表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
山頂の四季
14/39

ep.14 "山頂の四季<クレストカルテット>"

山頂近く

風が強く吹きつける場所でようやく立ち止まる

少女は胸に手を当て、息を整えた。


彼女の名はマリー。


ロジェロがこの町へ来た時

最初に心を開いた相手であり

最後まで変わらず接してくれた数少ない存在だ。


「やっぱりロジェロ…!

本当に帰ってきたんだね!」


ロジェロは照れたように笑い

わずかに視線を逸らした。


「この子達は…」

マリーが僕らを見つめる


「…訳あって今、共に冒険している仲間だ」


「俺は双竜組のアスノ・ヤマモト!

シルの幼馴染だ!」


「ソウリュウグミ?」


「ああ…気にしないでくれ」

ロジェロはそう言いながらアスノの顔を殴る。


町民たちの豹変を伝えると

マリーは悲しげに瞳を揺らした。


「…この町は、数年前に町長が変わったの。

見たでしょ?建物とか全部お金がかけられてる」


マリーは唇を噛む

「あいつ…

お金のためなら何でもするような人でね…」


「国に媚びを売って

この町の大切なものを全部売ったんだよ」


ロジェロは息を呑む。


「…まさか、花畑も?」

マリーは静かに頷いた。


「あの美しい花畑も売られて…

ほとんどがなくなった

怒った住民たちには大金を配って

…みんな、お金に支配されてしまった」


言葉を失うロジェロ

その横顔は、悔しさよりも悲しみが大きかった。


「そうか…なら、私がそいつを倒す

この町のみんなを救う」

ロジェロはきっぱりと言い切った。


だが、マリーが腕を掴む。


「あいつは国と繋がってる。

反乱なんて起こしたら町ごと潰されかねない

最悪、みんな…殺されるかもしれない」


その声には恐怖が滲み出ていた

「だから私達…何も出来ないの」


ロジェロは眉を寄せる。


しばらく考え込んだあとで

何かを思い出したように口を開いた

「私達…ゼラとユーリか?」


マリーの表情が、少しだけ柔らかくなる

「そう。

いまでも私たち三人は協力して動いてる

覚えてる?山頂の四季(クレストカルテット)

まだ…皆でこの町を守ってるの」


「ああ…私が名付けたんだっけ…」

ロジェロは、照れくさそうに目を逸らした。


北極星の四季(ポラリスカルテット)に憧れていた彼女らしい名前だ。


「…ツワブキ母さんは?」


その名が出た瞬間アスノが「ん?」と反応する。


「もちろん生きてるよ。

みんな、あの家で今も暮らしてる」


ロジェロは頬を緩めながら言う

「…そうか。なら、行こう。会いに行きたい」


僕らはロジェロの後に続き

ツワブキ家を目指した。


~~~~~~~~~~


家は町の外れにぽつんと建つ古い一軒家で

どこか温かい匂いが漂っている。


ロジェロは玄関の前に立つと

深く息を吸い込んだ。


「…ただいま」

その声には緊張が混ざっていた。


「ロジェロ…!おかえり!」


年季の入った手を広げ

ふくよかな女性が駆け寄ってきた。


ロジェロの目が潤む。


ツワブキ…

王国に捨てられ逃げてきた

ロジェロを拾いずっと育ててきた

血の繋がりはなくとも、本当の母と呼べる人だ。


「ツワブキ母さん…!」


その胸に飛び込むように抱きつく。


その姿はいつもの鋭い剣士ではなく

どこにでもいる娘そのものだった。


…そこでアスノが声を張り上げる。


「うわッ!てめェ…"伝説のババァ"!?」


遠慮のない声に

空気が凍りついた

ロジェロは即座に剣を抜き

鬼の形相でアスノに詰め寄る。


「貴様ァ!

私の母に向かってババァとは…殺す!!」


初めて見るほどの殺意を感じた

だがツワブキは慣れたように

すっとロジェロの肩に手を置く。


「アンタ…双竜組のアスノだろ?」


「やっぱりか…!

かつて双竜組と

敵対組織"虎牙組こがぐみ"の抗争を終わらせた

"伝説のババァ"…

まさかこんなとこにいるとは…!」


ツワブキは笑いながら受け流す

呼ばれ慣れてるからいいんだよと

剣を降ろすように伝える。


「アンタの変な噂はたくさん聞いてるよ…」

じろりと眺める。


「まさかアスノを連れてくるとはね…

ロジェロも変わったもんだよ」


ロジェロは気まずそうに視線を逸らす

その横で僕とアスノは

ツワブキの圧倒的な

母の貫禄に凄みを感じていた。


「ゼラとユーリは?」

ロジェロが尋ねる。


「山頂で剣の練習さ。

なんか最近ずっとコソコソ企んでるみたいで…」

ツワブキの表情に、少しだけ心配の色が混じる。


…この家のことについて聞くと

ゼラ、ユーリ、マリーそしてロジェロ

四人は皆、親を失いツワブキに拾われ

育てられた子どもたちだという。


血の繋がりなんて関係ない

ここには、ちゃんと家族がいた。


そんなことを思っていると

玄関の扉が勢いよく開いた。


「ロジェロ…!?」「わぁ!」

二人の若い男が転がり込むように

家の中へ入ってくる。


ツワブキは

また家がやかましくなるねぇとため息を吐く

だが、その表情には確かな嬉しさが滲んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ