が解決に進みそうな言葉を聞いた事で、若干だか声を落として語る。

「それはすまない。僕らも困っていたんだ。」

「それでその人は何処に?」

そう言われたゴリラは頷き小脇に抱えた餌の両脇を持ってズイっと前に押し出す。

「これだ。」

「ガキじゃねーかっ!!!」


今日1でかい声聞いた。

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