第二十話「聯絡」
空は、いつも通りだった。
曇りもなく、歪みもない。
ただ静かに、世界を覆っている。
その下で、三つの光が別々に動いていた。
セイリスは、祈りをやめたまま立っていた。
手はまだ胸の前にある。
形だけが残っている。
だが、そこに意味はもうはっきりしていなかった。
(私は、何を信じている?)
問いは消えない。
けれど、答えを求めることもできない。
そのとき――
遠くで、空気が揺れた。
航は、依頼の現場にいた。
効率は良かった。
想定通り。誤差も少ない。
「処理完了」
そう言えば終わるはずの案件だった。
だが、報告には載らない“違和感”が残っていた。
結果は正しい。
それでも、何かが噛み合っていない。
ヴァルクは、そのすべてを少し離れた位置で見ていた。
剣は抜かれていない。
ただ、空気の変化だけを追っている。
「……同じだな」
誰に向けた言葉でもない。
だが、確かにそうだった。
何かが“揃い始めている”。
その瞬間だった。
街の外れ、孤児院の裏手、討伐現場の境界。
三つの場所に、同じ“揺れ”が走る。
空間が、わずかに歪む。
それは敵でも災害でもない。
ただ、“形のないもの”が、世界に触れた瞬間だった。
セイリスが顔を上げる。
「……来る」
理由は分からない。
それでも、そう感じた。
航は剣を取る。
「異常反応」
ただそれだけを認識する。
そこに感情はない。
ヴァルクは、わずかに笑う。
「やっと“見える側”に来たか」
三人はまだ、同じ場所にはいない。
だが――
同じ“何か”を見ていた。




