第86話 絶命
その日、
飯山は義理事があって
出かけることになった。
どうも朝から体調が思わしくなく
気が進まなかったが、
この世界では義理を欠くことは出来ない。
正装すると配下の者が見送りのため
外に列んでいる自宅の門を出た。
「おはようございます。」
待っていた組員達が
黒のスーツ姿で一斉に
ビシッと腰を曲げて挨拶した。
ボディーガードが油断なく
あたりに気を配りながら
飯山のまわりを固めている。
飯山は悠然と
高級外車のところまで歩いて行って、
開けてあるドアに入り込もうと
頭を少し下げた。
プュン、プュン、プュン、
たて続けに音がして
ボディーガードと飯山が
ビクン、ビクンと
体をのけ反らせた。
突然何事が起こったのか、
とあたりを見回すと
通行人を装った五、六人の男達が
サイレンサー付きの拳銃を
連射しながら走って来る。
ふいをくらって反撃しようと
熊虎組の組員達が
隠し持っていた拳銃を抜き出して
撃とうとするが
五人が一斉に連射してくるので、
なす術もなく撃たれて
身をのけ反らせながら
次々に倒されてしまった。
頃合いを見計らっていたのか、
飯山のボディーガードが倒れるのを
伺っていた男が
抜き身の短刀を構えると
飯山めがけて走り出して
体ごとぶち当たった。
「うっ」
と呻いた瞬間、
飯山の顔が苦痛に歪んだ。
同時に手が胸に深々と刺さった短刀を
掴んだまま、
男を怨みのこもった目で
睨みつけた。
「蚊山か。」
飯山が無念そうに歯噛みをした時、
蚊山は刺さっている短刀を
渾身の力で引き抜くと
そのまま再度刺し貫いた。
闇の世界の報復に容赦はなく、
飯山はとどめを刺され、
意識が暗闇の中に薄れて行った。




