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第99話 不満

他の者達は成り行きを見ていたが



コポクルを恐れて



何事もなかったかのように



酒を飲み始めた。



少しでも斬られたほうを気の毒に思って



同情でもしようものなら



即座に因縁をつけられて



自分が斬りつけられる。



同情は禁物だ。



この世界の連中は仲間ではあっても



油断は出来ない。



他人のことなどどうでもいいのだ。



自分のことしか考えにない。



自分だけがよければ



他人がどんな目に会おうと関係ない。



だからいつ足をすくわれて



手柄を横取りされるかもわからない。



千人の女を集めなければならないといっても、



ここではたいがい力のある者の所有物になっていて、



うかつに手を出せば大変なことになるのだが、



しかし集めろと命令されれば、



やらなければならないのだ。



やれば命が危ないし、



はたまた命令にそむけば命がない。



それで力のない者は



他人が命懸けで奪ったものを



だまし討ちにして奪うしかない。



そうして奪ったものを、



またそれ以上に力のある者がまた奪うのだ。



それが次々連鎖していく。



そういうことが嫌でひとりで



ひっそり自給自足して生きて行こうとしても、



全体が略奪の世界だから物を作れない。



例え作ったとしても



すぐに奪われてしまうので



作る意欲も失せてしまう。



この世界は類は類をもって集まるという法則に従って



同じ者が集まっているのだ。



想うことが違えば違う世界に瞬時に移動するのだが。



しかし腹の中で想ってしまうことは



自分の意志でそのように想わないようとしても



自由に止めることが出来ない。



そのため、



どうしてもこの世界から抜け出すことが出来ず、



つねに相手と争い、



意識はいつも強いストレスで



緊張が緩むことはないのだ。



奪う想いがあるということは



まわりにいる者達すべてが



自分と同じ奪う者なのだ。



それだけにものを手に入れるのは



容易なことではない。



弱い者はそれより弱い者から奪うしかないのだ。



自分より弱い者がいなければ、



何も手に入らないという



略奪者のみの世界だ。



コポクルはイダブを倒すと



仁王立ちしたまま人差し指を前に伸ばして



ひとりひとりを指差すように



腕を左右に動かしながら



「俺様に逆らうんじゃねえ。



逆らうやつは生かしちゃおかねえ。



俺の命令はアブダ太閤閣下の命令だ。



わかったか。」



皆を威嚇するように見回してから



タバコをくわえた。



するとそばにいたセヒムが



すぐに火のついた細い木の枝を



タバコの前に差し出すと



コポクルはゆっくりと



枝の先の燃えているところで火をつけて、



煙を深く吸い込んだ。



弱い者は強い者には逆らえない。



逆らえば徹底して虐待ぎゃくたいされる。



「あの女どこかで見たことがあるんだが、



どこでだったかな。」



騒ぎの中、先ほどから



悠然と酒を飲んでいたエハウが言った。



「俺も見たことがあるぞ。」



そばにいる男も見覚えがあるらしい。



すると



「あれはタリゾン魔王の屋敷にいた女だ。」



横から誰かが言った。



「えー」



いっせいに驚きの声が上がった。

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