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名も無き戦場  作者: 六花
灯火
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第十五話「剣のままで」

街の外れは、いつもと変わらない静けさだった。

風の音だけが、遠くから流れてくる。


ヴァルクはそこに立っていた。

依頼の確認は終わっている。

あとは片付けるだけだった。


戦う理由は、いつも同じだ。

生きるため。


それ以上でも、それ以下でもない。


剣を軽く握る。

重さは変わらない。

それが安心でもあり、違和感でもあった。


「……また、あの話か」


遠くで、誰かの声がした。

風に混ざって、はっきりとは聞こえない。


ただ、“噂”という言葉だけが、引っかかる。


戦場で気づいたら終わっていた。

一人ではないが、詳細が妙に一致している。


ヴァルクは一度だけ目を閉じる。


(くだらない)


そう切り捨てる。

いつも通りだ。


剣を振るう理由にはならない。


だが。


ほんの一瞬だけ、視界の奥に“何か”が浮かぶ。


――失ったもの。

――守れなかったもの。


すぐに消す。

そんなものは関係ない。


「行くぞ」


誰に言うわけでもなく、そう呟いた。


依頼は終わる。

街は何も変わらない。

自分も変わらない。


それでいいはずだった。


だが歩き出した背中にだけ、わずかな重さが残っていた。


それは剣では断ち切れない種類のものだった。

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