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第61話 密談

高層ビルが林立する



渋滞した道路を走っている。



すでに陽は落ちて、



街にあかりが灯っている。



車は歓楽街の中を



ゆっくりと走っていたが、



道路の端に



駐車スペースを見つけると



左へ車を寄せて止まった。



週末なのだろうか



街には人があふれて



人波が絶えない。



男は車を降りると、



人込みのをうようにして、



そこから少し離れた



ビルまで歩いて行った。



そして入り口を入ると



通路の中程にある



エレベーターを使わずに、



その脇の階段を



上がって行った。



エレベーターに



何か仕掛けられているかも知れない。



男は疑心暗鬼だった。



油断なく警戒しながら



上がって行って、



二階にある「ぽんた」という



看板がついた店に入って行った。



店に入ると



ボーイが、近づいて来て



「いらっしゃいませ。」



と男を迎え入れた。



「おう、もうひとり



あとから来るからな。」



男が言った。



「かしこまりました。



こちらへどうぞ。」



ボーイは事情がわかっているのか、



先に立って



一番奥のボックスへ



男を案内して戻っていった。



入れ替わりに



若い女が脇についた。



すぐに別のボーイが



ウイスキーのボトルと氷の入った



アイスペールを持って来た。



店内は適度に



ビートの効いたロックが



邪魔にならない程度に流れている。



店の女が作った



ウイスキーの水割りを



口に運びながら、



若い女と笑いながら



話しをしているが



男の目は常に店内を探っていた。



男の名前は飯山剛太(いいやまごうた)



極斬会きょくざんかい熊虎組の組長だ。



年齢は四十代前半というところだろうか。



しばらくすると



やはり四十絡しじゅうがらみの



見るからに



ただ者ではない顔の男を



ボーイが同じボックスに



案内して来た。



その男は、頭をちょっと下げると、



向かい側の席に着いた。



飯山が脇についている女に



何か小声で言うと、



(うなず)いて



すぐに席を離れていった。



ボーイがあとから来た男の前に



ビールを置いて引っ込んだ。



「どうだ、うまくいってるか」



飯山が男に言った。



男が軽くうなづいて



「あとは



信管(しんかん)に火をつければ



大魔会(だいまかい)狂龍会(きょうりゅうかい)



全面戦争です。」



男は痩せたほおをひきつらせて



(すご)みの効いた目で



ニヤリと笑った。



男の名前は島塚伝蔵しまづかでんぞう



飯山の右腕だ。



陰湿な裏工作にはけている。



信管になる店は間違いないんだろうな。」



飯山が言った。



狂龍会(きょうりゅうかい)



幹部が経営している店は



すべて調べてあります。



そのうちの



とくに気が狂っている



狂龍会寺野組の荒谷(あれたに)



橋中(はしなか)の店をやります。



狂龍会の中で、



一、二を競う武闘派ですから



暴走します。



ふっふふふふ。」



島塚は唇を片方だけ曲げて笑った。



大魔会(だいまかい)のほうはどうだ。」



飯山が聞いた。



「大魔会は魔崎組(まさきぐみ)の大幹部、



矢場(やば)田林(たばやし)の店をやります。」



島塚は嬉々として言った。



「大魔会と狂龍会につながっているやつは



信用出来るんだろうな。」



飯山が念を押すように言った。



「大丈夫です。



極斬会が関わっていることは



わからないように、



大魔会を探っている者は



狂龍会から



金が出ていると思っているし、



狂龍会を探っている者は



大魔会から金をもらっていると



思ってます。



つなぎをとる者も



顔を知られていない新人を



二人使って



それぞれ担当させています。」



島塚が言った。



「そうか、



慎重にやれ。



バレたらこっちが危なくなる。」



飯山が声を潜めて言った。



「店をやるときは爆薬で壊滅です。



徹底的に怨みを持たせて



大魔会と狂龍会のどちらかが



(つぶ)れるまでけしかけてやりますよ。」



島塚は声をひそめてニヤリと笑った。



「くれぐれも



尻尾(しっぽ)(つか)まれるなよ。



気付いたやつがいたら消せ。」



飯山は一段と声を低めて言った。



「それと店を爆破するときは



客がいるときのほうが



騒ぎがでかくなるから好都合だ。



死人が出れば



世間も放ってはおかないだろうし、



やられた側の怨みも



深くなるだろう。」



飯山が残忍な笑いを



浮かべて言った。



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