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追及~その後

「少し失礼」


 そう言って俺は持っていた測り棒を伸ばした状態でレオパルド・インターの横に立てた。


 流石に予想外だったのか、無表情のままだがこちらに視線を寄こしてきた。


「……なに?」


 そう言ってきたが、俺は無視して次にアイリス嬢の横にその棒を立てた。


 周りの検事役が何事か言ってきたが一切無視して、最後にエリーゼ嬢の横に立ってその棒を立てた。


「あ、アラン様?」


「身長の推定値を報告! 対象R、高さ1.576m! 対象A、高さ1.551m! 対象E 高さ1.561m! 以上!」


 そう大声で言うと観劇の間の一角から返答があった。


 そこには俺の友人がいて、大声で計算を言ってくれた。


「計算開始! 監視水晶真下の点から犯人の真下の点までの距離5.5m! 犯人の頭の天辺までの角度16度!」


 映っていた犯人の身長を割り出せば、犯人を推定できると思った俺は友人たちに頼んだ。


 上に設置されている監視水晶の映像を開廷宣言の場で見た時、俺はあることを確認した。


 それは犯人が膝を屈伸せずに完全に立っている状態になった瞬間だ。


 犯人が突き落とした後チラリと監視水晶を確認した瞬間がまさにそうだった。


 その瞬間は膝を曲げていなかったので大体の身長が分かるだろうと思い、晩餐会で俺が起動させた際に確認した特徴的なものを3つ友人たちに確認してもらった。


 1つ目は、犯行現場の壁の特徴的な柄だ。

 その柄の横に突き出た個所が犯人の身長の天辺と大体同じだった。


 2つ目は、同じ壁のダイヤみたいな形の柄だ。

 ちょうどその真ん中が犯人と同じぐらいの高さだった。


 3つ目は、近くの観葉植物の先端であり、これも大体高さが一致していた。


 そのため、それら3つの頂点の真下の点を割り出した後、そこから5.5mの距離を測った個所を3つ全て特定した。


 特定した3つの点のそれぞれから壁や先端の3つの頂点まで全てロープを引っ張って割り出した角度の数値が偶然にも全て16°を表していた。


 当然、壁や先端の点から地面まで垂直の高さ、つまり犯人の身長を割り出している。


 だが、あえてこの裁判の場で犯人の身長推定値を求める。


 協力してくれた友人たちに感謝である。


「角度16°の場合、 tan16°=0.2867以下切り捨てとした時、 5.5m×0.2867=1.57685m! 対象Rの身長推定値との誤差0.00085m! 対象Aの身長推定値との誤差0.02585m! 対象Eの身長推定値との誤差0.01585m!」


「つまり、この身長測定棒で確認したあなたの身長推定値と映像内の真犯人の身長推定値の誤差が非常に少ないのです。アイリス嬢やエリーゼ様と比較にならないぐらい小さな狂いなんですよ」


 そう言った瞬間、初めてレオパルド・インターの表情が一瞬だけ僅かに崩れた。


 俺が言いたかった事は、エリーゼ嬢よりもお前の方が犯人の身長推定値に近いという事だ。


 俺は現場でそれらの計算をしている友人たちの映像が記録された監視水晶を証拠として校長に提出した。


「その値と同じか下に出る人間は他にもいると思う。そもそも推定だしね」


「ええ、そうでしょうね。ですが、あなたには他の誰にも真似できない点があります。それはご実家の経済力です」


 そう言って、俺はレオパルド・インターをじっと見据えた。


 レオパルド・インターはほんの僅かだけ目元を険しくさせていた。


「調べによるとスール伯爵家の借金もあなたの実家からしていたそうではありませんか。もしも自分があなたなら簡単に言い包められますね。協力したら借金を帳消しにするとか減額するとかね」


「……それは全て憶測。悪い冗談だ」


「それに、スール伯爵家のご令嬢方はご自身の髪をあなたの代理人に売ったと証言していますよ」


 そう言って俺は友人が聞きに行ってくれたスール伯爵家の娘の聞き取り調査の映像が記録された監視水晶を起動させた。


 そこには肩ぐらいの長さの銀髪の女性が二人映っていた。


 売った時期は夏頃らしく、今伸ばしている最中だという。


「実はこの後、私の友人が直接、インター商会のとある店に問い合わせているんですよ。スール伯爵家の関係者のふりをして銀髪を返して欲しいとね」


 そう言って俺は友人とその店との交渉時の監視水晶を起動させた。


 ある男が映ったのを見てレオパルド・インターの表情が一瞬だがはっきりと歪んだ。


 映った男はインター商会配下の本屋の手代だった。


 その手代と友人が交渉している。


「この男、僕と会っていた男じゃないか!」


 伯爵子息アルフレッドがそう叫ぶ。


 それを聞いてレオパルド・インターは少し険しい目でチラリと伯爵子息アルフレッドの方を見た。


 映像がその手代と友人の交渉場面を映す。


「お嬢様の髪を返してほしいのです!」


「そんなもの、とっくの昔に売れたよ」


「誰ですか! その人の元にも交渉をしたいので教えてください!」


「言えるわけないだろう。帰った帰った」


「渡した相手は、うちのお坊ちゃまと接触していたインター商会会長のお孫さんですよね! そっちと交渉してきます!」


「ちょ、待て! てめえ、なんでレオパルド様に渡したことを知っている!? おい、待て――――」


 そこで映像が終わった。


 レオパルド・インターは顔を俯かせた。


 俺はその証拠を校長に提出した。


「聞きたい事はただ一つです。長い銀髪を受け取ってどうなされたのですか? こういうものってカツラで利用する以外ないですよね?」


 そう問いかけるとレオパルド・インターは顔を上げた。


 その表情は僅かに歪んでいる気がした。


「その銀髪はルーベルのためのカツラにした。彼は禿げているんだ。今被っているのもあげたカツラ」


「なっ、おいッ!」


 公爵子息ルーベルは突然の暴露に怒り出した。


 へえ、じゃあこう言ってみるか。


「もう一つは?」


 そう言った瞬間、レオパルド・インターの表情がはっきりとほんの僅かに歪んだ。


 スール伯爵の娘は二人でどちらも同じ手代に売り渡しているのは分かっている。


「……知らない」


「あの手代、この学校に本を卸売りする際に同行しているそうですね。場合によっては直接図書室に届けていたとか。図書室の黒君と呼ばれるあなたとの接触も簡単だ」


「……証拠がない」


「ありますよ。少なくとも接触可能を証明する監視水晶があります」


 その映像には、レオパルド・インターが図書室に入室した後、その手代が図書室に入る映像があった。


「映像時期は星の会の一週間前です。それ以前にも何度か接触機会があり得る映像もありました」


 そう言ってその時の場面を次々映す。


 そして最後に、星の会の一週間前の接触と思われる映像で止めた。


 普段のレオポルド・インターとその手代の接触と星の会前の接触とで大きな違いがあったのを全員に理解してもらうためだ。


「星の会の一週間前の際、この手代は今までと違って少し大きな箱で入室しているのです。今までと違うのは、この時に銀髪のカツラの受け渡しがされたから。違いますか?」


「……邪推だよ」


「それだけではありません。この時、カツラと一緒にエリーゼ様と同じ特上級の青いドレスや履物も渡された。エリーゼ様、あの特上級の青いドレスや履物はどこで購入されましたか?」


「インター商会です」


「……」


「貴族ご用達のインター商会なら、すべて揃える事が可能です。渡したい人物がいる。そう言うだけで会長の孫であるあなたに用意してくれる。他の学生では高くて特上級のドレスなんて親の許可なしに買えません。違いますか?」


「……違う」


 レオパルド・インターの表情は完全に崩れていた。


 そして、いつもは聞かない大声で言葉を発した。


「僕は犯人じゃない! ルーベルが犯人だ! 僕は命令されてそれらを用意しただけなんだ!!」


「は、はあ?! お前ッ!!」


 スケープゴートに罪を押し付けて逃げる気か?


 それは絶対に許さない。


「ルーベル様は真犯人ではありません。明らかに身長が大きいですからね。犯人の用意した小道具を完璧に揃えられて、共犯者と協力者の両者と接触できて、犯人と同じような身長という条件を満たすのは、あなたしかいません」


「……僕じゃ、ない」


「外部犯もありえません。正面玄関の監視水晶を証拠として提出します。時間が掛かってもいいというならば、外部から来た人の身長を全て割り出します。映像内の犯人と同じ身長で、あの小道具を全て揃えられて、協力者と共犯者と接点を持つかどうか全部調べましょうか?」


「……」


「弁護人役、そろそろ弁護時間が終了します」


 裁判長役の校長がそう言った。


 確かに終了時間だが、俺の主張で形勢は逆転したと思う。


 他の裁判官役の先生方も完全にレオパルド・インターを疑っていた。


「裁判長、最後に一つだけ」


 そう言って俺はレオパルド・インターをじっと見据えた。


 レオパルド・インターは俺を憎むような目つきで見てきた。


「あなた自身が実行犯として行動した理由なんですが、アイリス嬢に対する執着と独占欲が原因だと思うんですよ」


 今回の計画はアイリス嬢を手に入れるという動機から始まっている。


 共犯者を切り捨て、いつも隣にいる公爵子息ルーベルすらも切り捨てるだけの執着を見せている。


 そこまで独占したいんだ。


 本当に誰にも触られたくなかったのだろう。


 第三王子オルベルトがアイリス嬢を抱えた時に常に無表情だった男の表情が簡単に崩れたのだから。


「アイリス嬢に自分だけが触れたかった。触れるべきだと考えた。だから、あなた自身が実行犯になった。違いますか? 自分の気持ちに嘘をつかれるならば、違うとはっきり言えばいい」


「……」


 言える訳がないよな。


 第三王子オルベルトがアイリス嬢の肩に手を回した時、常に無表情の人間が険しい顔つきになって執着心と独占欲を見せたんだ。


 レオパルド・インターは否定しないし、場の空気はこちらの勝利だろう。


「裁判長。これにて弁護を終了いたします」


「分かった。これより話し合いの後、裁決する」


 そう言って校長や先生方は席を立って観劇の間から出ていった。


 友人の一人が念のために監視に行ったが、それを横目にエリーゼ嬢に近付いて小声で話しかけてみた。


「一応、自分にできる弁護は全てしました。あとは裁決だけですが、オルベルト殿下が相手ですからね。負ける可能性はあります」


 相手は王族。


 ここまで弁護しても負ける可能性は十分ある。


 国王の介入があれば、何か波乱があるだろう。


「いえ、本当にありがとうございますアラン様。アラン様のご友人方にも深く感謝いたします」


 そう言って傍聴席の方に深々と頭を下げた。


 傍聴席の方から小さな歓声が上がる。


 それを第三王子たちは複雑な表情で見ていた。


 その時、レオパルド・インターがアイリス嬢の方を見た。


 アイリス嬢はそれに気付いて複雑な表情を見せた後、顔を逸らした。


「あっ……」


 レオパルド・インターの絶望の声が聞こえた直後、観劇の間の扉が開いた。


 校長先生たちが戻ってきた。


 思っていたよりも早い。


 俺は速やかに席に戻り、アイリス嬢を慰めようとしていた面々も席に戻った。


「これより、裁決します。エリーゼ・フォン・クロス様は無罪! これにて学校裁判を閉廷する」


 傍聴席の戦略科の面々が歓声を上げた。


 友人たちもとても喜んでいた。


 意外だったのが、一部の官僚科、貴族科の人間も歓声を上げていた点だ。


「レオパルド・インター君、アルフレッド・フォン・スール君たちは生徒指導室まで連行させていただきます。抵抗しないでください」


 その言葉に伯爵子息アルフレッドは項垂れ、絶望した表情のレオパルド・インターはアイリス嬢の方にずっと顔を向けていた。


 アイリス嬢は二度とレオパルド・インターの方に顔を向けなかった。


 レオパルド・インターは絶望的な表情のまま生徒指導室に連れていかれた。


 他の第三王子オルベルト、公爵子息ルーベル、宰相子息アドルフ、グスタフは涙を流し始めたアイリス嬢を慰めたりこちらを睨んだりしていた。


 こいつら全員立場がやばいのを理解しているのだろうか。


 王族が絡む学校裁判の裁決の速さから察するに、国王の介入があったのは間違いない。


「エリーゼ様、逆転無罪になりました。とりあえず、この場は離れましょう」


「はい。アラン様。本当に、本当にありがとうございました」


 そう言ってエリーゼ嬢は俺に頭を下げた。


 辺境伯と侯爵は貴族として同格とはいえ頭を下げるなんてあまりよくない事だが、それだけ感謝しているのだろう。


 すぐに頭を上げてもらって観劇の間から速やかに出ていった。










 こうして学校裁判は幕を閉じた。


 後日、詳しい調査が行われた結果、レオパルド・インターの自室から長い銀髪のカツラ、特上級の青いドレス、履物が見つかり、伯爵子息アルフレッドの自室から取り換える前の監視水晶が見つかった。


 レオパルド・インターと伯爵子息アルフレッドは即日退学処分を受けて、憲兵に引き渡された。


 この事件の余波はやはり学校内だけで留まらなかった。


 インター商会ではレオパルド・インターの祖父である会長が引退して彼の父親が会長になり、彼の弟が正式な後継ぎに指名された。


 レオパルド・インターと事件に関わった手代は貴族への傷害の関与で逮捕された。


 王都の外れにある重罪の塔と呼ばれる監獄に入っているらしい。


 スール伯爵家は今回の件を理由に爵位を一つ下げられ、子爵家になった。


 そして、その子爵位も返上して夜逃げして子爵家全員が行方不明らしい。


 元々最終手段として夜逃げはする予定だったみたいだが、今回の件でそれが早まっただけだと探りに行ってくれた友人から聞いた。


 そのため平民になった元伯爵子息アルフレッドもレオパルド・インターと一緒に重罪の塔に投獄されたそうだ。


 ちなみに、重罪の塔に収監されたものは死ぬまで出られない。


 なので死刑囚か終身刑を受けたものしかいない。


 一生日の目を見る事はないだろう。




 他の関係者も今回の件で色々と運命が変わった。


 まずは第三王子オルベルト。


 自身の望み通り、エリーゼ嬢との婚約は解消された。


 後継ぎとして決してあり得ないと宣言が出されてしまい、後継ぎレースからも脱落した。


 本人はこれでアイリス嬢と結婚できると思っていたそうだが、やはりそんな事はあり得なかった。


 あの学校裁判から1ヶ月もしないうちに、属国の王室の行かず後家に婿として出されることになってしまい、学校を辞めさせられて婿入りさせられた。


 相当喚いて嫌がっていたが、そのまま連れていかれた。


 その後の噂では、監禁状態にあるそうだ。




 公爵子息ルーベルも破滅した。


 第三王子派閥が今回の件で崩壊して、エンド公爵は失脚した。


 当然、激怒したエンド公爵はルーベルを後継ぎから外し、自身の屋敷の一室に閉じ込めたらしい。


 学校にも退学届けが出された。


 この学校裁判の数年後の社交界で病死したという噂が流れた。


 しかもその頃にエンド公爵の娘も亡くなり、エンド公爵の正統な血筋は途絶えてしまったそうだ。




 宰相子息アドルフも破滅した。


 今回の事件の結果、クロス侯爵閥から相当責められた宰相は辞職せざるを得ない事態になってしまった。


 そのため、一番早く退学届けを出されたのが彼だった。


 厄介者扱いで家から追い出された彼の末路は誰も知らない。


 ただ、一時期学校周辺やアイリス嬢の実家付近で見かけたという噂があったが、どこに行ったのか誰も知らないという。




 グスタフ・フォン・リューザックはあの事件の後、完全に孤立した。


 戦略科の誰もが彼との付き合いを避けた。


 アイリス嬢に付き纏っていたが、彼女が完全に拒否した後から姿を消した。


 退学して実家に帰ったらしいが、近衛騎士団を自主退職した父親から勘当されたと聞いている。


 今では誰もどこに行ったか知らない。


 噂では最前線に放り出された結果、戦死したというが本当かどうかまでは分からない。




 エリーゼ嬢の取り巻きは、初冬の晩餐会での態度が問題視されて遠ざけられた。


 彼らの実家は侯爵に詫びたそうだが、誰も許されなかった。


 自主退学した者もでたが、その後の末路は言うまでもなく冷遇だった。




 アイリス・フォン・フォースは卒業するまで学校にいた。


 彼女自身は教科書を破かれたり階段で突き落とされた被害者だったため、特に何のお咎めはなかったが、ほとんど誰も関わろうとしなかった。


 学校裁判直後は破滅した男たちが纏わりついていたが、全員を完全に拒否した。


「最初から、ちゃんとこうしておけば良かったんです……本当にすみませんでした」


 そう言って俺やエリーゼ嬢に謝罪をしてきたが、相手が自分よりも上の身分の者しかいなかったので仕方ないだろう。


 戦略科の一部と関わって楽しそうにしていたアイリス嬢の顔に何の憂いもなかったのが救いだろう。


 彼らが完全にいなくなった後は猛勉強していた。


 学校を卒業した後、そのまま彼女は役人になった。


 その後は同僚と結婚したらしい。




 エリーゼ嬢も変わった。


 婚約を破棄された後から俺とよく関わるようになった。


 頬を赤く染めて嬉しそうに俺と話す彼女は普段の綺麗な姿と違ってとても可愛らしかった。


 多分そういう感情を抱いてくれているのかなと思っていたら、クロス侯爵家から実家に婚約の打診があった。


 親父殿は喜んで受け入れていた。


 一週間ほど、俺と彼女は婚約者同士になった。


 だが、その婚約は最終的に国王が許可しなかった。


「その婚約は許可しない。異議があるものは忌憚なく申し入れよ」


 貴族同士の婚約に許可を出す貴族院の議長席に座る国王はそう言った。


 国王のその言葉に飾りの貴族院議員全員が異議を唱えなかった。


 強大な武力を持つ辺境伯と第一王子派筆頭の侯爵が結んだ場合、第一王子が王になった際に貴族権力が一気に増大することを恐れたからだろうと言われている。


「私は諦めません。絶対に、絶対に」


 婚約が認められず破棄されてしまった次の日の晩、エリーゼ嬢は泣き腫らした目を俺に向けてそう言った。


 その力強さは第三王子の婚約者だった時にはなかったものだ。


 クロス侯爵から内密に感謝されたのでその変化は悪いようには思われていないらしい。


 学校卒業後はそのままエリーゼ嬢から離れて実家の辺境伯の騎士になって寿命を全うする予定だったのだが、色々と予定が変わってしまった。


「アラン、侯爵家に出向いてうちとクロス侯爵家の連絡係をしてくれ。それさえしてくれたら、あとは好きに動いていい」


 そう言った親父殿に俺は黙って従った。


 友人たちは俺の実家の騎士や兵士になったり、侯爵家の騎士や兵士になっていた。


 得難い仲間たちと共に俺は言われた通りに連絡係をした。


 そして、協力を約束してくれた友人たちと共に自由に動き始めた。


「ある意味で反逆になるが、本当にいいのか?」


 俺と同じ連絡係になった友人にそう聞かれた。


 それに対する返答はただ一つしかなかった。


「王の婚約破棄に異議ありだからな」


















「お母様、その後どうなったの? お母様やお父様たちは意地悪な王様を言葉でやっつけたんだよね? だからお爺様が王になって、お父様と結婚できたんでしょ?」


「ええ、そうね」


 白亜の宮殿の中庭で銀髪の女性が同じ髪色の少女の頭を撫でながらそう言った。

 そんな二人に近付く一人の男性を見た二人は、満面の笑みを浮かべて男性に抱き着いた。






 クロースズ王国の歴史の中でクロス王朝と呼ばれた長い王政期間があった。

 その中で弁護士の祖と呼ばれた宰相がいた。

 その宰相は銀の髪の王女と結婚し、波乱に満ちた人生を歩みながらも幸せに暮らしたという。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 新しい視点での悪役令嬢の話で、とても面白かったです。 ☆彡
[良い点] まず先に、投稿お疲れ様でした。最初から最後までとても読みやすく手軽に一気読みできました。 正直に言って批判する隙もない程のクオリティーでした。主要な登場人物の一人一人が細部まで細かく設定さ…
[一言] 王様がやりこめられて王家が失脚するところも読みたいね。
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