その3
ピーは一颯の頭に戻ると
「ダイジョーブ、ダイジョーブ」
と鳴いた。
一颯は加子と耕作を見て
「賢い鳥なので恐らく二人を安心させようと鳴いたんだと思います」
すみません
と告げた。
加子はピーを見ると
「ありがとう」
とハンカチで涙を拭った。
瞬間に電話が入った。
犯人からである。
『声を聞かせる』
というと直ぐに声が響いた。
『お母さん、お父さん』
少女の声が響き
『娘は無事だ。金を置く場所は準備で来てからだ』
とプチンと切れた。
そしてすぐに
『金はどれくらいで用意できるか10分後の電話で知らせろ』
というと再び切れたのである。
加子は泣きながら
「はい、だから、葵を傷つけないで!」
と叫んだ。
耕作は携帯を手にすると兄の一郎に電話を入れて
「兄さん、3000万はどれくらいで…犯人に10分後に知らせるようにと言われて」
と告げた。
一郎はそれを受けると
「30分後に持っていく」
と答えた。
10分後の電話で加子は
「30分後にはこちらに用意できます」
と答えた。
「だから、葵に手を出さないでください」
犯人はそれに
『分った』
と答えると
『40分後に指示する』
と切った。
30分後に兄の一郎が車で到着し
「これでいいだろ」
と3000万の入ったバッグを渡した。
耕作は受け取りながら
「ありがとう、兄さん」
と答えた。
一郎は息を吐き出し
「手切れ金だ、返済する必要はない」
但しもう何があっても二度と連絡して来るな
「お前が何度も来て会社に変な噂が立つのも困る」
いいな!
「金の無心などもう二度として来るな!」
というと立ち去った。
一颯は携帯で録音しながら
「…なるほど」
と小さく呟いた。
耕作は加子と警察と一颯に鞄を見せて
「これで…娘を助けることが」
と告げた。
が、10分経っても犯人からの電話はなかった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




