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持たざる者に幸あれ〜それでも生きる、ただ、強く〜  作者: BIGら部


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持たざる者に幸あれ---持たざる者

始めて書きました。

某作品の影響が半端ないです。

とりあえず書いただけなので続くかは分かりません(´・ω・`)


「我流剣術初伝―――雷(いかづち)」


一歩下がって切り下ろし牽制、大きく踏み込み横に一閃。放った斬撃は獲物をとらえ、獲物は轟音と共に地に伏した。


「ふぅ、ようやくこのレベルか…」


彼は森の中で1人小さく呟く。


「とはいえ、棒切れ1つで大木なぎ倒せれば十分か。」


愛用の武器である棒切れ『楓』を手に、倒れた大木を彼、烏原 光(からすばら ひかる)は見つめた。



光はリンデル都市郊外の森を現在の活動拠点としている。この世界には『神愧(しんき)』と呼ばれる力の根源が存在し、森の中にはその『神愧』が通常より多いとされている。人々はその『神愧』を生まれつき体内に持つ『愧心(きしん)』といういわば、動力炉に取り込み、身体能力の強化など、人外の力として使用することが出来る。そのような人々は『愧人(きじん)』と呼ばれ、世界の人口の9割を占める。だから光は森を拠点としている………という訳では無い。なぜなら、光は『愧心』を持っておらず『愧人』ではないからだ。『神愧』を感じることが出来ない光に森を活動拠点にする意味はほとんどない。どちらかと言えば、やむを得ず森を活動拠点にしているといった方が正しい。光のような『愧心』を持たない人たちは『持たざる者』として非難され、排泄物のような扱いを受ける。以前はリンデル都市を拠点にしていたが、そういった迫害に飽き飽きし、森に来たのである。




「そろそろ『剛力羅(ごりら)』が開催される季節か…この感じなら参加しても問題ないかな」


『剛力羅』。リンデル都市にて年に1度開催される武闘大会である。光はこの大会で優勝しなければならない。理由は単純。己の力を示す必要があるからだ。『剛力羅』への参加条件は学園関係者ではないこと。ただそれだけである。もちろん光は学園関係者ではない。そして、大会の上位16名には世界最強の学園として名高いリンデル愧人学園への入学の権利が与えられる。さらに、優勝者には、『剛力羅銀王(シルバーバック)』の2つ名のもと、特待生と同等の優遇を受けることができる。


「エントリーは当日するとして、それまでに武器を調達しておかなきゃなぁ」

「売ってくれるところがあればいいけど、なかったらこのまま『楓』でやるしかないか」




後日、リンデル都市。

商業区では武器を売ってくれないと知っている光は、スラム街で武器を探すことにした。


「スラム街には何度か来たことがあるけど、質はそんなに良くない割に値段は割高なんだよなぁ…最悪全財産が飛んで行くことを覚悟しないと」


実際にスラム街でものを買うとなると、商業区の5倍はするのが現状である。

ひとまず、スラム街ではそれなりに名の知れた武具屋に行くとする。


光が得意とする得物は特に偏ってあるわけではない。森の中の木で作れるものは全て作り、腕に磨きをかけ、その辺の警備隊よりは強いと自負している。が、敢えて挙げるならば刀だろう。しかしここは故郷である極東からは遠く離れたリンデルであるため、刀を取り扱っているかは怪しいところだ。


スラム街の商店に店名はない。店先に並ぶもので大まかに把握するしかないが、そこは、はっきりと武具屋だとわかった。

店内に並ぶものの中に刀は案の定なかった。


「一応店主に聞いて見るか」


「すいません、刀ってあつかってますか?」

「主は刀を求めるかや?」


かや?初めて聞く語尾に少し驚いたが、この言い回しは恐らく扱ってはいるが反応次第では渡すつもりはない、と言った感じか


「はい、どうやら店頭には並べていないので、もしあなたが所有しているならなにか特別なことがあるのですか?」

「主はいい感をしておるのぉ。その通りじゃ。わっちゃぁ刀を一振だけ持っとる。じゃが、主のような『神愧』の感じられぬものに売れるような安物ではない」


やはりそうきたか。


「確かに私は『愧人』ではありません。ですが、私はなんとしてもあなたのそれがほしい。なにかあると言うのですから尚更です。その刀のためなら全財産だって払うつもりです。」

「いくら払うというのかや?」

「そうですねぇ、あなたが商業区の商人たちを嘲笑うことができるようになるぐらいには」

「主は面白いのぉ。じゃが、嘘をつくものではありんせん。わっちゃ『愧人』じゃ。ちと『神愧』を使えば嘘などすぐにわかりんす。」


この反応は予想通り。問題はここからである。


「いいえ、嘘などではありません。確かに今はそのような大金は持ち合わせてはいません。しかし、これはあなたへの投資です。私は今年の『剛力羅』で優勝します。その暁には、あなたを専属の武器調達人に指名し、高額の資金を投資し続けましょう」

「馬鹿な話をする若造じゃ。優勝するなど、『愧人』ではない主にできるはずがないはずじゃ。それは主自身がよくわかるのではないかや?」

「いいえ、私は優勝します。そのために私は今ここにいます。あなたをねじ伏せてでもその刀を手に入れるつもりですよ。」

「ほぉ、主はわっちを見くびりすぎではないのかや?わっちゃぁ老いぼれじゃが、リンデル愧人学園の特待生だっだんじゃ。『剛力羅』でベスト4の実力者じゃ。主に勝ち目はありんせん。」


食いついた!こうなってしまえば実力行使しかないけど、貰った!


「構いません。敗北条件は戦闘不能、あるいは敗北宣言でよろしいですか?」

「ほんとにやるのかや?手加減はせんぞ?」

「決まりですね。あなたはぜひ、あなたの刀を使ってください。私はこの棒切れでやりますので。」

「『愧人』相手にただの棒切れとは主は本当の馬鹿なのかや?」

「ははっ、本気ですよ。こちらが勝ったらその刀を頂きます。私は敗北宣言をするつもりはないので、その時は殺してくれて構いませんので」

「主はやはり馬鹿じゃ。せめて楽に死なせてやろう」

「お心遣い感謝します。では、」


お互い腰を深く下ろす。

店主も流石『剛力羅』ベスト4と言うだけあって、すごい威圧である。しかし、光は何一つ動じていない。


開始の合図があるわけでもなく、お互い同時に動き始めた。


店主が一気に距離を詰め切りかかる。

店主の刀は老いを感じさせない鋭さだった。が、光には届かなかった。一撃で決めるつもりだった店主は驚きの表情をみせるが瞬時に切り替える。ここもさすがと言ったところだ。

しかし、光とて、同じである。店主の攻撃を避けると同時に『楓』を地面と水平に構え、思い切り踏み込む。


「我流剣術中伝―――駒沈(こましず)み」


左足を軸にしゃがみながら回転し、腰、膝の順に切りつける。しかし、店主はいとも簡単に一撃目を交わし、二撃目は軽く飛んで回避する。


ふっ。

光の笑い声が聞こえたかと思うと、


「我流剣術中伝―――追爪(おいづめ)!」


『駒沈み』の余韻で店主の足元を漂っていた『楓』を左足1つでバク宙すると同時に切り上げる。

さすがの店主も焦りを見せたが、すぐに落ち着き、危なげなくいなす。


着地と同時に攻撃に転じようとしていた店主は大きく目を見開く。そこには『楓』の剣先ならぬ棒先があった。


「我流剣術初伝―――針芯(しんしん)!」


バク宙の着地の反動を活かし力強く地面を蹴り突撃しながらの刺突。

店主は防御は間に合わないと判断し、『神愧』を腹部に集める。


バキャッッッ!!!!


砕けたのは光の『楓』の方だった。

それを確認した店主は不敵な笑みを浮かべ反撃の狼煙を挙げる。


「所詮棒切れだったようじゃのぉ!」


上段から刀を振り下ろす。確実に勝負がつく一撃だった。


「棒切れ?立派な武器ですよ!」


光は諦めていなかった。『楓』を手放さずに店主の一撃を迎え撃つ。


「我流護身術奥伝―――撫傾(なでがた)」


光は店主の斬撃を折れた『楓』の先端をちょこんと触れさせ、それだけで起動を逸らす。しかし、それは店主にとっては最悪だった。全身全霊で振り下ろしたため、そう簡単に刀の軌道を修正するのが少し遅れる。

光にはそれで十分だった。


「我流短刀術初伝―――甲角(かぶとづの)!」


腹部目掛けて全力の突き上げ。想い一撃が命中し、


バキッッッッ!!!!!


再び『楓』が折れた音だった。光は驚愕のあまり動けなかった。『楓』をへし折ったものは、店主とは関係ないものだった。


「持たざる者がうちのおばあちゃんに何してんくれてんの?殺すよ?ていうか殺すよ?」


そこには殺意の塊を纏った、ポニーテールの凛々しい女の子が笑顔で立っていた。

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