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八男って、それはないでしょう!   作者: Y.A
みそっかす編

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第67話 野外炊飯

新作「誰か、前世が凄腕の機動兵器操縦者である私に平穏を!」が連載中です。

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同じくロボット物です!

「(仮題)異世界で死にかけた少年と入れ替わった独身アラフィフサラリーマン、スキルが『絶対無敵ロボ アポロンカイザー』だった」

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「ふう……。今日の成果は悪くないな」


「そうですね。魔の森に稼ぎ場所を変えてよかったですよ」


「本当だよな。あのクソ領主、大した成果も得られない魔物の領域なのに、高い税を取りやがって」


「あそこで活動していた冒険者たちは、みんな逃げ出しましたけどね」


「稼げないのに、税が高いからな。一人も冒険者がいなくなって冒険者から税を得られなくなって家臣に当たっているらしいぜ。バカにつける薬はないよな」


「冒険者は移動ができるってことを、あの貴族様は知らなかったのか、最初から頭になかったのか。田舎貴族ってのは、お山の大将が多いから」





 俺たちは、とある貴族の領内にある魔物の領域で冒険者として活動していたんだが、そこにはお金になる魔物や採集物が少なく、そのくせ領主が強欲で高い税を課すので、我慢できずに引っ越してしまった。

 どうして成果の八割を税で納めないといけないんだよ。

 頭がおかしいんじゃないかって同業者たちと憤慨したものだが、それならそんな田舎領地からはオサラバってことで、俺たちはバウマイスター辺境伯領へと移動した。

 バウマイスター辺境伯領には、魔の森という稼げる魔物の領域があるからだ。

 他の冒険者たちもそれに続き、今頃あのバカ貴族は、自分の領地から一人残らず冒険者が消えてしまって後悔しているはずだろう。

 確かに領主は自由に税をかけることができるが、冒険者だってどこの貴族領内で活動しようと自由なんだ。

 法外な税をかければ、他に逃げ出すくらいの想像はしてほしいものだ。

 新たな活動拠点である魔の森は、これまでに見たことがない魔物が多数出現する。

 だから危険だし、実力がない冒険者にとっては辛い場所かもしれないが、実力がある冒険者からすれば、大きく稼げる素晴らしい場所だった。

 税が安いってのもいい。

 領主であるバウマイスター辺境伯様は、安い税で優秀な冒険者を多数魔の森に呼び寄せ、税率の低さを成果の多さで補っていた。

 魔の森に隣接するようにある宿場町には魔導飛行船の港も完成し、短期、長期滞在を問わずに大勢の冒険者たちが暮らし、大いに賑わっていた。


「ビトー男爵も、バウマイスター辺境伯様を見習ったらいいのに」


「あの人に、バウマイスター辺境伯様のやり方を理解できるかね?」


 税金を高くすれば沢山税収を得られると、信じて疑わない人だからな。

 襲爵の儀式を受ける時以外はずっと領内で暮らしていて、誰も奴に意見しないから、世間知らずのバカ貴族になってしまったんだろう。

 その机上の空論は、税を支払う冒険者たちが逃げ出したことで崩壊したわけだけど。

 税率の低さを、冒険者たちに多くの獲物を狩らせることで補うという、バウマイスター辺境伯様の考えを、彼は死ぬまで理解できないだろう。


「もう二度とビトー男爵とは関わらないし、俺はビトー男爵領出身でもない。このままビトー男爵領が衰退しても、なんなら滅んでも仕方がないさ。それよりも飯にしようぜ」


「すぐに準備しますね」


 魔の森のいいところは、隣接する宿場町に戻ると美味い飯が食えるところだが、俺のパーティは現在絶好調だ。

 食事の時間を節約してさらに多くの成果を得たいので、携帯食料を食べながら、火を起こしてお湯を沸かし、それでマテ茶を淹れて終わりという食事内容だった。

 しばらくはこんな感じの食事で野宿だが、依頼を全てこなしたら、宿場町の一番いい宿に泊まり、ご馳走をたらふく食べるとしよう。

 みんなベテランでそれがわかっているから、静かに焼き固めた黒パン、干し肉、チーズ、マテ茶という質素な食事を取っていた。


「せっかく魔法の袋があるから、それを利用してもっといい飯を食べてもいい気がするけどな」


「時間が惜しいし、それだと気が抜けてよくないだろう」


 冒険者として活動している時はストイックに暮らし、成果物を売却してから豪勢にやる。

 オン、オフの切り替えがしっかりできるからこそ、俺たちのパーティは魔法使いがいなくとも大きな成果をあげてきたのだから。


「僕も、それを変えるのはよくないと思う」


「仕事が終われば、結構豪勢にやってるからな」


「いつも豪勢にやっていたら、豪勢じゃなくなるからな。普段はこのくらいでいいのかもしれないな」


 俺たちのパーティは、魔法使いがいないのに、汎用の魔法の袋を購入するほど稼げている。

 下手に生活パターンを変えた結果、思わぬ不覚を取るかもしれないので、仕事中の質素な生活をやめる気は、少なくとも俺にはなかった。


「慣れれば、この食事も悪くないものだ」


「所詮は携帯食料だから高が知れているが、今の携帯食料は不味くはないからな」


 冒険者が野外で活動中に食べる携帯食だが、このところだいぶ味がよくなっていた。

 昔の携帯食料はとにかく美味しくなかったし、ものによっては腐っていないかよく確認しないとお腹を壊すようなものも多かったから、それと比べたら格段の違いだ。

 宿場町で購入できる携帯食料は、主にバウマイスター辺境伯領産の品だが、さすがは食に拘るバウマイスター辺境伯といったところかな。

 携帯食料まで美味しくしてしまうなんて。


「そんなわけで、以前よりもはるかに美味しいんだ。とっとと食べ終えて、午後の狩猟を……」


「……」


 仲間たちに早く飯を食べるように言った瞬間、とても美味しそうな匂いが漂ってきた。

 ここは魔の森を出たばかりの無人の草原で、飯屋なんてないはずだが……。


「リーダー、あそこ!」


 槍使いのバートが指差した場所では、同業者たちが食事を作っていた。

 よく見ると、最近安くなって冒険者たちに大流行している魔導コンロを複数使って煮炊きをしているようだ。


「随分と凝ってますね、彼らは」


「我々は冒険者だ。狩猟と採集に集中すべきで、野外でも食事に凝るなんて本末転倒だな。新人冒険者か?」


 若い冒険者たちが冒険者として活動を始めると、つい楽しくて狩猟と採集以外のことに熱中してしまうケースは多い。

 遊びたい盛りなので仕方がないが、そこで冒険者としての仕事に集中できるかで、将来が大きく変わる。


「本当は注意してもいいんだが、余計なお世話だってキレられそうだからな」


 なにより、冒険者はすべて自己責任だ。

 若い頃に遊んでばかりだった冒険者が、中年以降に困るなんて話は珍しくない。

 可哀想だが、自分で気がついてもらわないと。


「しかしまぁ、あの若者たち……そうでもないか?」


「中年男性も二人……って! あの人たちは!」


 ブライヒレーダー辺境伯家の筆頭お抱え魔法使いであるブランターク殿と、あの大柄で筋肉質な人物は、王宮筆頭魔導師のアームストロング子爵様ではないか!

 どうしてそんな有名人たちが、魔の森に隣接した草原で自炊をしているんだ?


「リーダー、もしかして魔の森でなにかあったんですかね?」


「そんな話は聞いていないけどな」


 魔の森でなにか問題があれば、俺たちにも知らされるはずだ。

 つまり彼らは……。


「あの二人はいまだ正式に冒険者を辞めておらず、今も時間があれば冒険者として活動していると聞く。今がそうなんじゃないか? それよりもだ!」


 ビッグネーム二人と一緒にいるのは、魔の森を有するバウマイスター辺境伯家の当主であるバウマイスター辺境伯様ではないか!

 俺は以前、彼を見たことがあるのですぐにわかった。


「噂どおり、本当に冒険者としても活動しているんですね」


 バウマイスター辺境伯様は、騎士の八男から己の力だけで辺境伯へと成り上がった。 

 優れた才能を持つ魔法使いでもあり、帝国内乱で戦功を挙げ、魔族とも戦い。

 冒険者としても、多くの実績を挙げている。

 我々もそれなりに名の知れた冒険者だが、バウマイスター辺境伯様には遠く及ばない。


「そんなバウマイスター辺境伯様が、野営なのに凝った食事を作っているのは、貴族様だからでしょうかね?」


「かもしれないな」


 バウマイスター辺境伯様たちの周囲を見れば、大勢の女性冒険者たちもいたが、多分彼の妻たちだろう。

 冒険者から成り上がったバウマイスター辺境伯様は、妻たちと冒険者として活動することが多いと聞く。

 そのせいで、どうにかバウマイスター辺境伯家と関係を結ぼうと考えている貴族たちは手を出しにくいとか。

 そりゃあ普通に考えたら、貴族令嬢に狩猟なんて無理だからな。


「それにしても、なにを作ってるんですかね?」


「さあな」


 冒険者として野外にいても、食事の支度に手間をかける貴族様か。

 正直どうかと思うが、いい匂いが漂ってきたし、気になるので少し様子をうかがってみるか。

 ただ、冒険者の食事は簡単に用意できるものがいいという俺の意見に変わりはない。

 優れた冒険者なのに、バウマイスター辺境伯様も残念なことをしているなという、俺の気持ちに変わりはなかった。




※※※※




「ヴェル、それは?」


「猪の脂で作ったラードだよ。解体して余った猪の脂で作っておいたんだ」


「ヴェル、その鍋重くない?」


「これには、軽量化の魔法が常にかかっているから大丈夫」


「その大きなお鍋、魔道具だったのね……」


「重くないから、いくらでも自由に振るえる大中華鍋。これがあれば、焼く、煮る、炒める、揚げると。なんでも大量にこなせちゃうのだ」

  

 今日は、久々にみんなで魔の森に狩猟に来ていた。 

 午前の成果はなかなかのものだった。

 お昼ご飯を食べてから午後も魔物を狩る予定なので、急ぎお昼を作らないと。

 こういう時、多くの冒険者たちは携帯食料のみを食べ、お湯を沸かしてお茶を飲む人は手間をかけている方だ。

 その携帯食料も、俺が頑張って改良してみたので大分マシになったけど、俺からすれば緊急時しか食べたくない代物だ。

 俺には魔法の袋があるので、魔族の国から輸入した魔導コンロを複数並べて調理を始める。

 やはり、食事は出来たてで温かい方がいいからな。


「あらかじめ作っておいた猪骨スープと、おかずが入った鍋を温めてと……」


 そして、ベッケンバウアー氏に開発を依頼した、軽量化機能つき大中華鍋でチャーハンを作る。

 鉄製の大きな中華鍋だが、軽量化魔法が常にかかっているので、軽々と振るうことができる。

 これにより、体への負担も小さく、一度に大量のチャーハンが作れるのだ。


「……せっかくの魔道具開発力の無駄遣い……」


「エル、そういうことを言うと、チャーハンをやらないぞ。魔道具とは、人々の暮らしに役に立つことこそが重要なんだ」


「間違ってはいないけど……」


 魔導コンロの上で大鍋を置き、そこに自家製ラードを入れて熱していく。

 ラードが溶けて十分に熱されたら、そこにホロホロ鳥の卵を溶いたものを入れて半熟煎り卵を作り、さらに大量のご飯を入れる。


「あとは、ひたすらに鍋を振るうのみ!」


 お玉の背でご飯を解しながら振るい、米粒一つ一つに脂をコーティングさせ、パラパラのチャーハンを目指す!

 チャーハンの好みにも流儀があるが、俺は断然パラパラ派であった。


「ゆえに、ただひたすら鍋を激しく振るうのだ!」


 魔導コンロの火力を最大にして、激しく大中華鍋を振るう。

 だからこそ俺は、この中華鍋に軽量化の魔法がかかるようにした。

 鍋が重たいと、調理をする時に疲れるし、体を痛めるからだ。


「塩、刻みチャーシュー、刻みネギも入れて、ただひたすら鍋を振るう! ブランタークさん、導師、頑張って!」


「なぜ俺なんだ? 辺境伯様、俺はこれまでろくに料理なんてしてこなかったんだが……」


 ブランタークさんはベテラン冒険者だが、料理経験なんてせいぜいお茶を飲むためのお湯を沸かしたくらいだろう。

 なによりこの世界では、いまだに料理は女性がするものという風潮がある。


「(そんな風潮を破壊していく、新進気鋭の貴族バウマイスター辺境伯ってね)ブランタークさん、娘さんに料理を作ってあげると喜ばれるし、好かれますよ」


 料理することを渋るブランタークさんに対し、ここで切り札を投入する。

 ブランタークさんが料理をできるようになり、たまに家で娘さんに作ってあげれば、とても喜ばれるとアドバイスしたのだ。

 この切り札は、一人娘をこよなく愛するブランタークさんには効果てきめんだろう。


「まあ……。たまにはいいよな、料理も。人生、何事も経験だしな」


 ブランタークさんはチャーハン作りに集中するが、基本的に器用だからか、最初からかなり上手だ。


「ぬぉーーー! また溢れたのである!」


 そして、なぜか自ら志願して中華鍋を振るっている導師だが……下手だな……。

 とにかく不器用で、鍋の中のチャーハンを零しまくってしまうのだ。

 導師はブランタークさんと真逆で、とにかく不器用だからな。


「もったいない、代わる」


 それを見かねたヴィルマが導師の大中華鍋を奪い取ってチャーハンを作り始めるが、さすがは上手だな。


「俺もやろうか?」


「……いいや」


「なんでだよ!」


 エルも、導師と同類の匂いがするからだ。

 鍋を振るう度に大量に零されると、チャーハンが勿体ない。


「最後に鍋肌に醤油を垂らしてからよく混ぜ、これでチャーハンの完成だ」


 焦げた醤油の香ばしさが堪らない。

 まだまだ精進が必要だが、十分合格点を出せるパラパラのチャーハンを作れるようになった。


「これをお皿に盛り付ける」


「美味しそうだね」


「ルイーゼ、まだ完成じゃない。このチャーハンの上に、事前にエリーゼと一緒に作っておいた、猪の角煮を豪快にのせる」


 トロトロになるまで煮込んだ猪の角煮だが、鍋ごと魔導コンロで温められており、それを崩れないようにチャーハンの上にのせていく。

 

「これで、『猪の角煮のせ、ホロホロ鳥の卵チャーハン』が完成だ! 同じく事前に作っておいたスープだけど、猪の骨から出汁を取った猪骨スープで、これも美味いよ」


 猪の骨だが、臭みを取るために香草やミズホ産の生姜を入れて下茹でをしたあと、半日以上煮込んで猪骨の旨味をとことん煮出したから、猪骨の濃厚な旨味を楽しめるはずだ。


「これにて、本日の昼食は完成だ」


 今は狩猟の合間の野外自炊だから皿数は少ないが、その分美味しさを追求したメニューとなっている。

 同時に栄養もバッチリ取れてお腹も満たされ、午後からの狩猟中にお腹が空くこともないはずだ。


「じゃあ、早速食べるか」


「「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」」」


 完成し、全員に配膳された料理を、みんなで食べることに。


「美味しいですね、あなた」


「美味いのである!」


「焼いたご飯がパラパラで、上にのっているカクニも柔らかくて美味いな」


「実に上手くいった」


 エリーゼたちも、導師とブランタークさんも、チャーハンを絶賛していた。

 これで、いつでも野外で美味しいチャーハンを作れる。

 軽量化機能つき大中華鍋の開発が一番大変だったけど、ベッケンバウアー氏は暴走さえしなければ優秀な魔導技術研究者だからな。

 ご飯は、事前に炊いて魔法の袋に入れておけば炊飯の手間も省けるし、冷や飯の活用もできて一石二鳥だ。


「美味いけど、カクニは作るのが大変そうだな」


「角煮でなくても、魔物の肉にタレをつけて焼いたものをのせて、焼肉チャーハンにする手もあるさ」


「それも豪勢で美味そうだな」


 冒険者という、よく体を動かす人たちが効率よくカロリーと栄養を摂取できて、それでいて美味しく、お腹が満足する。

 それこそが、角煮チャーハンのいいところなのだから。


「お野菜をもっと取った方がいいかもしれませんね」 


「そこが今後の課題かな」


 冒険者が野外で食事を作る際に、野菜の摂取を考えると割とハードルが高い。

 俺には魔法の袋があるので、事前に作っておいたサラダなりを出せばいいのだけど、他の冒険者には難しい。

 せいぜい、野草をスープに入れるくらいか。

 エリーゼが事前に作っておいたサラダを出すと、美容に気を使っている女性陣は積極的に食べ始めた。

 角煮チャーハンは少し脂っこいので、それを緩和する効果も期待できそうではある。

 俺も健康のために食事バランスには気を使っているので、普通にサラダを食べる。

 ところが、俺以外の男性陣は……。


「エル、野菜を食べた方がいいぞ」


「屋敷に戻ったら食べるよ」


「エルさん、お野菜はしっかり食べた方が健康にいいですよ」


「わかったよ、ハルカさん」


 俺に言われただけでは野菜を食べなかったのに、嫁のハルカに言われたら野菜を食べ始めるエル。

 見事に尻に敷かれているな。


「俺も、家に戻ってから……」


「娘さんの教育によくないですよ。お父さんがお野菜を食べないと」


「そうかな? まあ、俺も娘のためには長生きしないといけないからな」


 ブランタークさんも、これまでは野外で食事をとる時に栄養バランスなんて気にしなかったはずだが、イーナに娘さんのためにもと説得されたらサラダを食べ始めた。

 ブランタークさんに言うことを聞かせるには、娘さんの話をするのが一番効果的なようだ。


「……某は、野菜などで胃を埋めるくらいなら、好きなものを好きなだけ食べるのがポリシーである!」


「伯父様にも家族がいるのですから、健康に気を使うべきです」


「某は大丈夫なのである!」


「さあ、サラダを取り分けますからね。ヴェンデリン様特製の、ミズホ産の梅干しを使ったノンオイルドレッシングが美味しいですよ」


「むむむっ、悔しいが野菜のくせに美味いのである!」


 さすがの唯我独尊な導師も姪のエリーゼには弱く、取り分けられたサラダを食べていた。

 俺が作ったノンオイル梅干しドレッシングだが、アルテリオが商品化して体重を気にする人たちによく売れているから、美味しくないはずがないんだよな。


「「「「「「「「「「ご馳走さま」」」」」」」」」」


「午後からも頑張って、魔の森で狩猟に励もうか。最近、ゾヌターク共和国に魔物の肉がよく売れてるそうで、全然足りないらしいから」


「魔族は全員が魔法使いなんだから、自分で狩ればいいのに……」


 エルの言い分は尤もだが、無理なので仕方がない。

 魔法使いなのに狩猟をしない人が多い魔族であったが、魔物の肉がジビエ扱いとなっており、これがよく売れるようになっていた。

 自分で狩猟をして、締めて解体するのが無理だから、人間から輸入品を買う。

 魔族は現代人のようなものだから、たとえ魔力があっても、狩猟は嫌ってことだ。

 そのおかげで、その情報を掴んだバウマイスター辺境伯家はバッチリと儲けさせてもらっている。

 魔の森からの成果にかける税を引き下げ、残りの成果もバウマイスター辺境伯家が高く買い取り、それをゾヌターク共和国に輸出する。

 他の貴族たちにも追随する動きがあったが、向こうは文明国なので肉の衛生管理については厳しい。

 今のところ、合格点を貰ったのはバウマイスター辺境伯家だけであった。

 輸出の利益もあるから、冒険者に課す税金が低くても全然問題ないわけだ。


「その他の採集物も売れるから、頑張って集めよう」


「魔族たちの住む大陸にも魔物の領域が広がっているのに、自分で集めないのは不思議ですわね」


「自分で集めた方が、お金もかからないのに……」


「みんな魔法使いだから、人間よりも沢山集められるのに……」


「不思議ですよね」


 カタリーナとアグネスたちは、現代ナイズされた魔族のことがよく理解できないのだろう。

 あれだけの魔力を秘めていて、同じ大陸に広大な魔物の領域があるのに、自分で魔物や採集物を得ず、わざわざ遠い国からお金を払って輸入なんてしているのだから。

 魔族も現代ナイズされているから、典型的な3K仕事である冒険者になる人が少ないという事情もあった。


「狩猟と採集を嫌がる魔族というのは、実に不思議な存在である!」


 現代日本人も狩猟をしている人は少ないので、それと同じようなものなんだけど。

 いわゆる文明病?

 ゾヌターク共和国は大規模な牧畜業が盛んで、実は人間もゾヌターク共和国から家畜の肉を輸入するようになっていた。

 高級品扱いだが、人間が育てた家畜の肉は美味しいのだ。

 俺からすれば、『牛の霜降り肉って久々に食べたな』って感覚だった。

 100グラム100セントくらいするので、神戸牛を輸入して食べるアメリカ人のような感覚か。

 一方魔物の肉は、種類によっては安かったから、割と量は出ているイメージだ。


「沢山魔物の肉を輸出すれば、その分魔族の魔導具が買える。頑張ろう」


「おおっーーー!」


 午後も、魔の森でいつもの仲間たちと魔物を狩り、採集物を集めて多くの成果を得ることができた。

 俺もバウマイスター辺境伯として忙しいので次がいつになるかわからないが、それまでに野外での自炊で美味しく食べられる料理の研究をしておかないと。



※※※※



「……」


「リーダー、向こうは好き勝手に料理をしていましたけど、実績は俺たちよりも圧倒的に上ですよ」


「無理に携帯食料に拘らなくてもいいのでは?」


「……魔導コンロ、買うか……」


 ちくしょう!

 あんなのを見ていたら、俺たちも美味しそうな昼飯を作りたくなったじゃないか!

 急ぎ魔導コンロを入手すべく、俺たちは午後の狩猟と採集を終えると、宿場町にあるお店へと駆け込んだ。


「あれ? なんかえらく安くなってないか?」


 魔導具ってのは高いのが相場だというのに、いつの間にこんなに安くなったんだ?


「魔導コンロをお求めですか? 今なら『バウマイスター辺境伯様執筆! 魔導コンロを使った野外料理の作り方』の本が無料でついてきますよ!」


「これを見れば、素人でも料理を作れるんだな」


「料理の際に必要な調理器具は隣のコーナーにありますよ。一回揃えておけば長く使えます。特に、調味料や水の量を図る計量カップや計量スプーンは必ず買った方がいいです。素人が目分量でやると、味が薄くなったり、逆に塩辛くなりますから」


「なるほど……。基本的なものは全部揃えるか」


 これで俺たちも、野外で美味しい料理を作れるようになるだろう。

 さて、最初はなにを作ろうかな?

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― 新着の感想 ―
中年男性(風)冒険者三名の内訳を少し悩みましたが、いつものメンバーからエル氏が調理に加わらない状態なら三名だったのですね
魔法使い以外の冒険者が魔の森で料理したら危ないでしょうに。魔法の袋の容量も大きくないだろうから、出来上がっている料理を持って行くべきでしょう。 ブランタークさんはヴェルと一緒にい過ぎでは? 誰の家臣だ…
実演で購買意欲を煽るwww 人が楽しそうにやっているのを見ればそりゃ欲しくなるよな
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