第42話 基盤
サイボーグとサイボーグの間に
光線が飛び交って
その間を抜けようとすると
霊体に激痛が走って
気を失ってしまう。
ザリエル達は
サイボーグ達に
行く手を阻まれて、
兵士の数が
どんどん減らされてしまっていた。
兵士達は疲労で
動きが悪くなってきて、
ザリエルもこれだけ広範囲の
兵士達を浮かせておくことに
疲れを感じていた。
イシン隊は広範囲に広がっている
サイボーグ達に
悟られないよう
集団から距離をとって
ぐるっとまわっていく。
サイボーグ達にわかってしまうと
どんな手段で攻撃して来るか
予測がつかない。
イシン隊は戦場から
遥か彼方の距離まで
離れてから迂回を始めた。
遠くから戦場を見渡すと
激しい戦闘が
繰り広げられていて
暗黒軍の兵士達のオーラから
大量のスモッグが立ちのぼり
全体が霞んで
見えていた。
サイボーグには
相手の意識を
読むことが出来る距離の
限界があるようだ。
それ以上離れてしまうと
わからなくなってしまうらしい。
イシン隊の動きは
サイボーグ達に気付かれていなかった。
部品倉庫の中では
アルホンス技師が
基板を探しているが、
あの部屋で使われている基板の
記録簿が紛失していて
部品番号が
わからないことに気付いた。
確認しに行く時間が
あるのだろうか。
部品が違えば
使うことが出来ないのだ。
この世界でも
研究が進んでいて
日々新しい機種が生まれていたが
普段は緊迫した状況というのは
ないので考えが甘く、
管理がずさんだったのだ。
しかしこうしてはいられない
アルホンスは部品番号を確認しに
バリア発生室へ走っていった。
各部屋にバリアの仕切りがしてあって
通り抜けて行くことが出来ない。
しかたなく通路をたどって行った。
部屋に入って
バリア発生装置を見えなくさせている
目立たない小さなスイッチを切ると
部屋中に複雑な回路が
ぎっしりと詰まった
バリア発生装置が現れてきた。
脇でどうしたらいいのかわからずに
頭を抱えていたアルタミラは
それを見ると
息を飲んで目を見張った。
アルタミラはこの世界に来て
まだ日が浅く
機械のことは
よくわかっていなかったのだ。
そして
自分から噴出したものが
複雑に入り組んだところに
貼り付いているのを見ると、
自分がしたことの重大さに
絶望して倒れてしまった。
アルホンスはすばやく
部品番号を確認すると
部品倉庫にとって返して
部品を捜した。
イシン中隊長は遠くから
ズームにして様子を伺っていた。
なぜかバリア発生装置が
急に見えるようになった。
だが何の機械なのかまでは
わからなかった。
しかし
慌てて直そうと
している意識の波動は伝わって来て、
あそこが破壊されれば
相手にとって
大変な打撃になるのだろうと理解した。
アルホンスは
必死になって
部品を探しているが
乱雑のままに
きちんと整理して
保管しておかなかったので
手当たり次第、
片っ端から探すしかなかった。
「きちんと分けておくんだったな。」
と後悔したが
後の祭りだ。
イシン隊はもうだいぶ近くまで
来てしまっている。
アルホンスは焦って、
あちらこちらひっくり返したり、
箱から引っ張り出したりしていたが
焦れば焦るほど
気が動転して
訳がわからなくなってしまう。
イシン隊がまじかに
迫っていた。
サイボーグ達は先程から
イシン隊を認識してはいたが
暗黒軍の本隊との戦闘に忙しく、
おまけに
サイボーグ達の間に
挟まれないように
迫って来ていたので
対処出来なかった。
大きな牙と二本の角が
生えていてその角を兜に
穴を開けて、
そこから出している
鬼より恐ろしい
毛深いイシン中隊長は
甲冑の上に着ている
鎖帷子から
じゃらじゃらと音をたてて
今の状況に
意識の耳を澄ませて
何かを聞こうと、
しばらくジッとしていたが
「チャンスンの小隊は
あそこに見えている部屋を破壊しろ。
どこかの結界が
破けているようだ。
入れるはずだ。
行け。
残った者はあそこにいるのを切れ。」
ガリレ博士達を指さして命じた。
チャンスン小隊長が
自分の隊を引き連れて
建物のほうへ走って行くと、
イシン隊はサッと攻撃体制に入った。