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視える王女と幻影騎士  作者: 音羽 雪
7/7

第六話

お久しぶりです^^;

 


 夢を見た。

 私は魔法が使えていて。

 誰かにとても大切に思われてて。

 私もその人が大切だった。

 懐かしい感じのする夢。

 これは過去のことなのだろうか。

 これが過去なら、幸せな時も夢から覚めるように消えていくのだろうか。



 ノックの音と、ノアの声。


「殿下、起きていらっしゃいますか」


 現実に引き戻される。


「はい」

「急いで支度をよろしくお願い致します」


 寝起きでぼんやりする頭でノアの言っていることを反芻する。人目があるから敬語なの?


「こんな、早くに何かあったのですか?」

「陛下がお呼びです」


 眠気なんて吹っ飛んだ。お父様が?こんな朝からの招集ってことは急ぎの案件か。


「隊服も持ってきました。入っても?」

「どうぞ」


 隊服で行かなければいけない。

 ということは、月光隊に関わること?ますます心当たりがない……。


「すみませんが、少し外で待って下さい」

「わかりました」


 寝間着姿を見られた恥ずかしさを意識している場合ではない。早着替えして、すぐ外に出る。


「待たせてすみません」

「いえ」

「隊服ですし、走れますよ?」

「では、少し走りましょう」


 最近、自然に喋っていたから、変な感じだ。でも周りには人目があるので、仕方ない。

 とりあえず、宮殿の廊下を走る王女は初めてではないだろうか。

 人目を集めてしまうのはもう仕方がない。


 ☆


「陛下、ただいま参りました」


 そう言って膝をつく。いつもの王女の礼ではなく、臣下としての礼をとる。

 床に膝をつくのは初めてだった。


「フィオネ?」


 お父様は驚いていた。


「私は隊服を着ています。すなわち月光隊の隊員です。当然の行為と御受け取り下さい」

「わかった」


 そんなことより朝から呼び出されたことが気になる。


「何の御用でしたか?」

「そうだったな」


 ノアの声にお父様は少し苦笑する。

 でも、それは一瞬だった。


「氷の神殿の氷が溶けている」


 前とは違って断言だった。


 ☆


 すぐに月光隊の隊舎へ急いだ。

 先程の言葉を思い出す。

『フィオネ、課題を急がなくてはならなくなった。今日明日中に出立することを命ずる』

『わかりました』

『セルジオン、フィオネを頼む』

『御意』

 急ぐことを余儀なくしなければならないほどの異変ということ?


「皆起きているか!!!!」

「まだ、眠ってる奴もいます!」

「起こすぞ!!」

「ただいま起きました!!!」


 皆ドタバタと支度する。


「お嬢、隊長なんかあったのか?」


 少し迷った。


「それを今から隊長が話すわ」


 ここで一番偉いのはノア....ううん、隊長だ。

 暫くして皆集まった。


「氷の神殿に今日明日中に行かないといけなくなった」


 皆がどんな反応をするのか心配だった。

 私の所為で、こんな得体の知れない任務を果たさなければならないから。私を疎ましがったりしないだろうか。

 皆が笑ってくれなくなったら...。

 怖い。

 でも、そんな気持ちはすぐに打ち消された。


「本当ですかーー!!!!!!!」


 はい?嬉しそう?でも、涙してる人もいるね?


「よっしゃ〜!」


 嬉し涙を滝のように流していた。

 嬉し涙なんだ。というか、嬉しいんだ。


「隊長っ!ありがとうございますっ!」

「原因はフィオネだから、フィオネに言っておけ」

「姐さん!うちの隊に来てくれてありがとうございます!!!」


 私を姐さんって呼ぶのはサージュだ。

 凄く驚いた。

 私を疎ましがらないんだ。

 私はここにいていいんだ。

 少し涙が出そうだったけど、目元を拭った。


「姐さん?」


 心配気にこっちを見てる。

 嬉しいことを伝えたくて、笑って言った。


「私こそ、ありがとう」


 ....??

 何故皆顔を赤くする?


「そこらへんにしとけ」

「ノア...隊長」

「フィオネ、出立は明日にするか?」

「今日行きます」


 お父様が呼び出すほど緊急時。

 一日でも、早く終わらせなければならない。


「今日行くべきです」


 繰り返した。


「いいが、フィオネは大丈夫か?」

「大丈夫でしょう」


 私が言う前に言ってくれた人がいた。


「副隊長⁉︎」

「キース⁉︎」

「昨日、木刀振ってましたしね」

 見てたんですか!!!!!!!

「結構目立ってました」

「ええ⁉︎」


 振り方分からずに振ってたのに!

 恥ずかしい。

 穴があったら入りたいと思う人の気持ちがよく分かる。でもここに穴あいてるわけないし。自分で穴掘りたい。


「じゃあ、出立の準備するぞ」


 穴に埋まってる時間はない。急がなくてはならないのだから。

 いざ氷の神殿!!............何か一気に緊張感が霧散した気がする。


 ☆


 氷の神殿に着くのに時間はあまりかからなかった。

 普通なら、氷の神殿は入口にも氷がある。氷の神殿の氷は簡単に溶けるものじゃない。

 真夏でも、炎魔法でも溶けない。


「入口の氷が...!」


 私だけでなく皆も驚いている。

 入口の氷が溶けていた。中に入っても、寒いという程度ではなかった。涼しいという程度。中も少し、氷が溶けている。


「最下層まで降りるか」


 氷の神殿は地下に祭壇がある。

 祭壇で異変がある確率が高い。

 でも、氷の神殿は危険だ。

 普通、神殿はその属性を持つ神官が治めていれば危険はない。他の神殿はそれぞれ神官達が治めてくれている。

 だけど、氷魔法を使える人間は珍しい。今の神官には氷魔法を使える人間がいない。だから、ほとんど管理されていないのもあって幻獣も発生しやすい。


「ウチには幻影騎士がいますから大丈夫ですよ」


 不安そうな顔してたのかな。


「幻影騎士ってたしか、」

「俺のことだな」

「ノア!」

「とりあえず降りるか」

「...そうだね」


 コツコツコツ

 階段になっている地下へと向かう道。

 音が響く。


 ある時気付いた。

 霊が見えない。

 ジークに呼びかけても答えは無かった。


 ☆


 氷の神殿は入った瞬間から寒い。体は炎魔法で温める。下の方に降りていくともっと寒くなっていくので強めるしかない。

 かなり氷がとけてしまっている。

 それにフィオネの様子もおかしい。

 最初は少し話していたり、目を擦ったりしていたが、今は声も出さない。


「フィオネ、大丈夫か?」


 返事はない。

 そのままどこかへ行ってしまいそうで、フィオネの腕を掴んだ。

 瞬間、

 周りの人間は消え、


 二人だけになった。


 フィオネは意にも介さない様に進む。焦りに駆られ、強引に振り向かせる。

 いつもは綺麗で澄んだ青紫色の目が、美しくも妖しいすみれ色になっていた。


「フィオネ!!」


 声が反響する。

 フィオネが目を丸くした。

 瞬く間に青紫色の目に戻る。

 ほっとした。抱き寄せて、細い首筋に顔をうずめる。胸焼けしそうに甘いのに心地よく感じるフィオネの香り。少し早まったフィオネの鼓動も感じる。とりあえず、フィオネは無事だ。

 そのことにほっとした。


 ☆


「フィオネ!!」


 びっくりした。

 急に抱き寄せられて、驚きは大きくなった。ノアの髪が頰に当たってくすぐったい。

 .........ノアの髪⁉︎

 ノアが首筋に顔をうずめている。

 暫く硬直していた。でも状況が状況。ドキドキしている場合ではない。平常心!頑張るんだ私!


「あのー、ノア?」

「なんだ」


 ノアが顔を上げる。

 近いって!!

 私の平常心を試してるんですか。赤くなっている顔を自覚しながらも、ノアが目を覗き込んでくるので目を逸らすのが憚られる。


「ここ、どこ?」

「さあな」

「えぇ!!!!」

「フィオネの腕を掴んだ瞬間いきなりだからな」


 私、何してたんだ。

 記憶が曖昧だ。


「どこらへんでしょう」

「大分神殿に近いな」

「それは分かるんですね」

「寒さが強まっているからな」

「入口からずっと涼しいですよ??」

「は⁈」

「涼しいですけど...」

「普通は魔法で温める」

「私使えないよ⁈」

「他に異変は?」

「いえ…」


 心配させない様に何も言わない。


「目は?」

「え?何で知ってる、」

「やっぱりか」


 私の馬鹿ーー!!!!結局バレてるんじゃん。心配させたかなぁ。


「目、擦ってたし..」

「たし?」

「腕掴んだ時目がすみれ色だった」

「え」

「大丈夫か?」


 え?それは不思議。でも周囲よ溶けかけの氷に映る私の目はどう見てもいつも青紫色。それに目を擦っていた原因はそれじゃない。


「霊が見えなくて……」

「いないじゃなくて?」

「うん。ジークも出てこない……あと、ノアに呼ばれるまでの記憶が思い出せない」

「操られてたのか?」


 覚えてない。不快感はなかった。

 私はここに初めて来た。

 でも、これは夢で見る景色と同じ。


 私はここに初めて来たのではないとしたら?


 本当に大切な人をなくした?


 私が、あの子を消してしまったなら。


「進もう」

「本当に大丈夫か」

「うん」


 コツコツコツ

 足音が響く。


「ねぇノア」


 私は立ち止まって声をかけると、ノアも歩くのを止める。普通なら、私の考えはありえないことだ。だけど、これが何かに関係あるのではないかという予感がある。


「私、ここに来たことあるのかも」


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