表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/136

第92話 落ちた場所

「おやっ」



イタチは不思議に思って耳を澄ませた。



水の中に落ちたはずなのに



水音がまったく聞こえない。



そして不思議なことに



骸骨の化け物集団はその中へ



飯山を追って行く気配をまったく見せなかった。



一体どうなっているのだろう。



化け物達が姿を消したのを確かめると、



イタチは身を隠していたところから、



あたりを警戒しながら姿をあらわして



油断なく足音を忍ばせ、



飯山が落ちたところへ近づいて行った。



そしてそのふちに立って



中をのぞいて見ると、



水だと思っていたそれは水ではなく、



よどんで、



どぶのように濁った気が振動して



波立っているものだった。



この淵に立っていると、



腐った異様なにおいが鼻を突いて、



気分が悪くなる。



下を見ると急な坂をころげ落ちた飯山が



立ち上がってヨロヨロと



よろめきながら歩きだしていた。



戻りたくても戻れない世界に



入り込んでしまったということは、



嫌でもこの中を進んで行くことしかないのだが、



しかしイタチもここで立ち止まってしまった。



行くに行けないし、戻るに戻れないのだ。



不吉な妄想ばかりが膨らんでいく。



大変なことになってしまった。



こんなことになるとわかっていたら、



入っては来なかったのだが。



後悔の想いが沸々と沸いて来た。



「俺が見つけたんだ。お前ら手をだすな。」



「ふざけるな。俺のほうが先だ。」



「うまそうなイタチだ。」



「食いたいな。」



「だめだ。俺が食うんだ」



「何だと。おまえなんかに食わせてたまるか。



俺を誰だと思ってるんだ。」



急にざわざわと背後が騒がしくなって



イタチがビクッと振り返った、



と同時にズキッ、と激痛が走った。



「キーッ」



思わず悲鳴をあげた。



一匹の骸骨の化け物が



イタチの尻にかぶりついていた。



他の化け物達もせきを切って獲物に群がるように、



ところ構わず食いついて来る。



イタチは瞬く間に



身動き出来ないほど押さえつけられて、



全身に食らいつかれてしまった。



「うわっ、ひでえことになってるな。



あんなに食いつかれたんじゃあ



イタチはダメだろう。」



前の方で繰り広げられている光景を見て



バドグが言ったが、



「あっ」



ミヤナが顔色を変えて



かたわらにある岩影に



隠れるようにしゃがみ込んで



口と鼻を袖でおおった。



バドグも慌てて口と鼻を被った。



あの滝での事を思い出したからだ。



こうなったからにはイタチがやるに違いない。



慌てて二人が身を隠した時だった。



プッスー、 ズバーン、



真っ黄色の破壊的臭気が衝撃波となって



周辺を一気に襲った。



途端に阿鼻叫喚、



ゲーゲーとのたうちまわる音、



呼吸困難でもがいてあえぐ息の音が



しばらく続いたが、



そのうち静かになった。



ミアナとバドグはイタチがどうなっているのかと



恐る恐る岩から顔を覗かせた。



目に入って来たのは無数の骸骨のお化け達が



瓦礫がれきをばらまいたように転がっていて、



イタチの姿は消えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ