第118話 塞がれた出口
ザクザク突き刺さる重苦しい強いエネルギーが
いっぺんに二人めがけて襲い掛かかって来た。
イタチはガタガタ震えて今にも気を失ってしまいそうなサホミを
後ろにかばいながら
油断なくジリジリと少しづつ門のほうへ移動して行く。
「ぐぇへへへへ、逃げようったってそうはいかねえ。」
「覚悟してもらおうか。」
「二度と逃げようなんて思わなくさせてやるぜ。」
口々に脅す言葉をはいているが、
単なる脅し文句ではない。本気だ。
瞬く間に鬼の形相をした連中に
出口はガッチリ固められて、
イタチとサホミは取り囲まれてしまった。
「グッフフフフ、これで逃げ道はなくなったのう。」
これから始まる集団リンチへの期待に
異常な興奮と快感に酔いしれて
全体に狂気が渦巻き始めた。
それぞれの体から爛れた淫光が
バチバチッと放電して、
そのたびにモワーッと甘ったるく腐った臭いが充満した。
それにしても嫌な臭さだ。
取り囲んでいる者達は
玩具を弄ぶように二人をいたぶって、
ジワジワと恐怖感を煽って来る。
「さあ、どういうようにしてもらいたいか。
どんな殺され方がご所望かな。」
相手はこのひ弱な相手に
絶対的な勝ちを確信して馬鹿にし切っていた。
甲冑を着けて髪の毛が逆立ち、
牙が生えた狂人集団が
無力な二人を木っ端みじんにしようと間合いを詰めて来た。
イタチは身を沈めて身構えた。
「うひひひひ、構えだけは立派だのう。
見かけだけじゃ通用せんがの。」
ナメきって顎を上げ、鼻で笑ったが、
急に真顔になると
「覚悟はいいな。いくぞ。」
正面で嘲笑っていた男が目を据えて
ゆっくり刀を振り上げた。
まわりにいる鬼達から一斉に歓声と狂笑が沸き上がった。
「いっぺんに殺してはもったいないのう。
ジワジワ殺してやるとするか。」
またドッと笑いが上がった。
その男は力で一目置かれているのであろう。
周辺にいる者達は一歩引いている感じだ。
男はイタチに一瞬の隙を感じて
振り上げていた刀を振り下ろした。
瞬間、目の前にいたイタチがグラッと揺らめいたように感じた。