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怪物
今、私は絶体絶命の状況にある。
恐怖で体が震えている。
その別世界からきた怪物の圧倒的な攻撃で、私の味方は全滅した。
私に残された武器はナイフだけだ。
思えば、この湖がすべての出来事のはじまりだったかもしれない。
十二年前のあの事件。
怪物が笑っている。
私は死を覚悟した。
その時、あの懐かしい男の顔が私の脳裏に浮かんだ。
もう、この世にはいない男。
その男は私に笑いかけながら、ある事を教えてくれた。
私がまだ十七歳の頃だ。
私は、一撃必殺の瞬間を狙うため、怪物との間合いをつめた……。