固めた石鹸5
「グルゼイさんはどーお?」
「これいい匂いだよ!」
「ヒラヒラ〜」
恐れ知らずのタミとケリが香り付きの紙をグルゼイの前でヒラヒラとさせる。
家だから隅にグルゼイもいたが、匂い品評会に参加するつもりはなさそうだった。
しかしタミとケリにはそんなことお構いなし。
「匂いがない方がいいな」
うっとおしそうな顔はするが、タミとケリを止めはしない。
グルゼイは別に匂いなんていらない。
一定程度求められているようだから、無香料というのも当然に用意はしようとジケは思っていた。
「ジケ君の匂いはないのかな?」
「ないよ、そんなの」
ピコがジケに鼻を近づける。
残念ながら人間臭は候補に入っていない。
「ジケ君いい匂いだけどなぁ」
「そんなに匂うか?」
いい匂いと言われても、臭うとなれば気になる。
「匂いがするっていうか……うーん、なんか落ち着く感じ?」
「……よく分からないな」
「でもジケ、落ち着く。僕も思う」
キーケックがジケの腕に抱きついて笑顔を浮かべる。
「ジケ兄ちゃんの匂いがいい!」
「私も!」
「師匠、怖いです……」
タミとケリもジケに抱きつき、グルゼイが鋭い視線をジケに向ける。
「この際、あの人に作ってもらえば? フローラルジケ」
「……遠慮しとくかな」
ジケの香りも人気が高い。
しかし自分の香りを作ってもらってみんなが使うと思うとすごく恥ずかしい。
それに人の匂いなど作れるのか疑問だ。
カグノーズなら作ってしまいそうな気はするけれど、それもまたちょっと怖い。
「とりあえずみんなの意見はこんなもんか……」
みんなのお気に入りの匂いをジケはしっかりとメモしておく。
「ただまだまだ意見は募集するぞ」
「コケッ?」
「キックコッコのは……大丈夫かな?」
ーーーーー
「うーんと、私はこれですかね」
「ありがとうございます」
「いいえ、お嬢様の頼みですからね」
どの香りがいいか更なる意見を集めようと、ジケはフィオス歌劇団のみんなにも匂い比べをお願いした。
そしてさらに次はヘギウス家を訪ねてきている。
平民や貧民向けの商品にはなるけれど、普段から香油なんかを使うこともある貴族の意見も聞いておきたいと思った。
軽い気持ちで聞きにきたのだが、リンデランがやる気を出して使用人たちにも協力を要請してくれた。
全体の傾向としては、やはり男性は爽やかめな匂いや匂いがなくてもいいという選択をする一方で、女性は割と花の匂いが好きだったりする。
「これとこれの中間があると嬉しいですね」
男性執事が柑橘の香りとハーブの香りを重ねて嗅いでいる。
二つを組み合わせる、それも面白そうではある。
「次はうちの騎士の皆さんにも聞いてみましょうか!」
ジケの役に立てる。
リンデランは珍しくやる気を燃やしている。
こうしたデータは多ければ多い方がいい。
せっかくだしリンデランの好意に甘えておく。
こうした調査は別に難しくもないし、物珍しいのかみんな軽く協力してくれる。
「どうですか? たくさん集まりましたね!」
「ああ、ありがとう、リンデラン」
「えへへ、お役に立てたなら嬉しいです!」
ジケにお礼を言われてリンデランは嬉しそうに笑う。
ヘギウス商会にも行こう、と言いますので流石にそれは止めた。
でも使用人と騎士だけでもかなりの数の匂いの好みのデータが集まった。
いつものみんな、歌劇団のみんなも含めると結構な人数に聞いたことになる。
「これを元にして、最終的にどうするか決めるか」
「ふふ、楽しみですね」
必要なデータは集まった。
あとは集めたデータ見ながらカグノーズと相談し、石鹸タオルを完成させる。
長くかかった石鹸作りもようやく完成しそう。
思い返してみると石鹸を作るために色々あったものだ。
「どうせなら……良いもん作ってやるか」




