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ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
傷だらけの子供達
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ep.24 "少女と先生"

通りには、やはり誰一人いない。


よく目を凝らすと、至るところに

抉られたような柱の傷などの

争った後のような痕跡が残っていた。


アスノは何も言わず

ただ唇を噛みしめたまま歩き続けている。


やがて、曲がり角に差しかかったときだった。


「うわっ」


視界の外から

小さな影が飛び出してきてぶつかった

赤い髪の少女が尻もちをついた。


「あ、ごめん…大丈夫?」


僕は慌てて手を差し出す

少女はその手をつかんだが立ち上がろうとはせず

じっと僕の顔を見上げてくる。


次にその視線がゆっくりとアスノの顔へ移った。


気まずい沈黙が数秒続く

やがて、少女はハッとしたように瞬きをし言う


「おぬしら…見かけん顔じゃのう」


その喋り方は

この年頃の子どもにしては妙に年寄りじみていて

落ち着いていた。


見た目だけならどこにでもいそうな少女だが

普通ではない、不思議な雰囲気を感じる。


「あ…まあ、その…旅をしててさ

たまたま、この町に寄っただけなんだ」


僕がそう答えると

少女は少し間をおいてから言った。


「…今ので足をひねってしもうた

歩くのがつらい。家まで運んでくれんか」


その目はわずかに泳いでいて

何か企んでいる感じの言い方だった。


だがぶつかってしまった僕に非がある

結局、少女をおぶって

教えられた道を歩くことにした。


しばらく進むと一軒の家の前で

少女が「ここじゃ」と言った。


アスノが腰を落とすと

少女は軽々しく飛び降りる。


その動きには

さっき言っていた怪我人らしさはなかった。


「ま、中に入れ」


半ば強引な口調に僕らは思わず顔を見合わせた。


怪しいと言えば怪しい

けれど…町のことを知るには

話を聞ける相手は貴重だ。


言われるがまま

少女の家の中へと足を踏み入れた。


~~~~~~~~~~


部屋の中はきちんと片づけられた空間だった。


家具は机と本棚

それに簡素なベッドが二つほど

必要最低限のものばかりだった。


中へ入ると、メガネをかけた青年がひとり

椅子に腰かけて本を読んでいた。


「先生、旅人を連れてきたぞ」


先生と呼ばれた青年は

どこか育ちの良さを感じさせる人物だった。


こちらに気づくと

静かに本を閉じて立ち上がり

頭をかき、丁寧に頭を下げる。


「…初めまして。僕はカノレフと申します

カナが勝手に連れてきてしまったみたいで…

すみません」


先生と呼ばれているのは

この町で子どもたちに

勉強を教えているかららしい。


僕らもそれぞれ自己紹介をする。


「俺は双竜組のアスノ・ヤマモト…」


あ…


素性は隠したかったが

アスノが、見事に口を滑らせた。


いや…虎牙組の騒動を気にして

敢えて開示したのかもしれない。


「双竜…組…?」


先生とカナの表情が変わる

ロジェロが慌ててフォローを入れる。


「じ、じつはだな!

こいつ、自分のことを双竜組だと

思い込んでるだけでして…!

ガタイがいいから

そういう設定で生きてるだけなんだ…!」


どう考えても無理のある言い訳だが

ロジェロは汗を流しながら必死だった。


しかしカナは

じっとアスノを見つめて首を横に振った。


「いや…おぬしらからは

ただならぬ気配がしておった。

わしは真実だと見たぞ」


あっさり見破られてしまった

もう隠し通せない。


カナはぽつりと言う

「虎牙組のことは…聞いておるか?」


「うん…町の人から、少しだけ」


僕が頷くとカナはしばし黙り込み

何かを決心したかのような顔をし

そのあとゆっくりと口を開いた。


「旅の者よ…お願いがある。

虎牙組を…ゲイルを、止めてはくれんか」


ゲイル…?


聞き慣れない名前に眉をひそめると

先生が慌てたように制した。


「カナ、やめなさい。

見ず知らずの人に

そんな重い頼みをしてはいけない

困ってしまうだろう」


カナは不満そうに唇を尖らせ

子どもらしく駄々をこねるように身をよじる。


「でも…このままじゃ、ゲイルは…!」


先生はしばらく黙り込み

やがて観念したように小さく息を吐いた。


「隠しておくべきことなのかもしれませんが…」


そう前置きし、静かに語り始める。


「実は、虎牙組の頭…ゲイルという男は

カナの友達だったんです」


意外な言葉だった。


ゲイルはもともと

真面目で穏やかな青年だったという

喧嘩を好まず…むしろ争いを嫌う性格で

虎牙組のような組織には

似つかわしくないような男だった。


それでも虎牙組の元組長からの圧力は

日に日に強くなり

跡継ぎを迫られるようになった。


ゲイルはそれを拒み

この町バーサへ逃げてきた。


そこでカナと出会い

二人は本当の兄妹のように

静かに暮らし始めたのだという。


だが…ある日を境に、ゲイルは突然消え

虎牙組の頭として戻ってきた。


「きっと…圧力に

耐えられなくなったんだろうと思います」


先生は悔しそうに拳を握る。


ゲイルは

かつて自分を受け入れてくれたこの町を

今度は虎牙組を率いて、力ずくで占領し始めた。


カナは震える声で言う。

「ゲイルは…こんなことする奴じゃない」


アスノがぽつりとつぶやく

「上からの圧力ってのは…

そんなに強ェのかよ」


「強さだけの問題ではありません」

先生は首を横に振る。


「虎牙組において力以上に重いのは血です。

ゲイルには、その血がある」


先生は言葉を選ぶようにして続けた。


「彼は虎牙組先々代組長

そして近衛騎士団、北極星の四季(ポラリスカルテット)

三番手…ゼファーの息子なんです」

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