8話
新太の仕事場は、住居の裏と門壁の間に出来た隙間のような場所であり、入るための進入口は限られた数本の道……といった感じの場所だ。
そのうちの1本はアガロに指示された“石材を運ぶ場所”に繋がっている道であり、人がギリギリすれ違えるくらいの道幅しか無い。
ただ昨日半日ほど仕事をして、一度も他人とすれ違わなかったことから、あの道は基本的に使われてない道なのだろう。
……と、そんなことを考えながら周辺を探っていると、道の先に少し不思議な建物があることに、新太は気付いた。
「ん? なんでココだけ扉がこっち向いてんだ?」
周囲の建物は基本的に門壁とは反対側……つまり、入門書の地図で扉の前に大通りに繋がる道が書かれている。
しかし、この建物だけは“入門書の地図では道が繋がっていない”場所に扉が置かれていた。
まぁ、もちろん裏口がある家もあるが、この家には扉がひとつしか無いため、たぶんそれには当てはまらないだろう。
「気になるな……。少し覗くくらい、良いよな?」
言いながら扉に手を掛ければ、特に抵抗もなく扉は開く。
どうやら、扉には鍵もなにも掛かっていなかったらしく、開いた隙間からは埃と少しツンとした臭いが漏れ出ていた。
「うわ……。なんか微妙に臭ぇ……」
漏れ出たモノに顔を顰めたものの、この状態なら人はいないだろうと、新太は扉を一気に開く。
すると閉ざされていた部屋の中に光が入り……新太の目の前に、いろいろな道具が姿を現した。
……どうやらここは倉庫のようで、いろいろな道具が詰め込まれてたらしい。
「えっと……石臼に、壁には鍬とか鋤もあるな。あとなんだこれ、石の……ヤスリ?」
中を見つつ、もしかしたらと入門書を開けば、案の定……道具のページが追加されており、目の前にある用途不明の道具達の名前や使い方がびっしりと記載されていた。
……これぞまさにチート能力、である。
「はー、この石に擦ってヤスリがけすんのか……。考えたやつ、絶対頭良いだろ」
自身では思いつきもしない道具達に感心しつつ倉庫の中を探る新太の前に、ついに求めていた手押し車が姿を現した。
ただ、新太の思っていた猫車とは違い、車輪が2個ついている形ではあったが……。
「あったあった! これよ、俺が求めてたのは!」
言いながら手押し車の持ち手を掴み、ぐいと引っ張っていく。
なかなか奥まったところに置かれていただけに、外まで持ち出すには少々骨が折れそうではあるが……そんなこと、新太にとっては些事に過ぎず、いろいろとモノを動かしたりなどすること10分。
無事、新太は手押し車+αを倉庫の外へと出すことに成功した!
そう、+αである。
「よーし! そんじゃ、こいつらで一気に効率化だ!」
NEXT.金を稼ごう




