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大食い地獄  作者: 夏北 沖冬
処刑台への階段
46/50

18段目

 しばらくは、鶏と黒曜石の切っ先を交互に見つめて、逡巡する時間が過ぎていった。餌を与えない鶏を置いていても痩せていくばかりだし、始末するのならば早い方がいいだろう。

 先ほどまでとは違い、躊躇することなく鶏を隅に追い詰め、捕まえた。俺の覚悟が、鶏に伝わったのだろうか、抱きかかえても暴れなかった。

「すまん」と胸の中で強く謝ると、一気に黒曜石で、喉元を切り裂いた。

「アーーー!!」

 鮮血が裸の上半身に飛び散ると、思わず大声を出し、怖気付いて鶏を放り出してしまった。

 血抜きのためには、すぐに逆さ吊りにするべきだが、かき集めたワラを鶏に被せ、屠殺の現実から逃げてしまう。

 いつまでも、のた打ち回る鶏から、目を背け耳を塞ぎ、時が過ぎ去るのを待った。

 1時間以上は経過した頃、積み上げたワラをどかすと、無残にも血で羽毛が真っ赤に染まった鶏が、横たわっていた。鶏冠とクチバシは苦しみもがいたために、地面とこすれてボロボロになっている。残酷な末路にしてしまった罪を、少しでも償うためにも、亡骸を無駄にしたくない。この冷たくなった肉体を、我が血肉に換えて、1日でも長く生き延びようと奮い立つ。

 血抜きをせず時間の経った死体は、さばくのに苦労をしたし、味もまずかった。

 しかし余す所なくすべてを食べ終えると、胃袋を中心として体の隅々に至るまで、ポカポカと暖かくなり、「命を頂いたんだ」という実感がわいてきた。

 


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