【日常】夜の"甘い"誘惑
【お題:星、コーヒーカップ、危険な存在 テーマ:星空の下で 文字数:499字】
カフェテラスから眺める星空は、その日も輝いていた。
邪魔の入らない、二人だけのゆったりとした時間。
派手な居酒屋と違って、ここなら私も落ち着ける。
「……すみません先輩。こんな遅くまで」
「いいのよ。後輩の仕事のフォローも、先輩の役目だから」
先輩はコーヒーを一口飲むと、静かにカップを置いた。
そして「今日は奢ってあげる」なんて、笑顔でメニューを開く。
「あんなミス、甘いものでも食べて忘れちゃいなよ」
「え? こんな時間に、ですか?」
「あら、まさかダイエット中?」
「……」
「ま、ならいいけど」
そう言って先輩はこれ見よがしに店員さんを呼んだ。
自分はちゃっかり頼む気らしい。
「この『季節限定 和栗のモンブラン』を一つ」
「かしこまりました」
メニューを閉じて、チラリと私を見る。イタズラっぽく誘惑する目だった。
……わざわざ私の好物を選ぶなんて。
私を慰めるのは半分口実。本当はどうせ共犯者が欲しいだけだ。
……分かってはいるけど。
「ま、待ってください……」
私の口からかすれた声が漏れる。
瞬間、彼女の目が得意げに笑った。
「……それ、私にも一つ」
……またやられた。
彼女は私を元気づける天才だ。
でも……だからこそ危険な存在でもある。




