7話
「まいどあり-! またよろしく頼むぜ、兄ちゃん!」
元気な声で送ってくれる万屋のおじさんに、新太は振り返りつつ片手を上げて応える。
反対の腕に抱えられた木箱には、様々な小物……その大半は日用品といったもので、そろえるのに、4銅ほど費やしてしまった。
……つまり、今日の晩飯と、明日の宿+飯代を除けば、あと1銅しか残っていないというのが現状だ。
「金は無くなったが、歯ブラシとかはさすがに買っとかねぇとダメだからな」
この世界の文化よりも未来に生きる異世界人としては、歯磨きをしない生活はどうにも落ち着かない。
風呂に関しても、金持ちしか持ってないとかそんな話らしく……その話を聞いた新太は、心の中で“風呂のある家に住む”ことを強く誓った。
……だからしばらくの間は、井戸から水を引いて、水浴びするのが風呂代わりだ。
「アガロさんの話では、仕事に来る時間は自由だったな」
このまま足りないことに目を向けていては心が沈む……と、新太は気分を変えるために別の事を口に出す。
今やっている仕事は、ある意味“救済処置”のような仕事なだけに、新太がいなければ進まなくなるという仕事ではないらしく、出勤時間に関しては“太陽が東の門壁を超えた後”ならいつでも良いらしい。
それまでは暗くて怪我をしかねないからダメだそうだ。
「ま、石材だしな。足の上に落としたら、骨が砕けらぁ。だったか?」
新太がそう、アガロのマネをして言葉を紡げば、似てないのが少しおかしくて笑える。
ただ昨日、その言葉に続くように「だから無茶して怪我すんなよ、アラタ」と言ってくれたアガロの顔が優しかったのも、新太は覚えていた。
――本当に、チートみたいな出会いだ。
「んじゃ言葉通り、無茶せず……それでいて、効率的な運び方ってのを、探してみっか!」
◇◇◇
そうして新太が荷物を宿に置き仕事場の近くに来たときには、太陽が東の門壁を越えてから、1時間弱が経過しており、アガロや他の作業員達は作業を開始していた。
急ぎ仕事場へ向かえば、周りからは男達の声や石材がぶつかるような音……。
昨日は気付かなかったが、どうやら相当数の作業員が働いているらしい。
「さて、どう運ぶか……」
到着した新太の前には、昨日と変わらず積まれた石材の山。
どうもここは一時保管所のようなものらしく、いろいろなところから石材が運ばれているみたいだ。
そして、新太が運ぶ先も石材の一時保管所……“アガロの担当する区画”の一時保管所といったところらしい。
これを昨日は背負子を使って運んだわけだが――
「昨日の夕方に俺が見た量よりも、かなり増えてるな」
……つまり、なんらかの手段でここに大量の石材を運び入れているようだ。
簡単に思いつくのは、馬車や牛車といった“動物を使った輸送”だが……入門書の地図を見るに、この付近の道はそこまで広くない。
「ならきっと、人ひとりで運べるモノがあるはずだ」
そう、例えば……猫車のようなものがな?
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