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断罪された最強の女騎士、傭兵少女と地の底から逆襲を開始する 〜冤罪で国を追われた騎士団長は、王国を守るために牙を剥く〜  作者: 十目 イチ


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第30話 新生赤狼の牙(番外編)

この話で完結となります。

番外編です。

 朱塗りの楼閣が連なり、風に揺れる竹林がさらさらと音を立てる。

 ここは王国の東の隣国セイナート帝国。

 異国情緒あふれるこの国で、新生『赤狼の牙』傭兵団は、帝国の若き貴族シオン卿の護衛任務に就いていた。


 

「……アルテア様。あの……もうそろそろ警戒を解いてもよろしいのでは? ここはもう安全な宿場町ですよ」


 治癒師のテオが、冷や汗を拭いながら隣を歩く、(あか)(みどり)のオッドアイを全方位に光らせる銀髪の女性に声をかけた。

 アルテアは、傭兵となってからも騎士時代の癖が抜けないのか、街中でも常に周囲を鋭く警戒し、必要以上に周りの通行人に睨みつけていた。


「いや、テオ。油断は禁物だ。先ほどの団子屋の店主……あの『串を差し出す手つき』には、迷いがなかった。相当な手練れと見た」

「あれはただの熟練の技ですよ! 美味しく食べてほしい一心なんですって!」


 アルテアの「真面目すぎるボケ」に、バルトが横から肩をすくめて笑う。


「まあいいじゃねえか。おかげで賊も寄り付かねえ。……おいアルテア。お前、さっきの茶屋で『おひや』を頼む時に、店員に深々とお辞儀して『貴殿の奉仕に感謝する』とか言うのはやめろ。相手が固まってただろ」

「な……。礼を尽くすのは騎士の……いや、人間の基本だろう?」

「今は傭兵だっつの。もっとこう、適当に……つーか、ほどほどでいいんだよ」


 そんなやり取りを、馬車の中からシオン卿が微笑ましそうに眺めていた。

 

「ほほほ、賑やかで良い。アルテア殿の武勇は風の噂に聞いていたが、これほどまでに誠実な方だとは思わなかったよ」

「もったいなきお言葉。……むっ、シオン卿、口元に米粒が。これもお命を狙う刺客の……」

「それはただの食べ残しです! すみません、シオン卿。お口の横に……」


 ミーナがすかさずツッコミを入れ、一同の笑い声が街道に響く。アルテアは「そうか……なるほどな」と真剣に頷き、手帳に何かを書き留めていた。


 ◇◇


 だが、のどかな旅路は突如として破られた。

 宿場町を出て、しばらく街道を進み、深い竹林地帯に差し掛かった瞬間、サギリが鋭く叫ぶ。


「――来る」


 直後、上空から巨大な影が舞い降りた。

 セイナート帝国特有の魔物、鋭い爪を持つ「山岳鬼サンガクオニ」の群れだ。同時に、林の影から抜刀した山賊たちが十数人、馬車を包囲するように飛び出してきた。


「ひっ、魔物と山賊!? 挟み撃ちだ!」

 テオが悲鳴を上げるが、傭兵団の面々に動揺はない。

「よし、野郎ども! 新生・赤狼の牙の初仕事だ、派手に行くぞ!」


 バルトが巨大な斧を担ぎ、先陣を切る。


「ザックス、ロイ、カレン! 左右を頼むわ!」


 ミーナの指揮に従い、三人の傭兵が鮮やかな連携で山賊を分断していく。ミーナ自身も風の魔術を操り、空中の魔物を次々と撃ち落としていった。


 そして、馬車の前に立つのはアルテアだ。


「……シオン卿、お下がりを。ここからは私の仕事です」


 アルテアは細剣『夜帷』を抜き放った。その瞬間、彼女から放たれる空気が一変する。先ほどまでの天然な様子は微塵も感じさせない、一撃必殺の武人のオーラ。


「グアァッ!」


 飛びかかってきた山岳鬼を、アルテアは一歩も動かずに切り裂いた。漆黒の刃が閃くたび、魔物の装甲が紙のように裂けていく。


「お、おい……あの女、化け物か!?」


 怯んだ山賊の頭目に、アルテアは静かに歩み寄った。


「貴殿らの事情は知らぬ。だが、この馬車には私の大切な主君クライアントと、仲間たちが乗っている。……ここを通したければ、私という壁を越えていくがいい」

「ひ、ひぃぃっ! 退散だ、逃げろおぉ!」


 アルテアの放つ圧倒的なプレッシャーに耐えかね、山賊たちは武器を捨てて逃げ出していった。残った魔物も、バルトとミーナによって瞬く間に掃討される。


◇◇


 戦いが終わり、再び静寂が戻った街道。

 アルテアは『夜帷』を鞘に収めると、馬車を振り返り、シオン卿に向かって深々と……いや、深々すぎるところまで腰を折ってお辞儀をした。


「シオン卿。不手際により、貴殿の旅を汚してしまった。このアルテア、責任を取り、今ここで……」

「ちょっ、アルテア様! そこで腹を切ろうとするのはやめてください! 解決したんだから!」


 テオが必死にアルテアを羽交い締めにし、ミーナが呆れたように笑う。


「もう……本当に、騎士団長時代より手がかかるんだから」

「……そうか? 私は至って真面目なのだが」


 不思議そうに小首を傾げるアルテアを見て、バルトがその背中を叩いた。


「ま、お前がその調子だから、俺たちも退屈しなくて済むんだけどよ。さあ、夜になる前に次の街へ行くぞ! 今夜の飯は美味い肉だ!」

「肉か。……それは、刺客ではないのだな?」

「絶対違うからな!」


 夕日に照らされるセイナート帝国の街道を、賑やかな馬車が進んでいく。

 かつての孤独な騎士は、今、騒々しくも愛おしい「家族」と共に、新しい自由の風の中を歩んでいた。


(完)

ありがとうございました。

この話で完結となります。

ぜひ評価の方、お願いします。


他にも拙作を投稿していますので、よかったらそちらも是非一読ください。

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