固めた石鹸4
「うーーーーん……」
エニは腕を組んで想像を巡らせてみる。
体を拭いたりお風呂に入ったりしてスッキリした時にどんな匂いがいていたらいいか、あるいは最中にしていたら気分が上がるか。
綺麗になってほんのりと花のいい香りがしていたら気分がいいかもしれない。
ちょっと貴族の女の子っぽい感じもしてオシャレな感じもある。
「でも爽やかな香りもなかなか良かったね……」
ハーブや柑橘の香りも捨てがたい。
洗い上がりの体からこうした匂いがしたらスッキリした感じはだいぶ強くなりそうだ。
「んー、決めらんない!」
どれがいいと聞かれても、どれもいい。
エニは結局決めることはできなかった。
「まあ、そうだよな」
ジケも正直一つに絞る決め手がなかった。
「ニノサンはどう?」
「私はハーブ系の香りが好きですね。逆に甘い香りはあまり好きではありません」
「なるほど……」
個人的な好みというものもある。
実際石鹸として使うと香り方が違う可能性もある。
「ここら辺も試していかなきゃいけないか。もうちょっとみんなにも話聞いて、いくつか絞ってみるか」
ジケの周りにもだいぶ人が増えた。
こうした時にはジケの独断と偏見で決めてしまうより色々と聞いてみるのも一つの手である。
「そうだな……ここからちょっとだけ絞って、そこから色んなに試してもらおうか」
全部の匂いを確かめていくと鼻が効かなくなりそう。
そこで用意のしやすさや扱いやすさ、値段なんかから候補をまずいくつか脱落させていく。
安く提供できることがジケたちの売りにもなるので、香りをつけるために高価になってしまっては本末転倒なことである。
「これはちょっと生産が難しいですね……」
ケントウシソウの香りなんてものもあった。
甘い独特の香りがするのだけど、ケントウシソウのコブを結構使って少しだけ取れるという効率の悪いものだった。
石鹸にまで使おうと思ったらケントウシソウ採取の負担が大きくなりすぎてしまう。
ケントウシソウに襲われなくなるという不思議効果はあるようなものの、体を綺麗にするのにそんな効果は必要ない。
個人的にはちょっと欲しいなとジケは思った。
「まあこんなものかな?」
「それでもまだ結構あるね」
お金や入手、加工のしやすさから花系の香り四種類、柑橘系二種類、ハーブ系二種類の合計八種類に絞った。
ただ八種類でも多い。
多くとも三種類か四種類ぐらいにはしたい。
「あとはこれ使って試作品作って、みんなにも意見を聞いてみるか」
ある程度数は絞ったので、あとは試してみるだけ。
「みんなの鼻を借りようか!」
ーーーーー
「ということで、協力してほしいんだ」
「しょうがないなぁ、ピコちゃんが力貸したげる!」
「しょーがないなぁ」
「ジケ兄のお願いだもんね!」
家に帰って、みんなを集める。
お団子作りをしていたピコやタミケリを始めとして、アラクネノネドコ作りをしていたワムやニックス、実験していたキーケックやクトゥワ、劇団の練習をサボってきているミュコに、今日はお休みのサンモーウやオルナまで勢揃い。
家の中が狭い。
チラリと窓を見ると、俺もいるぜ? という顔をしたパムパムもいる。
「やってもらうことは簡単だよ。匂いを嗅いで、好きなものを選んでくれたらいいから」
今回は使用した時の香りをイメージしてもらうために、体液石鹸に香りの素を混ぜ込んで紙に薄く塗ってある。
これで洗った後っぽく香ることだろう。
「スンスン!」
紙を手に取って、ピコが匂いを嗅ぐ。
嗅覚の優れた獣人だとまた普通の人とは違った感じがあるかもしれない。
「こっちかな?」
「私はこっち!」
タミとケリは好みも似ているが、香りに関しては意外と少し違っているようだ。
「んー、僕これ」
「薬剤も爽やかならいいんですけどね」
たまに見るクトゥワはボサボサとしていて、ちょっとだけカグノーズにも似ている。
研究や作業に熱中するタイプの人は割と似たような雰囲気になるのかもしれない。
その点キーケックは割と小綺麗にしている。
キーケック本人が小綺麗にしているというよりも、別の事情があったりはする。
「どれもいい匂いだねぇ」
「俺は別に……匂いなくてもいいかな」
クモ係の二人もすっかり小綺麗な姿になっている。
フィオス商会では安定した仕事があるし、ちゃんと給料も支払っているので今じゃもう平民レベルにお金がある。
ただ職場は貧民街だし、どこかに行くという考えもなさそうだった。
「どう?」
「なかなか難しいね。君がこの香りだったら、いいかもしれないね」
サンモーウとオルナも今やフィオス商会メンバーに馴染んでいる。
度々人が増えるからみんなも知らない人を受け入れる土壌ができている。
「エニはもう決めたの?」
「うーん難しいよね」
ミュコの質問にエニは難しい顔をする。
紙に塗って嗅いでみるとまた少し違った感じもある。
どれも悪い匂いじゃないので好みの香りを選ぶのも難しい。
「ほれ、どうだ?」
「コケェ」
ジケは紙を持っていって窓からパムパムに嗅がせる。
貴重な魔獣の意見だ。
「こっち?」
「コココケ」
パムパムは気に入った時に頷いて分かりやすく教えてくれる。
「パムパムはハーブ系の香りが好き……と」
パムパムはあまりあまり香りを好まないで、爽やかな香りがいいようだ。
「協力ありがとな」
「コッケェ」
パムパムはグッと親指?を立てる。
みんなもワイワイと話しながらどれが好みかを考えている。




