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9話 エージェント配属決定

俺は後藤に勝ちエージェント辞退を回避できた。

後藤は涙を流しながら医療室に運ばれた。


「佳ちゃーん!大丈夫ー?」


杉山も後藤と一緒に医療室に行った。

一方その頃、演習場では、山ちゃんと加賀が戦っていた。


炎連掌(えんれつしょう)!」


加賀は両手に炎を纏って連打をぶつけようとするが、山ちゃんはアルファマインドを使い軽々と避けていく。


『流石アルファマインド使い。スピードが桁違いで全く攻撃が当たらねぇ。それどころか体力が持たねぇ。』


「ハァ……ハァ……ハァ……俺だけが動いてるみたいだな。っていうか遊ばれてるっていうか……」


「じゃあそろそろ決めるよ。」


山ちゃんは一旦後ろに下がった瞬間、すごいスピードで加賀に向かい気づけば目の前にいた。


「うっ! まずい!」


加賀は両手で防御しようとするが間に合わず、膝を振り上げ(あご)に打ち付け空中へ吹っ飛ばした。

吹っ飛ばされた先にはもう山ちゃんがいた。

右足を上げた後思いっきり振り下ろし、加賀の顔面を強打して地面に打ち付けた。

加賀は戦闘不能になり、山ちゃんに手も足も出なかった。


「加賀が簡単にやられちまったぞ。」

「あいつとやりたくねぇよ。」

「あいつに勝てる奴いんのか!?」

「後藤だけだぞ。」

「だとしたらもうあいつしか……」


皆は俺の方を見た。山ちゃんも俺の方を見ていた。


「いやいや、俺もあいつと戦いたくねぇから!

今の見てたろ!顔面へこまされたくねぇって!」


だがその後も順調に勝っていき最後の2人が残った。

清水さんを倒したのも山ちゃんだった。

結局残ったのは俺と山ちゃんだった。


『まじかよぉ。山ちゃんとやんのかよぉ。

山ちゃんは確かに強いけど、1番厄介なのはまだ元々の能力を使ってないのが恐いところだよなぁ。』


俺は心の中でそう言った。俺は山ちゃんと戦うのは乗り気ではなかったが、そうも言ってられない。


「やっと本気で戦える日が来たね、蓮。」


「俺はこんな日が来ないと思ってたよ……」


「では最後の戦いを始める。2人とも構えて。」


すると、山ちゃんが深呼吸をし、それと同時に右手を後ろに隠した。何故か山ちゃんの後ろから白い煙の様なものが出てきている。


『なんだよあれ、何するつもりだ。』


「始め!」


山ちゃんはアルファマインドで加速し、俺に急接近した。俺もアルファマインドを発動した。

俺と接触する瞬間山ちゃんは右手を振りかざした。


『あれは!?』


山ちゃんの手は氷で覆われている。


『そうか、さっき山ちゃんの後ろから出ていたのは煙じゃない! 冷気だ!』


山ちゃんは地面に右手を叩きつけた。


氷壁凝固(ひょうへきぎょこ)!』


地面は(またた)く間に凍りついて、まるでスケートリンクの様だ。

俺はギリギリでかわし、空中へ飛んだ。

だが山ちゃんは不気味な笑みを浮かべていた。

よく見ると左の手のひらから薄く氷が上へ伸びていた。

上を見てみると。


『なんだよこれ! 氷の天井!?』


そう、氷の天井だった。

飛んだ勢いで背中が天井に当たった。

すぐに離れようとしたが……


侵食(しんしょく)!」


背中からどんどん氷が身体中に覆われていった。

全く身動きがとれない。というか、冷たくて身体が麻痺(まひ)してきた。


「くそっ! 動けねぇ!」


山ちゃんは戦いを辞めた。


「やめ! 勝者山本!」


一瞬だった、負けたことすら認識せずに終わった。

やっぱり山ちゃんは凄い。初めて本気で戦ってみて実感した。


「山ちゃんやっぱすげぇよ! それはそうとして、早く能力解いてくれないか!? 寒くて死にそうだ!」


その日の晩、指揮官エージェントからの話しがあった。


「お前ら本当に1年間頑張ったな。今日はゆっくり休んでくれ。大体皆の配属先も決まったことだしな!」


俺は配属先が決まったと知り、とてもワクワクしていた。


『これから俺は本当のエージェントだ! どんな世界が見えるか楽しみだなぁ!』


胸の高鳴りが止まらなかった。エージェントになるのは夢だったからそれが叶うと思うと信じられない。


「では明日寮を出てもらう。結果と勤務開始の日時は後日、自宅の方に書類として送付する。では解散。」


「ありがとうございました!」


皆は指揮官に向けて一斉にそう言った。

翌日、皆とはお別れだった。


「じゃあ皆! また今度会えたら一緒に仕事しような!」


「あぁ! 活躍、期待してるぞ!」


山ちゃんにそう言ってもらえてとても嬉しかった。

横を見ると後藤が杉山と歩いていた。


「おい後藤!」


後藤はこちらを一瞬向いて知らんぷりをした。


「なんだよ! 冷たいやつだなぁ!」


「俺はまだ負けたつもりはねぇからな……」


「もういいってそれは!」


すると後藤が小さい声で言った。


「お互い頑張ろうな……」


「なんだよ! お前もそういう所あんじゃねぇか!」


俺は後藤の肩を組みそう言った。


「気安く触んな!」


「じゃあ皆! 元気でな!」


皆は大きく(うなず)いた。そして皆の目はやる気と自信が溢れる目をしていた。

皆と別れたあと、俺は翔と帰り道の途中まで一緒で、電車で少し話した。


「そういえば知ってるか? 蓮。」


「ん? 何をだ?」


「この1年間で成績が良かった人は本部、新宿警察署で働く人がいるんだ。もしかしたら蓮も本部かもな!」


「そりゃあ無いんじゃないか?」


実は少し期待していた。


「後の人は地元の警察署だったり人手が足りない部署の配属されるんだってさ。」


「ふーん。そうなのか。俺は立川だけどそういえば翔はどこに住んでるんだ?」


「俺は府中に住んでるんだ。立川とは近いね!」


「勤務が始まる前に飯でも行かないか!?」


「いいね! LINEして!」


「了解!」


「じゃあここで降りるから! またな!」


「またな!」


俺は久々の実家帰りだったから少し緊張していたのもあり、母さんが元気にしているか心配だった。

母さんからは結構な頻度(ひんど)でLINEが来ていたから大丈夫だとは思っている。そして自宅に着いた。


「ただいまー!」


目の前に母さんがいた。


「おかえり! あ、少したくましくなったんじゃないの!?」


「んー多分ね!」


俺はこの日、寮であった出来事をずっと母さんに話していた。母さんは耳を()らさずちゃんと聞いてくれた。

久々に母さんと話せて少し幸せな気分だった。

そして、今まで俺を1人で育ててくれた母さんを今度は俺が養っていくと思うとその気持ちが俺のやる気を後押ししてくれた。


数日後書類が届いた。内容はこうだった。


『小原 蓮さん。エージェント就任おめでとうございます。小原さんの寮での活躍は大いに見させて頂きました。就任部隊は「総合格闘部隊」。配属部署は「立川警察署・特別警察部署」です。小原さんの活躍を期待しています。エージェントとして頑張って下さい。

勤務は4月10日からです。』


本部では無かったが、とても嬉しかった。

すぐに母さんに報告すると一緒に喜んでくれた。

勤務は約3週間後。

時間があるので翔にLINEしてご飯のお誘いをした。

場所と時間を決めて俺は電車に乗り、府中まで行った。


駅に行くと翔がいたが、翔だけではなかった。


「よぉ! 久しぶりだな!」


「皆!」


翔は他に山ちゃん、矢部、加賀、杉山、そして柱に隠れながらも後藤が来てくれていた。

後藤が来てくれていたのは本当に嬉しかった。


皆でお店に入り、机を囲みながらご飯を食べた。思い出話しをしたり、自分のプライベートの話しもした。

そして、配属部署の話しになった。


「そういえば、皆どこの部署になったんだ?」


「俺は地元の府中警察署だったな。」


「翔はやっぱり地元の警察署か。山ちゃんは?」


「俺は新宿本部だったよ。」


「やっぱ山ちゃんすげぇな!」


「ちなみにこいつも一緒だったな!」


山ちゃんは後藤の肩を叩いた。


「んまぁ当たり前の結果かな!」


「なんかムカつくな……」


「なんか言ったかよ!」


「別に何も!加賀はどこなんだ?」


「俺は地元の国分寺警察署だったな。」


「へぇー、お前国分寺なんだ。

矢部と杉山はどうなったんだ?」


「俺たちは2人とも千葉の木更津警察署に派遣されたんだ。」


「まじかよ! 千葉は最近事件多いから気おつけろよ!」


皆は各々の配属先を確認し合い、食事を終わらせた。

そして店を出て駅に着いたときの帰り際。


「じゃあ皆、頑張ろうな。」


山ちゃんがそう言ってくれた。

皆はこれから活躍していくという期待を胸に皆と別れて帰宅していった。


〜3週間後〜


「頑張りなさいよ!」


母さんがそう言ってくれたが、俺を見ていたその目はとても心配そうだった。

俺は母さんに心配をかけたくなかった為、何気なくいつも通りに振舞った。


「大丈夫だよ心配しなくて! じゃあ行くね!」


俺は家を出て配属先の立川警察署に向かった。

立川警察署まではバスで約30分で着く距離だった。


『次は、立川警察署前、立川警察署。』


バスの放送の時点でとても緊張していた。

緊張を(ほぐ)すために俺は両頬(りょうほほ)を叩いた。


『よし! 行こう!』


バスを降りるとすぐ目の前に立川警察署があった。

そして立川警察署に入っていった。


「おはようございます! 今日から立川警察署のエージェントとして就任しました! 小原 蓮です! よろしくおねぇ……」


すると一般の警察の人が右を指さした。


「エージェント部署はその階段を降りた所だよ。」


「す、すみません!」


俺は顔を赤くして階段を降りていった。


『やべぇ! いきなり赤っ恥をかいちまったぁ!』


俺はとても恥ずかしい気持ちだった。

張り紙にも『エージェント部署は階段を下⤵︎ ︎』

と中々大きく書いてあったのに緊張で全く周りが見えていなかった。


そして階段を降りたところに1つの扉があった。

(つば)を飲み込み扉を開けた。


「おはようございます! 今日から立川警察署のエージェントとして配属されました! 小原 蓮です! よろしくおね……」

「知ってるよ。」


1番前に座っていた人がそう言った。

どうやらその人がこの立川警察署の所長らしい。

エージェントは6人いた。皆俺の事を見ていて、皆の目から感じられる威圧感は半端じゃなかった。

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