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本日の商品『女性用肌着』

一度、話し合ってこないとね。

と遺跡内一杯飲み屋『金の女神像』店主、幸花・江田は思った。


キシギディル大陸のモヤマチムイ遺跡国に

最大のシレルフィールの城塞都市遺跡がある。

その遺跡内の街みたいなところにそこそこ生活に必要な店がある。


考古学者や冒険者(いせきたんさくにん)などの人たちが

遺跡内に数軒しかない飲み屋と言うことで

よくのみに来てくれるのであるが

最近様子がかわってきた。


「女将、いかのあぶりやきと青菜のお浸しくれ。」

シレルフィール遺跡管理組合主任エルアルド・アーチが言った。

そういいながら最近流行りの差し入れ小袋からノンアルコール日本酒を出している。

「あなたもなの?持ち込み?」

幸花は悲しそうに言った。


哀愁漂う色っぽい熟女、男ならイチコロだろう。


もちろん幸花の演技である。

実際の幸花は守銭奴と名高い。


「わりいな、オレ肝臓悪くってよ、先生から酒止められてんだよ。」

エルアルドが言った。


それなら、飲み屋に来るなと言うはなしである、家に帰れば奥さんがまっていてくれるのだから…多分だが。


「酒がわりなんてここにはないしな、明正屋で買ってきたんだ。」

エルアルドは言った。

こう言う客が増えてきたのだ。


お酒を明正屋であるいはつまみを確保したからどっちかを注文が多いのだ。


「発泡ワイン一杯ください。」

ヴィアセリナ・ウエルアスは言った。

冒険者(いせきたんさくにん)の女性で酒豪だ。

いつもはボトルで注文なのに一杯とは?

「ヴィアちゃん、一杯でいいの?おつまみは?」

幸花が言った。


「え?いいです。」

ヴィアセリナはやっぱり差し入れ小袋から白雪ふんわりえび一千季節限定トマトチーズ味と発泡日本酒の瓶と氷までだした。


「ヴィアちゃんまで持ち込み?」

幸花が悲しそうに言った。


ああ、儲からない、何とかしないと

明正屋の店主とはなさないと

と幸花は思った。


金こそすべてである。

それが守銭奴の心意気だ。


シレルフィール城塞都市遺跡のそばに万屋明正屋という店がある。

謎のグッズから携帯食糧、お菓子、医療品、はては下着までおいてある。


「うらないでくれと言われましてもお客様ですし。」

店主の天見 舞が言った。

「困るのよ、売り上げ落ちて!」

幸花が言った。

「そういわれても、うちも商売ですし。」

店主が言った。


幸花は直談判に来たのである。

もちろん、明正屋の店主が女性だからきたのである。


世の中には男性よりも強い女性は五万といるご時世なのだが、

女性のほうが話しやすいのは確かであろう。


「私はお金を稼がないといけないのよ!」

幸花はカウンターをドンと叩いた。

「なんのためにですか?」

店主が言った。


案外冷静沈着な性格のようだ。


「もちろん、子どものためよ!」

幸花には息子が一人いる。

夫と死別し流れ流れてムリュフ精霊国から

このシレルフィール遺跡に流れてきたのである。

「お子さん、おいくつなんですか?」

店主はしんみりしながら聞いた。


「……あら、もう、大人だわ?…孫もいるんじゃないの、私。」

幸花はつぶやいた。


そういえば、大分前に息子は成人してその後結婚して孫が出来た。


仕事とお金が大好きな幸花はそのあとも

働き続けていたのである。


「少し、余裕を持ったらどうですか?」

店主が言った。

「そうね…あら?」

落ち着いた幸花は棚に目を止めた。


其処には下着がおいてあるようだ。


「ねえ、店長、この下着絹よね!買うわ!」

幸花が下着を手に持ち言った。

しかも、そんなに高くないのである。

「お目が高い、絹です、養蚕が盛んな地域で作ったもので、仕入れてみたんですよ。」

店主が言った。


絹は女性の憧れである、たぶんだが。

すくなくとも、幸花の故郷ムリュフ精霊国では高級品だった。


「ねぇ、衣服は置いてないの、着物とか?」

幸花は言った。


これだけいいものが安くおいてあるなら

着物もいいものを安く売ってくれるかもしれない。

幸花は思った。


普段、我慢していた心が、

物欲が爆発したのである。


「すみません、衣服は置いてないですよ。」

店主はカウンターの後ろの棚を漁りながら言った。


衣服は個人の趣味がでるので基本的には置いてないのである。


「でも、取り寄せられますよ。」

店主がカタログをカウンターに置いた。


美しい和装とか最新ファッションとか書いてある。


「まあ、この柄いいわね、こっちの梅の柄もいいわ。このモダンの着物も素敵。」

幸花は着物カタログにテンション上がりまくりである。


結局、着物を2着注文したようだ。


「店長さんもっと商売っけだしなさいよ、衣服のカタログも見えるところにおいておくのよ。」

幸花が言った。


さっきといっていることが逆である。


なにはともあれ、幸花は大満足で帰っていった。


早く、着物が来るといいと思いながら。


一杯飲み屋への持ち込みはそこそこにしてもらいたいものである。


本日の商品

女性用絹肌着

G養蚕組合㈱

絹製品は磨耗に弱い繊維でございます。

取り扱いにご注意ください。

洗濯はお洒落着洗剤をご使用ください。

高品質適性価格を目指しております。

くわしくはG養蚕ホームページをご覧ください。

お買上げありがとうございました。


カタログ通販クラセエール㈱

3バン以上ご注文は送料無料です。

日時時間指定もできます。

カタログ請求は3冊まで無料です。

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