その6
名古屋城の脇にある能楽堂はおこめ探偵事務所から歩いて5分程のお隣さんである。
だが雰囲気が雰囲気なので中のレストランに目を向けることが無かったのだ。
そこのレストランのランチがワンコインとは目から鱗であった。
一颯は友晴と共にレストランへいき日替わりランチを頼んだ。
ワンプレートのランチだがメインが大きなロールキャベツでサラダとサフランダイスが付いていてボリューミーな内容であった。
一颯は食べ終わると
「味も悪くなかったし」
良く知っていたな
と友晴を見た。
友晴は笑むと
「旅行雑誌に載っていましたので」
と答えた。
…。
…。
旅行雑誌。
一颯は目を瞬かせて
「そう、か」
と答え
「旅行雑誌も情報として網羅しているのか」
と心で感心した。
友晴はふっと笑うと
「山陰から名古屋ですから勝手がわかりませんので」
調べられる情報は全て調べます
と答えた。
一颯は「なるほど」と答え立ち上がると
「戻って情報の整理をするか」
と呟いた。
友晴は不意に一颯を見ると
「一颯さま」
少しお話が
と呼びかけた。
一颯は「ん?」と友晴を見て座り直すと
「なんだ?」
と聞き返した。
友晴は彼を見て
「坂路理沙のことです」
と告げた。
一颯は腕を組み
「坂路のことか」
と呟いた。
「益田が返せと言ってきたのか?」
友晴は「そうではありませんが」と前置きをして
「お役に立っているのかどうかと」
と聞いた。
つまり、役に立っていないのなら山陰へ戻すということだ。
一颯はそれに笑むと
「坂路は役に立ってる」
とスパンと答えた。
「俺はこういう性格だからな」
誰とでも協調してやっていける性格じゃねぇ
「だが坂路とは上手く行っているし…信頼もしてる」
居なくなると困る
友晴は驚いたように目を見開き
「そうでしたか」
出過ぎた真似をしたようですね
と答えた。




