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【自然】旋律に想うは失われし日常
【お題:火、笛 テーマ:郷愁 文字数:500字】
炎が揺れている。
暖かい。なのに身体が震える。不安で押し潰されそうだ。
見上げれば、宙に広がる満天の星。
でも心は全然癒やされない。
ただ夜闇の怖ろしさだけが、私を容赦なく蝕む。
飛行機事故から無人島に流れ着いて3日が経った。
助けも来ないし、スマホは充電切れ。そもそも私が生きていること自体、家族も友達も知らないと思う。
今頃、皆どうしてるかな? 心配してくれてるかな?
私の葬式もあげちゃったかな? そしたらもう……探しにも、動いてくれない、かな……?
パチパチ、と、乾いた音を立てる焚き火を、ぼんやり見つめる。
ふと、向かいに座る少年と目が合った。
「……あんたは、不安じゃないの?」
自分よりはるかに幼いはずの少年は喚くでもなく、じっと火を見つめている。
「……何か言いなさいよ」
私のつぶやきに、少年は何も答えず、
一本の笛を取り出した。
拾った竹で作った簡素な楽器。それを静かに吹き鳴らす。
どこか懐かしい旋律が浜辺を包み込む。
帰りたい。けどもう一生帰れないかもしれない、郷愁を誘う音色。
「……ズルいよ、そんなの……」
抱えた膝に顔をうずめても、頬を伝う涙は抑えられなくて。
夜闇の中、笛の音だけが、どこまでも遠く響き渡っていた。




