本日の商品 『差し入れ小袋』
何で僕、こんなに整理が苦手なんだろう。
新人冒険者ヒエルクリフ・フェアススは思った。
キシギディル大陸のモタマチムイ遺跡国
最大のシレルフィールの城塞都市遺跡には沢山の冒険者や考古学者、遺跡管理者等、各国より集まってる。
ヒエルクリフはその一人で新人冒険者である。
「ヒエルクリフってオスペナ知識国出身なんでしょう?考古学者になろうと思わなかったの?研究費使いたい放題よ、きっと。」
遺跡内の一杯飲み屋『金の女神像』の女将
幸花・江田が言った。
研究費使いたい放題はないとおもうが。
確かに、ヒエルクリフはオスペナ知識国出身で
しかも、最高学府ヌー大学考古学研究室出身なのである。
「宮仕えは嫌なんです、考古学より冒険したいんです。」
ヒエルクリフはいってビールを飲み干した。
シレルフィール城塞都市遺跡は
城塞都市であるがいゆえに敵の浸入を防ぐ為に狭いところ、複雑に曲がったところも多い。
下手に防衛システムトゥーセリアが生きているところに入り込むとたちまち守護ロボットがやって来るのである。
「はさまったー。」
ヒエルクリフは言った。
冒険者にして大きい荷物用のカバンが丁度よい角度の曲がり角で引っ掛かり中身が勢いよく落ちた。
ヒエルクリフはすぐに拾おうとして道を
勢いよく戻り、ついでに転んだ。
バッグの中身はさらに散らばり
一部は立ち入り禁止の看板の向こうに見える。
「す、少しくらいなら大丈夫だよね。」
ヒエルクリフは立ち入り禁止地区の恐ろしさを知らない。
「良かった、壊れてない。」
ヒエルクリフは言った。
通信機が石畳の床にころがっているのを
かがんでひろった。
「みんな、元気かな?」
待受画面に映った研究室の仲間の映像に
少し感傷に浸るヒエルクリフの背後に影が!
「シンニュウシャアリ、ホカクイタシマス。」
機械的な声がしてヒエルクリフは
背後から持ち上げられた。
「わー!」
ヒエルクリフは叫んだ。
不味い!誰とも顔会わせてない!
探してもらえない!
しかも、中央城塞など、人が入るのは命懸けである。
ヒエルクリフは守護ロボットに連行されていった。
ピチャンと生きてる水道管から水滴が落ちた。
「ハア、どうなってるんだろう?この素材?」
拘留された、ヒエルクリフは現実逃避していた。
明らかに昔作られたとは思えない
滑らかな床。
継ぎ目のない壁。
「ファトマ先輩ならここで死んでも悔いはないわ!って言いそうだけど、僕はくいあるよー。」
ヒエルクリフが言った。
壁の破損があるので出ることは出られる。
だが、すぐに捕まるだろう。
「ハア、僕、ここで死ぬのかな?」
ヒエルクリフは呟いた。
食事が差し入れられたが水と食器のみで食品はのっていなかったのである。
「今度があったら絶対に整理するんだ。」
ヒエルクリフは心に決めた。
今さらである。
今度とお化けはでたことがないのである。
「あのー、私を信仰していただけますか?」
赤毛の女性が現れた。
いったいどこから来たのだろ?
「あ、あなた誰です?」
ヒエルクリフは言った。
彼は新人ゆえにしらなかった。
「え?えーと、守護の女神トゥーセリアです、信仰してくだされば助けられます。」
女性は言った。
ヒエルクリフは知識神ヌーのナンチャッテ信者である。
つまり、冠婚葬祭しか思い出さない。
オスペナ知識国人のほとんどがそうではないだろうか?
それでも、知識神ヌーは大事な国神なのである。
「知識神ヌー様を一応信仰してるのですが?」
ヒエルクリフは言った。
「兼業でいいですよ、私はしょせん地方神ですので。」
トゥーセリアが言った。
しょせんナンチャッテ信者は思った。
べつにいいかと。
「わかりました、トゥーセリア様を信仰致します。」
ヒエルクリフは言った。
死んではもともこうもないのである。
「はい、では信者よ、わが導きによりて救いの道を教えよう!」
トゥーセリアがそういってヒエルクリフを
中央城塞のトゥーセリアの祠に導いた。
なぜか、守護ロボットは出てこない。
祠とトゥーセリアが光って
気がつくと南城塞のトゥーセリアの祠の前にたっていた。
「まったく、死んだかと思ったぜ。」
シレルフィール遺跡管理組合主任の
エルアルド・アーチが言った。
「あなた、トゥーセリア様に沢山お捧げものをしないとですよ!」
シレルフィール遺跡管理組合のキャリサ・ダータンスが言った。
「明正屋の染みハニー、初夏限定夏みかんでいいです。」
トゥーセリアはニコニコ請求した。
シレルフィール遺跡のそばには
万屋明正屋と言う店がある。
謎のグッズから医療品や衣料品やお菓子など色々多彩な商品がそろっている。
トゥーセリアは早速かってもらった
染みハニー初夏限定夏みかんを食べている。
「なにかお探しですか?」
キョロキョロと陳列棚を見ているヒエルクリフに店主が声をかけた。
「あのー、整理が上手くなるカバンってないですか?」
ヒエルクリフが言った。
「あります。」
店主が言った。
店主がカウンターに小さめのショルダーバッグを出した。
「この整理用のポケットが沢山ついた、美人整理バッグとかいかがですか?」
店主が言った。
冒険者では主流の大きさである。
「……僕には小さすぎる、いれるもの沢山あるんです。」
しょせん学者体質なヒエルクリフは
ついつい資料が増えるので
大荷物なのである。
喉元過ぎればなんとやらである。
ときめかないものは捨ててもらいたいものである。
「………わかりました、こちらをどうぞ。」
店主は手のひらサイズの巾着を出した。
「さらに小さいんですが?」
ヒエルクリフは言った。
「こちらは差し入れ小袋といって、空間術で中を拡張してあるんです。」
店主は中身を出しはじめた。
出るは出るわ…。
鍋釜はもちろん、通信機、大型通信機、寝袋、工具、はては椅子まで出てきた。
「家一軒まで入ります。」
店主は平然と言った。
差し入れ小袋は普通の明正和次元人は必ず一つは持っているからである。
「間違えて自分が入っちゃったら?」
ヒエルクリフは言った。
「そういう使い方もできますよ、緊急避難用とか、もちろん出られます。」
店主が言った。
「荷物はどうにとりだすの?」
ヒエルクリフが言った。
「まあ、覗けば取り出せますよ。」
店主は取り出したものをしまいながら言った。
この差し入れ小袋は店主の私物である。
「買います。」
ヒエルクリフは言った。
「はい、どれになさいますか?」
店主がカウンターに商品を並べた。
かくして、ヒエルクリフ小さくて大きな入れ物を手にいれた。
恐らく、沢山荷物を入れまくったことだろう。
その後、シレルフィール遺跡の冒険者や考古学者の間で
差し入れ小袋が流行りまくったことは言うまでもない。
本日の商品
差し入れ小袋(巾着仕様)
飛びニンジン本舗
緊急避難機能付き
緊急時に自分を時空凍結して救助を待てます。(緊急信号は発信します。)
商品の制作縫製は丁寧に行っておりますが不良品は交換致します。
商品の改造は空間事故の原因となりますのでお止めください。
ご意見、ご苦情は飛びニンジン本舗までお願い致します。




