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【日常】上京前日
【お題:ようかん、化石 テーマ:過ぎゆく日常 文字数:495字】
ときおり、無性にようかんが食べたくなる。
小学生の頃からそうだ。学校帰り、寄り道して駄菓子屋の前を通ると、ついつい寄ってしまう。
年寄り臭いかなぁとも思う。けど私の口が、あのちょっとくどくてやさしい甘さを、求めているのだ。
「あらいらしゃ~い日和ちゃん。今日もお散歩かい?」
「うん、ちょっと道草」
今どき化石みたいな店構えの奥で、生きた化石みたいな婆ちゃんがニッと笑う。
私も小さく笑って、お店を物色。ガムとかゼリーとかラムネとか、安っぽいお菓子がガサガサ並んだ棚に、思わず目移りする。
そこから一本20円の一口ようかんを二本、手に取る。あと気になった30円のスナック菓子も一つ。
「あい、70円ね~。まいど~」
「ん……ありがと」
お店を出て、あぜ道を歩きながら、ようかんを一本咥えた。
田んぼの周りではトンボが飛んで、遠くには山が見えて。いつもと変わらない景色が静かに広がっている。
気づけば空は夕焼けに染まっていた。
「……明日にはもう、転校かぁ……」
カタンカタン、と、遠くで電車の音が聞こえた。
一日一本の電車は、今日はもう帰ってこない。
いつもと変わらないはずなのに、今日のようかんは、なぜか切ない味がした。




