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【ファンタジー】希薄の剣
【お題:草、希薄の剣 テーマ:ファンタジー 文字数:493字】
“その魔剣を手にしたものは、無限の力と引き換えに存在を失う”
そんな逸話を、街で吟遊詩人が語っていた。
ざわざわと群がる聴衆。「ほぉ~」だの「怖いなそれ」だの、感嘆が漏れ聞こえる。
私は、なぜかその話を聞いてはいけない気がして。
逃げるように街を飛び出した。
「……くだらない」
人気のない草原で呟く。
『希薄の剣』。それは私にとっては、ただ普通の剣だ。
皆に忘れ去られても、大差ない。
一人ぼっち。それが当たり前だから。
唇を噛んで、俯く。
と、その油断が災いしたか。
目の前に魔獣が迫っていることに全く気づけなかった。
「グオガァァ!」
「――っ!?」
気づけば獰猛な牙が、あと数センチと迫っている。
一瞬で悟った。もう間に合わない。
けどーー私が死んで、誰が悲しむ?
そんな考えが頭をよぎる。
そのときだ。
「ギャァッ!?」
突如一刃の風が抜け、魔獣を切り裂いた。
凄まじい攻撃力だ。咄嗟に後ろを振り向く。
そこには……誰もいない草原が広がっていた。
気のせいだろうか。呆然と佇む私。
『忘れられてもいい! 俺は絶対、おまえを守るから!』
遙か記憶の彼方で、誰かが叫んだ気がした。
でもその声は、吹き抜けた一陣の風によってかき消された。




